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会計処理でやりがちなNG例とその修正方法【実例付き解説】

小さなミスが大きな損失につながる会計処理の現実

会計処理は、日々の取引を正確に記録し、財務状況を明確にするための基礎です。
しかし実務の現場では、「これぐらいなら…」という小さなミスが積み重なり、税金の過大納付や資金繰りの悪化、場合によっては税務調査での指摘やペナルティにつながることがあります。

特に個人事業主や中小企業の経営者の場合、経理専任スタッフがいないケースも多く、経理担当者や社長自身が会計処理を行うことも少なくありません。そのため、知識不足や思い込みによるNG処理が発生しやすいのです。

本記事では、会計処理でやりがちなミスと、その正しい修正方法を実例とともにわかりやすく解説します。


なぜ会計処理のミスは繰り返されるのか?

会計処理のミスが減らない背景には、次のような要因があります。

1. 会計知識の不足

  • 簿記や税務の基本を学ぶ機会が少なく、独学や前任者からの引き継ぎに頼っている。

  • 最新の税制や会計基準の変更に追いつけない。

2. システムやツール任せ

  • 会計ソフトに自動仕訳機能があるため、取引内容の理解なしに入力してしまう。

  • 仕訳の確認や修正を怠る。

3. 業務の多忙さ

  • 複数業務を兼任し、記帳や整理が後回しになる。

  • 月末や申告直前にまとめて処理するため、記憶があいまいになる。

4. 思い込みや慣習

  • 「去年もこうやったから大丈夫」という慣習的な処理。

  • 他社や同業者のやり方をそのまま真似してしまう。


正しい会計処理のために必要な視点

結論から言うと、会計処理のミスを防ぐためには**「知識」「仕組み」「検証」の3本柱**が不可欠です。

  1. 知識:取引内容や勘定科目の意味を理解する

  2. 仕組み:ミスを起こしにくい業務フローやチェック体制を作る

  3. 検証:月次や決算時にデータを確認・修正する

この3つが揃うことで、日々の会計処理が正確になり、税務や経営判断に役立つ財務情報を作り出せます。


NG会計処理がもたらすリスクと損失

会計処理の誤りは、単なる数字のズレにとどまりません。次のような深刻な影響を及ぼす可能性があります。

1. 税務リスク

  • 税務調査で否認され、追徴課税や延滞税が発生

  • 消費税や所得税の控除漏れによる税金の過大納付

2. 経営判断の誤り

  • 損益や資金状況が実態と異なり、誤った投資判断や資金繰り計画をしてしまう

  • 赤字と思い込み無駄な経費削減を行う、または黒字と思い込み無理な出費をする

3. 信用低下

  • 銀行融資や取引先からの信用が低下

  • 決算書の信頼性が疑われ、資金調達の機会を逃す

会計処理ミスの影響イメージ

リスク分類 具体的な影響 発生確率(小〜高) 金銭的ダメージ(小〜大)
税務リスク 追徴課税、延滞税 中〜高 中〜大
経営判断ミス 誤った投資判断
信用低下 融資審査落ち

よくあるNG会計処理の背景にある心理

会計処理のミスは、単なる知識不足だけではなく心理的な要因でも起こります。

1. 「とりあえず入力しておこう」心理

忙しいときや処理件数が多いとき、「あとで直せばいい」と仮勘定や適当な科目で入力し、そのまま放置されることがあります。

2. 「少額だから大丈夫」思考

金額が小さいからと軽視し、レシート紛失や誤分類を放置する。
しかし少額でも積み重なると大きな金額になり、税務リスクが高まります。

3. 「前年と同じでいい」慣習依存

前年の処理をそのまま踏襲することで、制度改正や取引内容の変化を見落とすケースがあります。


会計処理でやりがちなNG例と修正方法

ここからは、現場で頻発するミスを実例付きで紹介し、正しい修正方法を解説します。


NG例1:個人経費と事業経費の混同

誤った処理

  • プライベートの食事代を「交際費」として計上

  • 家族旅行の費用を「会議費」として計上

なぜNG?

  • 税務調査で私的支出と判断され否認

  • 消費税の仕入税額控除も否認される可能性

修正方法

  • 個人用と事業用の財布・口座を明確に分ける

  • 会計ソフトで**「事業主貸・事業主借」**を活用し、私的支出は経費計上しない


NG例2:領収書・請求書の不備

誤った処理

  • 領収書がない支出を「仮払金」で処理したまま

  • 宛名や日付が空欄のまま経費計上

なぜNG?

  • 証拠書類の不備は経費否認の対象

  • インボイス制度下では、適格請求書の要件を満たさないと消費税控除できない

修正方法

  • 取引先に再発行を依頼

  • 領収書が入手できない場合は出金伝票を作成し、内容・日付・金額・支払先を明記

  • インボイス番号の有無を確認し、必要に応じて差し替え


NG例3:固定資産と消耗品の区別ミス

誤った処理

  • 20万円のパソコンを「消耗品費」で一括経費計上

  • 50万円の機械を「工具器具備品」で計上せず、修繕費で処理

なぜNG?

  • 耐用年数に応じた減価償却処理が必要

  • 誤分類で税務調査時に修正申告を求められる可能性

修正方法

  • 取得価額が10万円以上(中小企業では30万円未満まで特例あり)の資産は固定資産台帳で管理

  • 少額減価償却資産の特例(30万円未満)を活用し、必要に応じて即時償却


NG例4:売上の計上漏れ

誤った処理

  • 入金が翌月なので売上計上を翌月にしてしまう

  • 現金売上を記帳漏れ

なぜNG?

  • 発生主義の原則により、取引日ベースで計上が必要

  • 計上漏れは所得隠しと疑われる

修正方法

  • 取引日または納品日に売上を計上

  • 会計ソフトの売掛金管理機能を活用し、未入金でも売上計上を徹底


NG例5:仮払金・仮受金の放置

誤った処理

  • 社員の立替経費を「仮払金」で計上したまま精算せず

  • 不明入金を「仮受金」で記帳し放置

なぜNG?

  • 長期間残っていると、貸倒や所得計上の対象となる

  • 決算書の信頼性を損なう

修正方法

  • 毎月末に仮払金・仮受金の残高を確認

  • 精算が済んだら旅費交通費・売上高など適切な科目に振り替える

NG例6:未払費用・前払費用の計上漏れ

誤った処理

  • 年末に発生した経費(広告費・水道光熱費など)を、請求書未着を理由に翌期計上

  • 翌年分の家賃や保険料を支払った際、全額を当期の経費に計上

なぜNG?

  • 発生主義の原則を守らないため、損益が実態とズレる

  • 税務署から「恣意的な利益調整」と見られる恐れ

修正方法

  • 請求書未着でも、発生事実がある場合は未払費用として計上

  • 翌期分の費用は前払費用で資産計上し、該当期に振替


NG例7:交際費と会議費の区別誤り

誤った処理

  • 社内打合せの弁当代を交際費で計上

  • 取引先との高額接待を会議費で計上

なぜNG?

  • 法人税では交際費に上限があり(中小法人は800万円まで全額損金可だが、大法人は一部制限)、区別が重要

  • 会議費は社内や業務上の打合せなど、事業目的が明確な場合に限られる

修正方法

  • 社内の軽食や弁当代は会議費

  • 取引先接待や贈答は交際費

  • 領収書に**「会議の議題・参加者」**をメモする


NG例8:役員貸付金の放置

誤った処理

  • 役員が個人的に使ったお金を経費で支払ったまま精算せず

  • 役員の個人支出を「仮払金」で計上し続ける

なぜNG?

  • 役員貸付金は利息を付けて返済させる必要がある

  • 放置すると役員賞与とみなされ、法人税・所得税の課税対象になる

修正方法

  • 毎月、役員関連の立替や支出を精査

  • 個人支出は速やかに返済、または役員報酬に含める


NG例9:在庫の計上漏れ

誤った処理

  • 決算時に在庫(棚卸資産)を計上せず、仕入れとして全額経費に計上

  • 在庫数量や評価額の記録を残していない

なぜNG?

  • 棚卸資産は期末資産として計上しなければならず、経費過大計上になる

  • 税務調査で過去の在庫管理が不十分と指摘されやすい

修正方法

  • 決算日現在の在庫数量を棚卸表に記載

  • 評価額は取得価額か低価法で算定


NG例10:源泉徴収・社会保険の未処理

誤った処理

  • 外注先やアルバイトへの支払い時に源泉徴収をしていない

  • 社会保険料を未払のまま計上せず、支払時に全額処理

なぜNG?

  • 源泉徴収義務違反は加算税・延滞税が発生

  • 社会保険料は発生月で未払計上しないと費用計上時期がズレる

修正方法

  • 報酬や給与支払い時に必ず源泉徴収を実施

  • 社会保険料は賃金計上と同時に**法定福利費(未払)**として処理


ミスを防ぐための改善手順とチェックリスト

ここまで紹介したNG例は、正しい知識があれば防げるものばかりです。
日々の会計処理を改善するための実践的なステップを示します。


ステップ1:業務フローの可視化

  • 取引発生から記帳、証憑保管までの流れを図解

  • 誰が、いつ、何をするかを明確にする

  • 属人化を防ぎ、引き継ぎしやすくする


ステップ2:証憑管理ルールの徹底

  • 領収書・請求書は日付順に整理

  • インボイス制度対応のため、適格請求書の有無を確認

  • 紙・PDF・スキャンの保存方法を統一


ステップ3:会計ソフトの設定見直し

  • 勘定科目・補助科目を正しく設定

  • 自動仕訳ルールを定期的に見直す

  • 消費税区分や税率設定が最新か確認


ステップ4:月次チェックの実施

  • 月末ごとに残高試算表を確認

  • 仮払金・仮受金・未払費用・前払費用の残高が残っていないか確認

  • 売掛金・買掛金の回収・支払予定を照合


ステップ5:年次決算前の棚卸と調整

  • 棚卸資産の数量・評価額を確定

  • 固定資産台帳と実物を照合

  • 未計上経費(広告費、水道光熱費、賞与引当金など)の洗い出し


ステップ6:専門家によるレビュー

  • 年1回以上、税理士・会計士に帳簿をチェックしてもらう

  • 制度改正や節税ポイントも同時に確認


会計処理ミス防止チェックリスト

チェック項目 頻度 実施状況
証憑は日付順に保管しているか 毎日
領収書・請求書の宛名・日付・金額は確認済みか 毎回
勘定科目の選択ミスがないか月次で確認しているか 毎月
仮払金・仮受金は翌月までに精算しているか 毎月
固定資産台帳と実物を照合しているか 年1回
棚卸資産は決算日に評価・記録しているか 年1回
税制・会計基準の改正内容を把握しているか 随時

まとめ

会計処理のミスは、「知識不足」+「チェック不足」 が主な原因です。
今回紹介したNG例は、いずれも発生源を押さえて仕組み化すれば防げます。

  • 個人と事業の区別を徹底

  • 証憑の保存・記録ルールを統一

  • 発生主義を守り、計上時期を正しく

  • 月次チェックと専門家レビューで精度を高める

正しい会計処理は、税務リスクを減らすだけでなく、経営判断の精度も高めます。
今日から改善ステップを取り入れ、ミスのない会計を目指しましょう。

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