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売掛金・買掛金の管理方法|初心者がつまずかないための仕訳例付き

なぜ売掛金・買掛金の管理が重要なのか

事業を続けていると、「掛け取引」は避けて通れません。
掛け取引とは、商品やサービスを提供しても、その場では代金を受け取らず、後日まとめて精算する取引のことです。

  • 売掛金:売上が発生したが、まだ入金されていないお金

  • 買掛金:仕入や経費の支払い義務があるが、まだ支払っていないお金

売掛金や買掛金は、お金の出入りのタイミングをずらすため、現金商売とは異なる管理が必要です。
これらを正しく管理できないと、黒字倒産の原因になったり、税務や経営判断に悪影響を与えます。


管理を誤ると起こる3つのリスク

初心者が売掛金・買掛金の管理でつまずくのは、単に仕訳が難しいからだけではありません。
管理を怠ることで、次のようなリスクが発生します。

  1. 資金ショートの危険
    売掛金の回収が遅れ、入金予定日まで現金が足りなくなることがあります。

  2. 支払遅延による信用低下
    買掛金の支払いが遅れると、取引先の信用を失い、今後の取引条件が悪化します。

  3. 決算や税務申告の誤り
    売掛金・買掛金の残高が帳簿と実際で合わず、売上や経費の計上漏れ・二重計上の原因になります。

こうしたトラブルは、日々の取引の記録や残高管理を徹底することで防げます。


ポイントは「正確な記録」と「期日管理」

売掛金・買掛金管理で初心者がつまずかないためには、次の2つが重要です。

  1. 正確な記録(仕訳)

    • 発生主義で取引日を基準に記帳

    • 売掛金・買掛金を勘定科目として明確に管理

    • 月末締めで残高を照合する

  2. 期日管理(スケジュール)

    • 売掛金:入金予定日を記録し、遅れがあればすぐ確認

    • 買掛金:支払期限を管理し、資金繰り計画に反映

この2つを押さえれば、仕訳作業だけでなく、経営全体の資金管理精度が向上します。

売掛金・買掛金管理が経営に直結する3つの背景

1. 会計原則に基づく「発生主義」の必要性

事業の帳簿は発生主義で記録するのが原則です。
発生主義とは、現金の出入りに関係なく「取引が発生した時点」で売上や費用を計上する考え方です。

  • 売掛金:商品やサービスを提供した日に売上計上

  • 買掛金:商品やサービスを受け取った日に費用計上

この方法を守ることで、決算書が実態を正しく反映し、税務申告や金融機関への資料提出時にも信頼性が高まります。
逆に、現金主義で記録すると、売上や経費の計上時期がズレ、正確な損益が把握できなくなります。


2. 資金繰り管理の要

売掛金・買掛金は現金の出入りを伴わないため、資金繰り表に反映しないと現金残高を見誤る危険があります。

例:

  • 月末に売上1,000,000円(売掛金)発生 → 入金は翌月末

  • 月末に仕入500,000円(買掛金)発生 → 支払いは翌月15日

この場合、帳簿上は黒字でも、翌月の前半に支払いが集中すると現金不足になる可能性があります。
正確な期日管理は、黒字倒産を防ぐ第一歩です。


3. 信用管理の要素

売掛金は取引先から見れば「支払うべき負債」、買掛金は自社から見れば「支払う義務」です。
これらの管理を怠ると、以下のような信用問題が発生します。

  • 売掛金の回収遅延 → 資金繰り悪化・回収不能(貸倒損失)のリスク

  • 買掛金の支払遅延 → 取引条件の悪化・取引停止

期日通りに回収・支払いを行うことは、取引先からの信用維持に直結します。


4. 税務リスクの回避

売掛金・買掛金の残高が帳簿と一致しない場合、次のような税務リスクがあります。

  • 売掛金計上漏れ → 売上の過少申告による追徴課税

  • 買掛金計上漏れ → 経費の過大計上による否認

月末や決算時に残高を必ず照合することで、こうしたミスを防げます。

売掛金・買掛金の仕訳と管理方法

1. 売掛金の基本的な仕訳例

売掛金は、商品やサービスを提供したが、まだ代金を受け取っていない場合に発生します。

事例
1月10日:商品を200,000円(税抜)で販売、掛け取引
1月31日:取引先から入金(銀行振込)

仕訳
(販売時:1月10日)

売掛金 220,000 / 売上 200,000           
        / 仮受消費税 20,000

(入金時:1月31日)

普通預金 220,000 / 売掛金 220,000

ポイント

  • 売上計上は「販売日」基準

  • 入金時に売掛金残高を減らす


2. 買掛金の基本的な仕訳例

買掛金は、商品やサービスを受け取ったが、まだ代金を支払っていない場合に発生します。

事例
2月5日:仕入先から商品を100,000円(税抜)で購入、掛け取引
2月28日:仕入先へ銀行振込で支払い

仕訳
(仕入時:2月5日)

仕入 100,000 / 買掛金 110,000 仮払消費税 10,000 

(支払時:2月28日)

買掛金 110,000 / 普通預金 110,000

ポイント

  • 費用計上は「受け取り日」基準

  • 支払時に買掛金残高を減らす


3. 売掛金管理表サンプル

取引先 発生日 金額(税込) 入金予定日 入金日 残高
A商店 1/10 220,000 1/31 1/31 0
B社 1/15 110,000 2/15 - 110,000

4. 買掛金管理表サンプル

仕入先 発生日 金額(税込) 支払予定日 支払日 残高
C商店 2/5 110,000 2/28 2/28 0
D社 2/20 55,000 3/15 - 55,000

5. 回収・支払いサイクルのイメージ

【売掛金】発生(販売日) → 回収(入金日)
【買掛金】発生(仕入日) → 支払(支払日)
  • 回収日より支払日が早い場合は資金繰り悪化の恐れ

  • 逆に、回収日が支払日より早ければ資金繰りに余裕ができる

売掛金・買掛金管理を徹底するためのステップ

ステップ1:取引発生時に即記録

  • 発生日(請求日・受領日)を基準に売掛金・買掛金を記帳

  • 納品書・請求書を受け取った時点で仕訳入力

  • 発生から記録までのタイムラグをゼロにする


ステップ2:管理表を運用する

  • 売掛金・買掛金台帳(管理表)をExcelや会計ソフトで作成

  • 入金予定日・支払予定日を必ず記入

  • 月末に残高を照合し、未回収・未払いを明確化


ステップ3:期日アラートを設定

  • 入金予定日の数日前に督促準備

  • 支払予定日の数日前に資金確保

  • 会計ソフトやカレンダーアプリでリマインド設定


ステップ4:証憑をセットで保存

  • 売掛金 → 請求書(発行側)・納品書(納品証明)・入金明細

  • 買掛金 → 請求書(受領側)・発注書・支払明細

  • インボイス制度対応のため、登録番号や税率の確認も必須


ステップ5:月次残高確認

  • 月末時点の売掛金・買掛金残高を元帳と照合

  • 取引先別に未回収・未払いを一覧化

  • 残高不一致はその月内に原因を特定・修正


売掛金・買掛金管理ミス防止チェックリスト

項目 確認
発生日基準で記帳しているか
入金予定日・支払予定日を記録しているか
残高照合を毎月実施しているか
証憑(請求書・納品書・明細)をセット保管しているか
インボイス要件を満たしているか
督促や支払準備のリマインドを設定しているか

まとめ

売掛金・買掛金は、単なる帳簿上の数字ではなく、資金繰り・信用・税務のすべてに影響する重要な管理項目です。
初心者がつまずかないためには、

  • 発生日基準の正確な仕訳

  • 期日管理とアラート設定

  • 証憑のセット保存
    を徹底することがポイントです。

会計ソフトや管理表を活用し、毎月の残高確認を習慣化すれば、資金管理と経営判断の精度が大きく向上します。

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