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キャッシュレス決済の会計処理まとめ【PayPay・楽天ペイなど】

キャッシュレス時代の経理はどう変わる?

PayPay・楽天ペイ・d払い・クレジットカードなど、キャッシュレス決済は急速に普及しています。
現金を介さずにスマホやカードで支払いが完了するため、顧客の利便性が向上し、事業者側の売上機会も広がります。

一方で、経理処理の現場では**「お金が直接動かない」**ことによる会計処理の複雑化が進んでいます。
売上の入金日がズレたり、決済手数料が差し引かれたりするため、現金取引とは異なる仕訳方法が必要です。

本記事では、キャッシュレス決済の仕組みから会計処理方法まで、初心者でも理解できるようにまとめます。特にPayPayや楽天ペイといった主要サービスを例に、仕訳や注意点を解説します。


キャッシュレス決済で経理が混乱する理由

キャッシュレス決済の普及は便利さをもたらしましたが、経理担当者や事業主にとっては以下のような課題もあります。

  1. 入金日と売上日のずれ

    • 決済当日に売上は発生しても、実際の入金は数日〜数週間後。

    • 売掛金のように管理が必要になる。

  2. 決済手数料の控除

    • 入金額は売上総額から手数料を差し引いた金額。

    • 手数料を別途経費計上しないと、売上や経費が正確に反映されない。

  3. 複数サービスの併用による複雑化

    • PayPay、楽天ペイ、クレジットカードなどを併用すると、入金サイクルや手数料率が異なる。

    • サービスごとに管理表を分ける必要がある。

  4. 消費税の仕入税額控除の要件

    • インボイス制度に対応した取引証憑の保存が必要。

    • 電子明細や取引履歴の保存方法を誤ると控除が受けられない。

これらの課題を放置すると、売上計上漏れや経費計上ミスが発生し、税務調査での指摘や資金繰りの誤算につながります。


ポイントは「発生日基準」と「手数料の明確化」

キャッシュレス決済の会計処理をスムーズにするためには、次の2つのポイントを押さえることが重要です。

  1. 発生日基準(発生主義)の記帳

    • 売上は決済日(取引日)で計上し、入金までの間は未収入金として管理。

    • 入金時に未収入金を消し、手数料を経費計上する。

  2. 手数料の明確化と分離計上

    • 入金額から逆算して売上総額と手数料を正確に把握。

    • 「支払手数料」や「決済手数料」勘定を使って記録。

この方法を徹底することで、売上・経費・入金の整合性が保たれ、資金繰りや税務処理もスムーズになります。

キャッシュレス決済の会計処理が現金取引と異なる背景

1. 決済の仕組みが現金取引と違う

キャッシュレス決済では、売上が発生してもその場で現金が入らないのが特徴です。
例えばPayPayの場合、次の流れになります。

  1. 顧客がPayPayアプリで決済(売上発生)

  2. 決済代行会社(PayPay)が売上金を一時的に預かる

  3. 決済代行会社が手数料を差し引いた金額を事業者口座に振込(数日〜数週間後)

つまり、決済日と入金日が別日になるため、売掛金や未収入金のように取引を分けて記録する必要があります。


2. 会計原則の「発生主義」に基づく必要性

会計や青色申告では原則として発生主義を採用します。
発生主義では、現金の受け渡しに関わらず、取引が発生した時点で売上や費用を計上します。

  • 決済日(売上発生日):売上として記録し、未収入金を計上

  • 入金日:未収入金を減らし、同時に手数料を経費計上

現金主義で処理してしまうと、売上や経費の計上時期がズレてしまい、決算書や税務申告が正確でなくなります。


3. 手数料の分離計上が必要な理由

キャッシュレス決済では、振込時に決済手数料が差し引かれることが一般的です。
この手数料は販売費及び一般管理費として経費計上できますが、入金額だけで記帳してしまうと売上金額が過少計上される恐れがあります。

例:PayPay決済 10,000円(税込)、手数料3%

  • 正しい計上方法

    • 売上:10,000円

    • 手数料:300円(経費)

    • 入金額:9,700円

  • 誤った計上方法

    • 売上:9,700円(手数料分を売上から引いてしまう)

売上と手数料を分けて記録することで、売上総額や経費の実態が正しく把握できます。


4. 複数サービス利用による複雑化

事業者によってはPayPay、楽天ペイ、クレジットカード決済などを同時に導入しているケースがあります。
サービスごとに入金サイクル・手数料率・振込手数料の有無が異なるため、まとめて記帳すると残高不一致が発生しやすくなります。
そのため、会計上はサービスごとに未収入金の管理を分けるのが望ましいです。

キャッシュレス決済の仕訳方法

1. PayPayの仕訳例

事例
4月5日:商品を税込11,000円(税抜10,000円)販売、PayPay決済(手数料3%)
4月8日:PayPayから手数料控除後の金額が入金

日付 内容 借方 金額 貸方 金額
4/5 商品販売 未収入金 11,000 売上 10,000
仮受消費税 1,000
4/8 入金 普通預金 10,670 未収入金 11,000
手数料計上 支払手数料 330

2. 楽天ペイの仕訳例

事例
5月10日:サービスを税込5,500円(税抜5,000円)販売、楽天ペイ決済(手数料3.24%)
5月15日:入金(振込手数料なし)

日付 内容 借方 金額 貸方 金額
5/10 サービス提供 未収入金 5,500 売上 5,000
仮受消費税 500
5/15 入金 普通預金 5,322 未収入金 5,500
手数料計上 支払手数料 178

3. クレジットカード決済の仕訳例

事例
6月1日:商品を税込22,000円(税抜20,000円)販売、クレジットカード決済(手数料5%)
6月20日:入金(振込手数料220円差引き)

日付 内容 借方 金額 貸方 金額
6/1 商品販売 未収入金 22,000 売上 20,000
仮受消費税 2,000
6/20 入金 普通預金 20,680 未収入金 22,000
手数料計上 支払手数料 1,100
振込手数料計上 支払手数料 220

4. サービス別比較表

項目 PayPay 楽天ペイ クレジットカード
入金サイクル 約1週間 約5日 約20日
決済手数料率 約3% 約3.24% 約3〜5%
振込手数料 無料(条件あり) 無料 有料の場合あり
会計処理 未収入金計上→入金時に手数料仕訳 同左 同左+振込手数料仕訳

5. ポイントまとめ

  • 売上計上は必ず取引日(決済日)基準で行う

  • 入金時に未収入金を消す処理+手数料計上を忘れない

  • 振込手数料がある場合は別途経費計上

  • サービスごとに未収入金の残高を管理すると照合作業がスムーズ

キャッシュレス決済の会計処理を効率化するステップ

ステップ1:サービスごとに管理口座を分ける

  • PayPay・楽天ペイ・クレジットカードなど、入金元ごとに未収入金の補助科目を設定

  • 例:「未収入金(PayPay)」「未収入金(楽天ペイ)」

  • サービス別に残高管理ができ、入金照合がスムーズになる


ステップ2:取引日と入金日を必ず記録

  • 売上は決済日で記帳し、入金予定日を管理表やカレンダーに記載

  • 入金が遅れた場合はすぐにサービス提供会社へ確認


ステップ3:手数料計上を自動化

  • 会計ソフトの決済連携機能を利用すると、売上金額と手数料を自動仕訳可能

  • freeeやマネーフォワードでは、決済明細を取り込むと手数料控除後の入金金額から自動で手数料を逆算


ステップ4:証憑を電子保存

  • 取引明細や振込明細は電子帳簿保存法対応の形式で保管

  • 領収書や請求書が発行される場合はPDFで保存し、インボイス番号を確認


ステップ5:月末に残高照合

  • 各サービスの管理画面の売上残高と、会計ソフトの未収入金残高を比較

  • 差異があれば、未記帳取引や二重計上の有無を確認


キャッシュレス決済経理チェックリスト

項目 確認
サービス別に未収入金科目を設定しているか
売上を決済日基準で計上しているか
手数料を経費として分離計上しているか
振込手数料の計上漏れがないか
明細・領収書をインボイス対応で保存しているか
月末に残高照合を実施しているか

まとめ

キャッシュレス決済の会計処理は、発生日基準での売上計上と手数料の分離計上が基本です。
サービス別の残高管理や会計ソフト連携を活用すれば、経理の負担を大幅に軽減できます。
また、電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しておくことで、税務リスクを防ぎつつ効率的な経理運営が可能です。

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