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【法人向け】減価償却の基本と耐用年数の調べ方をわかりやすく解説

その設備、ちゃんと経費にできていますか?

法人で備品や機械を購入した際、「買った分をすぐに経費にしてはいけない」というルールがあることをご存じですか?
これが、企業経理の中で基本中の基本とされる「減価償却(げんかしょうきゃく)」です。

減価償却を正しく理解しておかないと…

  • 思ったよりも経費にならない

  • 決算で利益が過大計上される

  • 課税額が想定より高くなりキャッシュが減る

といったトラブルが発生しかねません。

この記事では、**減価償却の基本的な考え方と、実務で最もつまずきやすい「耐用年数の調べ方」**を、法人向けにわかりやすく解説します。


「高額な備品なのに、経費にできない?」という誤解

よくある誤解がこちら:

「100万円の機械を買ったから、今期の経費として一括で処理しよう」

これは税務上NG。10万円以上の備品・設備などは、原則として数年にわたって分割して経費にしていく必要があります。

実際には、以下のような区分があります。

取得価額 処理方法 補足
10万円未満 一括経費(消耗品費等) 即時経費OK
10万円以上20万円未満 一括償却資産(3年均等) 所得税法上の特例適用可
20万円以上 減価償却(耐用年数で分割) 通常の償却処理が必要

つまり、「金額によって処理方法が変わる」「固定資産に該当すれば分割処理が必要」という点を理解しておかなければ、法人税・消費税にも影響を与えるミスに繋がります。


減価償却は「固定資産の正しい管理+耐用年数の把握」がすべて

法人が正しく経費処理を行うには、以下の2点を必ず押さえる必要があります。

  1. 購入資産の性質・金額に応じた会計処理の分類

  2. 国税庁が定める「法定耐用年数」に基づいた減価償却の実施

さらに、2025年現在では電子帳簿保存法の影響もあり、固定資産の台帳管理や証憑保存の正確性も求められています。

減価償却が必要な理由|会計と税務における基本的な考え方

減価償却とは「資産の価値を分割して経費にする」こと

例えば、100万円のコピー機を導入したとしましょう。
このコピー機を1回で使い切るわけではなく、数年にわたり業務に利用するはずです。

そこで、**税務上のルールとして、「長期間使用する資産の費用は、その使用期間に応じて分割して経費にする」**という考え方が採用されます。これが「減価償却」です。


減価償却が必要な3つの理由

理由 内容
① 会計の正確性の確保 資産の利用期間ごとに費用を分配することで、適切な利益を算出できる
② 節税の最適化 初年度にすべての経費を認識しないことで、損益の平準化と税負担の最適化が可能
③ 税務コンプライアンス 税法で義務付けられており、未実施は税務署から否認される恐れがある

減価償却しないとどうなる?

処理 結果 問題点
一括で経費処理 初年度の経費が大きくなる 翌年度以降、利益が膨らみ税額が増える可能性大
処理しないまま放置 利益が過剰に計上される 本来より多くの法人税を支払うリスク
適切でない耐用年数 償却スピードが合わない 税務調査で否認される可能性あり

減価償却に関する会計と税務のズレにも注意

法人の場合、「会計上の耐用年数」と「税務上の法定耐用年数」が異なる場合もあります。

項目 会計上 税務上(法人税法)
耐用年数 実態に基づいて柔軟に設定可能 法定耐用年数(定額または定率)で強制適用
減価償却方法 任意に定額・定率などを選択可能 原則定率法(2025年現在は中小企業も選択制)

💡会計上の自由度が高くても、税務申告はあくまで「税法に従う」必要があります。

減価償却の具体例|計算方法と適用資産の分類

減価償却方法の種類

減価償却方法 特徴 中小企業の適用可否(2025年)
定額法 毎年一定額を償却 ◯(原則)
定率法 初年度に多く償却し、徐々に減る ◯(選択制)
一括償却 3年で均等償却(20万円未満) ◯(所得税のみ)

定額法の計算式

減価償却費=(取得価額ー残存価額)÷耐用年数

例:取得価額が30万円、耐用年数5年、残存価額1円とした場合
→ 減価償却費は年間約60,000円(端数調整あり)


定率法の計算式(概要)


\text{減価償却費} = 期首帳簿価額 × 定率法償却率

初年度が最も多く償却され、年々少なくなる方式。
資金繰りの改善や初期費用の回収に向いています。


よく使われる資産と耐用年数一覧(抜粋)

資産の種類 耐用年数(法人税法上) 補足
パソコン 4年 ソフトウェアは5年が原則
普通乗用車 6年 自家用との併用時は按分要
建物(鉄筋) 50年 用途により異なる
工具・器具・備品 5年〜10年 椅子・机・冷蔵庫など

※詳細は国税庁の耐用年数表を参照。


国税庁の耐用年数表の調べ方

  1. 国税庁の公式サイトへアクセス

  2. 「耐用年数表」と検索、または以下カテゴリからたどる
     →《法人税》>《固定資産の減価償却》>《耐用年数表》

  3. PDFファイルをダウンロード

  4. キーワード(例:「パソコン」「机」など)で検索


ワンポイント:償却資産税との関係にも注意

償却資産(事業用の機械・器具など)を保有している法人は、毎年1月1日時点の資産について市区町村へ償却資産申告書を提出しなければなりません(課税対象になる可能性があります)。

減価償却の実務手順|法人がすべき具体的なステップ

減価償却処理の流れ(法人編)

  1. 資産購入時の仕訳登録

    勘定科目:工具器具備品、建物、車両運搬具など
    登録内容:取得日・取得価額・取引先・摘要
  2. 固定資産台帳への登録

    登録項目:耐用年数、償却方法、償却開始日、残存価額など
    ※2025年現在、電子帳簿保存法対応の台帳が求められる
  3. 月次または年次で減価償却費の計上

    決算前に必ず「期中で未処理の償却資産」がないかチェック
  4. 償却資産申告(1月)と法人税申告(3月)で整合性確認


freeeやマネーフォワードでの減価償却処理方法

freeeの場合

  • 固定資産管理 → 「資産の登録」から入力

  • 耐用年数や償却方法を選択すれば自動計算

  • 減価償却費は自動で月次仕訳に反映

マネーフォワードクラウド会計の場合

  • 固定資産→「新規登録」から情報入力

  • 減価償却の仕訳は「帳簿」に自動反映される

  • 償却資産税の申告サポート機能あり

💡クラウド会計ソフトを活用すれば、耐用年数の確認や仕訳ミスを防止できます。


よくある減価償却のミスと対策

よくあるミス 原因 対策
償却計算の未処理 固定資産台帳の未作成 会計ソフトの活用と月次チェック
耐用年数の設定ミス 国税庁資料の確認漏れ 資産登録時に必ず検索する癖づけ
一括経費化してしまう 税法の知識不足 金額と種類で償却対象かどうか判断

減価償却チェックリスト(決算前に確認)

  • 取得価額10万円以上の資産をすべて洗い出しているか

  • 耐用年数を正しく設定しているか

  • 固定資産台帳にすべての項目を登録しているか

  • 償却開始月を正しく設定しているか

  • 減価償却費の計上が月次または年次で反映されているか

  • 償却資産税の申告準備は完了しているか


減価償却の実務に強くなれば、税務対応も万全

減価償却は会計の基礎にして、節税・キャッシュフロー管理の要です。

とくに中小企業やスタートアップ企業にとっては、減価償却の正しい理解と運用が、決算の質と節税効果に直結します。

「会計ソフトを使っても不安…」という場合は、税理士や経理の専門家に相談することも一つの選択肢です。

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