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経費になるもの・ならないもの|会計処理で間違いやすい10の支出

その支出、本当に「経費」でいいですか?

「仕事で使ったから経費にしていいよね?」
そんな軽い判断が、税務署の指摘やペナルティにつながることがあります。

個人事業主や小規模事業者にとって、「経費になるか・ならないか」の判断は重要です。しかし、業務と私用の境界が曖昧な支出ほど、判断が難しくなりがちです。

この記事では、「経費にできる支出」と「できない支出」の違いを明確にし、間違いやすい10の具体例を紹介しながら、実務での会計処理のポイントを解説します。


「経費で落ちると思っていたのに否認された」その理由は?

税務調査で否認されやすい支出の特徴には以下のようなものがあります。

よくある勘違い 経費にならない理由
自宅の家具を買った 業務使用が明確でない
仕事仲間との食事 私的交流と判定される可能性あり
親族への謝礼や手土産 慣習的支出で業務関連性が薄い
仕事で使ったスーツ 「衣服」は原則として経費にならない

このように、「業務に関係しているつもり」でも、税務署の目線では経費と認められないケースが多数あります。


経費の判断基準は「業務の必要性」と「証拠書類」

経費として認められる支出には、明確な原則があります。

経費の基本的な定義

  • 業務の遂行に直接必要な支出

  • 私的な支出が含まれていないこと

  • 領収書や請求書など、証憑(しょうひょう)があること

つまり、「仕事で使った」だけでは不十分。業務関連性が明確に説明でき、書類でも裏付けられる支出である必要があります。


「経費性」を判断する3つのポイント

① 業務との明確な関係があるか?

  • その支出が業務を行う上で必要か?

  • 類似の業種でも通常行われている支出か?

② 私的な支出が含まれていないか?

  • 家事按分(自宅兼事務所の家賃・電気代など)は按分比率を明確に

  • 同席者が家族・友人などの場合、交際費ではなく私的支出と見なされるリスク

③ 証拠書類が整っているか?

  • 領収書・レシート・請求書などが残っているか

  • 支出の目的・内容が明確に書かれているか

📌 税務調査では「事業実態」「支出の妥当性」「証拠」の3点セットが見られます。

間違いやすい10の支出と経費判断のポイント

1. スーツやビジネス用の衣類

経費になる? 原則:×(経費にならない)
理由 衣服は「日常生活でも使用できるもの」と判断され、業務専用と認められにくい
例外 作業着・制服・防寒着など、会社支給の明確な業務用であれば可
会計処理の注意点 スーツやシャツなどの購入は経費計上しない

2. 接待・会食費(飲食代)

経費になる? △(状況による)
ポイント 誰と・何の目的で・どのような会話をしたかをメモしておく
証拠 領収書と一緒に「接待日・相手先名・目的」を残す
仕訳例 借方:交際費/貸方:現金・クレカ

3. 自宅の家賃・電気・通信費

経費になる? ○(事業利用分のみ)
方法 「家事按分」を使って事業使用割合を算出
自宅全体60㎡のうち10㎡を事務所として使用 → 10/60=16.6%を経費計上
会計処理 家賃:地代家賃、電気代:水道光熱費、ネット代:通信費に分けて記帳

4. 車両のガソリン代・保険料

経費になる? △(業務使用分のみ)
ポイント 通勤や業務用の使用比率を記録(走行距離の記録など)
経費科目 ガソリン代:車両費/保険料:損害保険料
注意点 プライベート利用分を含むと否認されるリスクあり

5. 自己啓発セミナーや資格試験費用

経費になる? △(業務関連に限る)
税理士・社会保険労務士など業務に直結する資格試験や勉強会
趣味目的や業務と無関係なもの(料理教室、語学スクールなど)
ポイント 領収書に「講座名」「主催者」「目的」を記録することが大切

6. 慶弔費・祝い金・香典

経費になる? △(法人のみ一部可)
原則 個人事業主の場合、私的支出とみなされ経費にならない
法人の場合 社員の慶弔費は福利厚生費として処理可能(社内規定が必要)
注意点 金額・相手・目的を帳簿に記録し、領収証や香典袋のコピーを添付する

7. スマートフォン・タブレットの購入費

経費になる? ○(事業使用分)
按分が必要な場合 仕事と私用の併用機器は按分処理(例:70%業務使用)
10万円以上の機器 減価償却資産として「工具器具備品」に計上(耐用年数:4年)
通信費 月額料金は通信費として按分記帳

8. 家族への謝礼や手伝いの報酬

経費になる? △(要件を満たせば可能)
青色専従者給与 届出+就業実態+給与支払の記録があれば経費化可
白色申告 家族給与は一部しか経費にできない(上限あり)
注意点 時給・労働時間・振込記録を残すことが重要

9. 書籍・新聞・雑誌の購入費

経費になる? ○(業務関連の内容に限る)
OK例 業界誌、会計関連の書籍、ビジネス雑誌など
NG例 趣味本、小説、一般新聞
会計処理 借方:新聞図書費/貸方:現金・クレカなど

10. 旅行・出張・宿泊費

経費になる? ○(業務目的に限る)
ポイント 「目的地」「訪問先」「業務内容」をメモしておく
プライベート旅行との違い 家族同伴の旅行や観光メインの出張は否認リスク大
会計処理 交通費:旅費交通費、宿泊費:会議費または旅費交通費として記帳

間違って経費計上してしまったら?修正方法と対応フロー

ケース①:期中に間違いに気づいた場合

対応方法 内容
修正仕訳を入力 間違った仕訳を取り消し、正しい仕訳を追加
補足メモを残す 修正理由を備考欄などに記録しておくと税務調査時に安心
会計ソフトの履歴確認 freeeやMFクラウドなどでは変更履歴を残せる機能あり

📌修正は「消す」のではなく、「訂正仕訳で対応する」のが原則です。


ケース②:確定申告後に間違いに気づいた場合

対応方法 内容
税務署へ「修正申告」 経費の過大計上により納税額が足りなかった場合に提出が必要
「更正の請求」 経費の過小計上で税金を多く払っていた場合に返金を求められる手続き
期限 修正申告:期限なし/更正の請求:原則5年以内

💡無申告や虚偽申告に該当しない限り、自主的な修正には重加算税は課されません。


記帳時に意識すべきポイント【誤りを防ぐ3つのチェック】

① 勘定科目の選定は「実態」で判断する

| NG例 | 通信費として処理していたが、実際は広告出稿費だった |
| 対応 | 領収書の用途を確認し、広告宣伝費として修正 |

② 同一支出でも按分や摘要欄で説明を明確に

  • 「通信費(個人使用30%除く)」など、摘要欄に記載しておくことで明確化

  • freee・MFでは摘要テンプレートを活用すれば効率化も可能

③ 金額の大きい支出は「証憑」を確実に保存

  • 10万円以上の支出は減価償却対象かどうかも確認

  • 購入明細・契約書・請求書など、形式の整った証拠書類が重要


税務調査でチェックされやすいポイントとは?

税務調査では、以下のような点が重点的に見られます。

チェック項目 税務署の見方
経費の妥当性 事業との関係性が不明な支出は否認対象
按分の根拠 自宅兼事務所・車の利用など、割合の説明がないもの
領収書の内容 金額・日付・宛名・目的が書かれていないものは無効扱いに
現金払い 多額の現金支出が続くと使途不明金とみなされることも
親族・関連先への支払い 実態のない支出は利益操作と疑われやすい

💡税務署は“合理性”と“説明可能性”を重視します。
日頃から記帳の透明性と証憑の整備を徹底しましょう。


こんな記録を残しておくと安心!

  • 【食事代】誰と、どこで、なぜの3点セット(例:「〇〇社 打合せ 昼食」)

  • 【旅費】日程表、目的、訪問先、出張報告書などの記録

  • 【按分費用】根拠となる面積、時間、使用頻度のメモや写真

👉 freee・マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトには、画像添付・メモ欄活用機能があるので積極的に使いましょう。

✅ 経費にできるかどうか判断する5つのチェックリスト

迷ったときは、次の5項目をチェックしてみましょう。

チェック項目 内容
① 業務に直接関係があるか 業務遂行に明らかに必要な支出であるか?
② 私的利用が含まれていないか プライベートと混在していないか?
③ 証拠書類があるか 領収書・レシート・請求書が残っているか?
④ 金額が妥当か 業種や業務内容に照らして常識的な金額か?
⑤ 説明可能か 税務署に質問されたとき、根拠を示せるか?

💡どれか1つでも「あやしい」と思ったら、「グレーゾーン」扱いにして税理士に相談するのがおすすめです。


ケーススタディで総まとめ

ケース1:打合せを兼ねたランチ

  • 支出内容:取引先とのランチ(1人2,000円)

  • 対応:交際費として経費計上

  • ポイント:「誰と」「目的」「日付」をメモし、レシートに添付して保存


ケース2:自宅のインターネット料金(5,000円/月)

  • 対応:通信費の按分処理(例:業務使用50%→2,500円を経費に)

  • ポイント:使用割合の根拠を記録(作業時間・部屋の広さなど)


ケース3:副業で使っているスマホの購入費(88,000円)

  • 対応:業務使用比率70% → 工具器具備品(減価償却)で按分処理

  • ポイント:償却期間(原則4年)で月次処理、領収書と機種名記録も忘れずに


ケース4:フリーランスが参加した有料セミナー(15,000円)

  • 対応:内容が業務と関連する場合は研修費で計上可能

  • ポイント:案内資料、申込書、主催者名、業務との関連性を記録する


まとめ:経費判断は「ルール+説明責任」で乗り切れる

ポイント 内容
経費になる条件 業務関連性・私的利用排除・証憑の有無
よくある間違い スーツ、家族謝礼、感覚的な按分処理
正しい対応 按分・記録・添付・摘要メモの徹底
税務対策 見せられる記帳と資料の整備、説明責任の意識

「なんとなく経費」は通用しません。
経費処理は、税務署に「正しく説明できる記録」が揃ってこそ意味を持ちます。クラウド会計や経費精算ツールを活用して、手間をかけずにミスを減らしましょう。


✅ 今すぐできる行動リスト

  • 領収書を「経費になりそう」ではなく「証明できるか」で判断

  • 勘定科目や摘要欄を見直して、誤記の可能性をチェック

  • 按分ルールを一度紙に書き出して明文化しておく

  • 会計ソフトの記録に証憑を添付しはじめる

  • 過去にグレーな経費がないか確認する

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