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納品書・請求書・領収書の違いと使い分け方【経理初心者向け】

3つの書類の違いを理解することが経理の第一歩

事業を始めると、取引のたびに「納品書」「請求書」「領収書」といった書類が登場します。
これらは日常的に使われる言葉ですが、それぞれの役割や使い分けを正しく理解していないと、経理処理や税務上の対応でミスが発生することがあります。

特に個人事業主や経理初心者は、

  • 納品書と請求書は何が違うのか

  • 領収書はどのタイミングで発行するのか

  • インボイス制度で何が変わったのか
    など、疑問を持つことが多いです。

本記事では、3つの書類の役割と違い、発行・受領のタイミング、そして実務での使い分け方まで解説します。


違いを曖昧にすると起きるトラブル

納品書・請求書・領収書を混同すると、経理や税務の現場で以下のような問題が発生します。

  1. 支払や入金の管理ミス
    納品書だけで請求書を発行し忘れ、入金遅延が発生する。

  2. 税務調査での経費否認
    領収書の記載内容が不十分で、経費として認められない。

  3. インボイス制度への不適合
    請求書や領収書に登録番号や税率区分がなく、仕入税額控除が受けられない。

  4. 取引先との誤解やトラブル
    請求額や納品内容の認識違いが、契約不履行やクレームにつながる。

これらのリスクは、書類の役割を正確に理解し、正しいタイミングで発行・保管することで防げます。


3つの書類は役割とタイミングが異なる

経理実務での基本は、次のとおりです。

  • 納品書:商品やサービスを引き渡した事実を示す

  • 請求書:代金の支払いを求める

  • 領収書:代金を受け取った事実を証明する

タイミングの流れ(例)

  1. 納品(またはサービス完了)時 → 納品書を発行

  2. 支払いを求めるとき → 請求書を発行

  3. 入金や現金受領時 → 領収書を発行

この流れを押さえることで、経理処理がスムーズになり、税務や契約トラブルを防ぐことができます。

書類の使い分けが重要な3つの背景

1. 法的な位置づけと証拠力の違い

納品書・請求書・領収書は、いずれも法律で統一様式が定められているわけではありませんが、商取引の証拠資料としての役割は異なります。

  • 納品書
    民法上の「債務の履行証明」に該当し、商品やサービスを契約通り引き渡したことを示す書類。
    万一のトラブル時には納品書が履行証拠になります。

  • 請求書
    代金支払いの債務を通知する文書。金額・支払期限・振込先などの条件を明記し、支払い遅延や未払い時の証拠になります。

  • 領収書
    代金の受領事実を証明する文書。金額・受領日・取引内容などが記載され、税務調査や会計監査で経費証拠となります。


2. 税務上の要件(特に消費税)

税務では、領収書や請求書は経費計上や仕入税額控除の証拠として機能します。
これらが不備だと、経費や控除が否認される恐れがあります。

  • 記載必須項目(消費税法上の請求書・領収書)

    • 発行者の氏名または名称

    • 取引年月日

    • 取引内容

    • 税率ごとの消費税額または税抜価格

    • 取引金額(税込)

    • 宛名(特に領収書は重要)


3. インボイス制度との関係

インボイス制度では、適格請求書発行事業者が発行する請求書や領収書に、追加で以下の要件が求められます。

  • 登録番号(13桁)

  • 税率ごとの消費税額と合計額

  • 複数税率がある場合の区分

  • 適格請求書である旨の明記

このため、請求書や領収書は単なる金額通知や受領証明ではなく、消費税控除の前提書類としても重要になっています。


4. 契約トラブル回避のため

書類の不備や混同は、取引先との誤解を招きます。
例えば、納品書しか送付せず請求書を送らなかった場合、取引先は「請求されていない」と認識して支払いが遅れることがあります。
また、領収書の金額や日付が契約書と異なる場合、支払い済みか否かで争いになるケースもあります。

納品書・請求書・領収書の違いと使い分け

1. 納品書の例とポイント

役割:商品やサービスを引き渡した事実を証明する書類。
発行タイミング:納品と同時、または納品後すぐ。

フォーマット例(項目)

  • 発行日

  • 発行者名・住所・連絡先

  • 宛名(取引先名)

  • 納品日

  • 商品名・数量・単価・金額

  • 合計金額(税込)

  • 備考欄(納品条件や担当者名など)


2. 請求書の例とポイント

役割:代金の支払いを求める書類。
発行タイミング:納品後または月末締め後。

フォーマット例(項目)

  • 発行日

  • 発行者名・住所・連絡先

  • 宛名(取引先名)

  • 請求金額(税込)

  • 内訳(商品名・数量・単価・金額)

  • 税率ごとの消費税額

  • 支払期限

  • 振込先口座情報

  • 適格請求書発行事業者登録番号(インボイス制度対応)


3. 領収書の例とポイント

役割:代金を受領した事実を証明する書類。
発行タイミング:現金または振込などで入金を受けた時。

フォーマット例(項目)

  • 発行日

  • 発行者名・住所・連絡先

  • 宛名(受領者名)

  • 受領金額(税込)

  • 税率ごとの消費税額

  • 取引内容(例:「商品代として」)

  • 支払方法(現金・振込など)

  • 適格請求書発行事業者登録番号(インボイス制度対応)


4. 3つの書類の比較表

書類名 発行目的 発行タイミング 主な記載項目 インボイス制度対応
納品書 納品内容の証明 納品時または納品直後 発行日、納品日、商品名、数量、金額 不要(任意)
請求書 支払い依頼 納品後、または締め日後 発行日、金額、内訳、支払期限、登録番号 必要(仕入税額控除対象なら)
領収書 支払い受領証明 入金時 発行日、金額、取引内容、支払方法、登録番号 必要(仕入税額控除対象なら)

5. 実務での流れ例(現金取引)

  1. 納品時に納品書を渡す

  2. 同時または後日、請求書を発行

  3. 入金時に領収書を発行(現金受領の場合は必須、振込の場合は不要なケースも多い)


6. 実務での流れ例(掛取引)

  1. 納品時に納品書を渡す

  2. 月末締めで請求書を発行

  3. 翌月の入金時に領収書を発行(希望があれば)

納品書・請求書・領収書を正しく使い分けるためのステップ

ステップ1:書類テンプレートを整える

  • 納品書・請求書・領収書のひな型をあらかじめ作成

  • インボイス制度対応の項目(登録番号・税率・消費税額)を含める

  • 会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)のテンプレートを活用すると自動計算が可能


ステップ2:発行タイミングのルール化

  • 納品書:納品時または納品直後に必ず発行

  • 請求書:納品後または月末締め後、すぐに発行

  • 領収書:入金確認後、現金受領時は必ず発行


ステップ3:証憑管理を一元化

  • 発行した書類は発行日順・取引先別に保存

  • 紙の場合はファイル管理、電子の場合はクラウド保存(電子帳簿保存法対応)

  • 納品書・請求書・領収書をセットで保管し、取引の全体像を追えるようにする


ステップ4:インボイス制度への対応

  • 請求書・領収書には登録番号と税率ごとの消費税額を必ず記載

  • 適格請求書発行事業者としての登録を済ませる

  • 受け取る側としても、インボイス要件を満たしていない書類は控除対象外になるため注意


ステップ5:月次チェックと修正

  • 月末に未発行書類がないか確認

  • 金額や取引日、登録番号の記載漏れがないか点検

  • 間違いがあれば速やかに訂正発行


書類管理ミス防止チェックリスト

項目 確認
書類テンプレートが整備されているか
発行タイミングがルール化されているか
インボイス制度対応の項目が記載されているか
紙・電子の保管方法が明確か
納品書・請求書・領収書をセットで保管しているか
月末に未発行や記載漏れがないか点検しているか

まとめ

納品書・請求書・領収書は、似ているようで役割と発行タイミングが異なります。
経理初心者でも、

  • 発行目的

  • 発行タイミング

  • 記載必須項目(特にインボイス制度対応)
    を押さえれば、スムーズな書類管理が可能です。

書類管理をルール化し、テンプレートや会計ソフトを活用することで、トラブル防止・税務対応・資金管理の精度が向上します。

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