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請求書の書き方と保存ルール|インボイス制度対応の記載項目まとめ

請求書は「お金のやりとり」を記録する重要書類

請求書は、取引の内容・金額・支払期日を明確に示すビジネス上の基本書類です。
単なる支払い依頼の書類と思われがちですが、税務上の証拠書類であり、経理処理や消費税申告にも直接影響します。

特に、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入後は、請求書の記載項目や保存方法が厳格化され、
従来の書き方のままでは仕入税額控除が認められない可能性も出てきました。

本記事では、インボイス制度対応の請求書の書き方から保存ルールまで、個人事業主・中小企業経営者が押さえるべきポイントを体系的に解説します。


インボイス制度で変わった請求書の必須要件

インボイス制度導入前は、請求書に取引日・取引内容・金額などの一般的な項目があれば問題ありませんでした。
しかし制度導入後は、「適格請求書発行事業者」が発行する請求書でなければ、取引先は仕入税額控除を受けられません。

もし必要な記載が抜けていた場合、

  • 取引先に迷惑をかける

  • 追加で修正・再発行が必要になる

  • 自社の経理処理や申告に影響が出る

といったリスクが発生します。

特に個人事業主や小規模事業者は、書式や保存ルールの誤りから税務調査時に指摘を受けるケースも少なくありません。
つまり、請求書の作成・管理は売上を立てるための作業であると同時に、税務コンプライアンスの要でもあるのです。


正しい請求書作成と保存で税務リスクをゼロに

インボイス制度対応の請求書を正しく作成・保存するためには、以下のポイントを押さえる必要があります。

  • 適格請求書の必須記載項目を漏れなく記載する

  • 取引内容・消費税率・税額を正しく区分して明記する

  • 発行日・取引日・支払期限を明確にする

  • 電子保存の場合は電子帳簿保存法に沿った形式で保管する

  • 保存期間は原則7年間(法人の場合)を遵守する

  • 修正・再発行のルールを社内で統一する

このルールを守ることで、取引先からの信頼を損なわず、税務上のリスクも最小限に抑えることができます。

理由①:インボイス制度では「適格請求書」でなければ仕入税額控除できない

インボイス制度の最大のポイントは、適格請求書発行事業者が発行した請求書でないと、買い手は消費税の仕入税額控除を受けられないという点です。

適格請求書には以下の項目が必ず必要です。

必須項目 内容
① 発行者の氏名または名称および登録番号 登録番号は国税庁サイトで確認可能
② 取引年月日 複数日にわたる場合は期間を記載
③ 取引内容 品名やサービス内容を具体的に記載
④ 税率ごとに区分した消費税額等 10%・軽減税率8%の区分を明記
⑤ 請求書の交付を受ける事業者の氏名または名称 取引先名
⑥ 税率ごとに区分した税込または税抜の合計金額 税率ごとに集計

これらが1つでも欠けると「適格請求書」として認められず、取引先の控除ができなくなります。
その結果、契約や取引に支障をきたすこともあります。


理由②:保存ルールは税務調査時の証拠として機能する

請求書は、単なる取引記録ではなく、課税売上や課税仕入の事実を証明する証拠書類として機能します。
税務調査では、請求書や領収書の保存状態が重点的に確認されます。

  • 保存期間

    • 法人:7年間(欠損金がある場合は10年間)

    • 個人事業主:原則7年間

  • 保存形式

    • 紙保存:原本をファイリング

    • 電子保存:電子帳簿保存法の要件を満たす保存(改ざん防止措置、検索機能など)

もし保存期間内に請求書が欠落していた場合、経費や控除が認められない可能性があり、追徴課税のリスクが高まります。


理由③:電子化が進む中での法的要件の厳格化

請求書管理の電子化が進み、クラウド会計や請求書発行ソフトの利用が一般的になっています。
しかし、電子保存の場合は電子帳簿保存法に沿った管理が必須です。

電子保存の主な要件:

  1. 改ざん防止措置(タイムスタンプ付与、訂正履歴の保存など)

  2. 検索機能(取引日・金額・取引先で検索可能)

  3. 適正事務処理要件(社内規程や運用ルールの整備)

紙のように単純に印刷して保管するだけでは不十分で、電子取引データは電子のまま保存する必要があります。

具体例①:インボイス制度対応の請求書フォーマット例

以下は適格請求書の要件を満たすサンプルです。
WordやExcel、クラウド請求書ソフトでも同様に作成できます。


【適格請求書サンプル】

項目 記載例
発行者名 株式会社〇〇商事
登録番号 T1234567890123
請求書発行日 2024年12月31日
請求先 株式会社△△工業 御中
取引内容 商品A(10%)×10個、商品B(軽減8%)×5個
金額(税抜) 10%:100,000円 8%:50,000円
消費税額 10%:10,000円 8%:4,000円
合計(税込) 164,000円
振込先 〇〇銀行△△支店 普通 1234567 株式会社〇〇商事

フォーマット作成のポイント

  • 税率ごとの金額と消費税額を明確に記載

  • 登録番号は必ず表記

  • 品名・サービス名は具体的に(例:「作業代」だけではNG)

  • 取引日と請求日を混同しない(両方記載が望ましい)


具体例②:保存方法(紙・電子)

紙保存の場合

  • ファイルを年度別・取引先別に分けて保管

  • インデックスラベルで検索性を確保

  • 税務調査時にすぐ提示できるように棚やキャビネットで管理

電子保存の場合(電子取引)

  • 請求書PDFはクラウドストレージ(Dropbox、Google Drive等)に保存

  • 保存時にファイル名を統一(例:「2024-12-31_株式会社△△工業_請求書.pdf」)

  • タイムスタンプ付与または改ざん防止機能付きシステムを利用

  • 検索用のフォルダ階層やタグ付けを行う


具体例③:請求書発行ソフトの活用

適格請求書に自動対応できるソフトを活用すると、記載漏れや税率計算ミスを防げます。

ソフト名 特徴
freee請求書 登録番号自動表示・クラウド保存対応
マネーフォワードクラウド請求書 電子帳簿保存法対応、API連携可
misoca 無料プランあり、軽減税率対応
請求書ジェネレーター シンプルで使いやすい

具体例④:実務フロー(請求書発行から保存まで)

  1. 請求内容の確認(税率・取引先名・登録番号)

  2. ソフトまたはExcelで請求書を作成

  3. 発行前に必須項目のチェック

  4. 送付(郵送または電子)

  5. 紙の場合はファイリング、電子の場合はクラウド保存

  6. 保存台帳や一覧表を更新

行動①:インボイス対応請求書発行のチェックリスト

請求書発行時のミスを防ぐために、以下のチェック項目を発行前に確認しましょう。

【発行前チェックリスト】

  • 登録番号が正しく記載されているか

  • 発行日・取引日が正確か

  • 取引内容が具体的に書かれているか(「作業代」など抽象表現のみはNG)

  • 税率ごとの税抜金額と消費税額が明確に分けられているか

  • 軽減税率対象品目には「※」や区別記号を付けているか

  • 請求金額の合計が正しいか(税率計算含む)

  • 請求先の社名や住所に誤りがないか

  • 保存先(紙・電子)が確保されているか


行動②:社内体制の整備

請求書ミスを減らすには、個人任せではなく仕組み化が重要です。

1. 標準フォーマットの統一

  • 社内で必ず使う請求書テンプレートを統一

  • 更新時には全員に周知し、旧フォーマットは削除

2. 二重チェック体制

  • 発行前に必ず別の担当者が確認

  • 中小企業では経理担当と営業担当のダブルチェックが有効

3. ソフトウェアの導入

  • 記載漏れを自動アラート

  • 税率や登録番号の自動挿入


行動③:定期的なルール見直し

  • 消費税率や制度改正時にフォーマット・マニュアルを更新

  • 年1回は社内研修やチェックリストの再確認を実施


まとめ

インボイス制度導入後は、請求書に必須項目の記載漏れや税率計算の誤りがあると、取引先の仕入税額控除ができず、信頼低下や取引停止のリスクにつながります。
しかし、標準フォーマットの活用・チェックリストの導入・社内体制の整備を行えば、こうしたミスは大幅に減らせます。

今日からできる第一歩として、まずは現在使用している請求書が適格請求書の要件を満たしているか、保存方法は電子帳簿保存法に沿っているかをチェックしましょう。

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