経理の準備が遅れると“損”する時代に
「事業を始めたけど、経理って何から始めればいい?」
「ファイルがバラバラで確定申告が地獄だった…」
そんな声を毎年聞きます。
個人事業主にとって、経理は避けて通れない業務のひとつ。しかも、帳簿の作成や証憑管理を怠ると、青色申告の65万円控除を受けられなくなるなど、税務的な“損”につながるリスクがあります。
この記事では、開業初期に揃えておくべき経理ツールと、日々の書類・レシートを効率的に整理するファイル術を、初心者にもわかりやすく解説します。
手をつけないまま時間が経ち、後悔する人が多い
「開業後すぐに営業活動で忙しくなり、気づけば確定申告の期限が迫っていた…」
というのは個人事業主の“あるある”です。
よくある経理の後悔 | 結果 |
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レシートを放置して溜め込んだ | 不明な支出が増え、経費計上漏れに |
会計ソフトを後回しにした | 青色申告の条件に間に合わず10万円控除に… |
ファイル整理をしていなかった | 税務調査時に慌てて書類探し・ペナルティ発生 |
つまり、事業開始初期こそ、経理体制を整えるチャンスなのです。
会計ソフト+3つのツール+整理フォルダで迷いゼロに
経理は「仕組み化」すれば、誰でもこなせるようになります。
必要なもの(ツール&整理術)
カテゴリ | 推奨内容 |
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会計ソフト | freee、マネーフォワードクラウド、弥生オンライン |
経費記録ツール | レシート用アプリ、クラウドストレージ(Google Drive等) |
書類保存ツール | スキャナー、ファイルボックス、ラベル付きクリアファイル |
整理ルール | 「日付別・科目別」「紙とPDFの混在対応」フォルダ管理術 |
💡これらを“開業初期に”用意しておけば、帳簿作成や確定申告時に慌てることがなくなります。
青色申告と税務署の信頼性は、記帳と整理力にかかっている
青色申告の65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳と「正しい帳簿の保存」が必要です。
要件 | 内容 |
---|---|
記帳要件 | 複式簿記・正確な仕訳入力・帳簿保存7年間 |
保存要件 | 領収書・請求書・契約書などの保存が義務 |
電子帳簿保存法 | スキャナ保存・電子取引保存のルールあり(2024年義務化済) |
📌「帳簿をきちんと付けていない」だけで、青色申告の控除が受けられなくなることも。
📌「保存ルールに違反していた」ことで、税務調査で経費否認→追徴課税されるリスクも。
会計初心者におすすめのクラウド会計ソフト【3選】
個人事業主の経理の第一歩は「会計ソフトを選ぶこと」。手入力のExcel管理はミスが多く、時間もかかります。以下の3つのクラウド会計ソフトは、どれも青色申告対応・自動仕訳機能付きで、初心者に人気です。
会計ソフト比較表(2025年版)
ソフト名 | 特徴 | 初心者向け度 | 月額料金(参考) |
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freee会計 | スマホ操作◎/自動仕訳が優秀/使いやすさ重視 | ◎ | 1,298円〜 |
マネーフォワードクラウド | 分析・レポート機能に優れる/連携サービスが豊富 | ○ | 1,078円〜 |
弥生オンライン | オフライン版に慣れている人におすすめ/税理士と共有しやすい | ○ | 1,320円〜 |
💡青色申告特別控除(65万円)を目指すなら、「複式簿記+電子申告」対応ソフトが必須です。
経費記録に役立つアプリ・ツール
経費処理をスムーズにするには、「その場でレシートを撮る」習慣がカギです。
おすすめツール
ツール名 | 用途 | 特徴 |
---|---|---|
freeeアプリ | 会計ソフト連携・レシート撮影 | 自動仕訳・OCR対応 |
MFクラウド会計アプリ | 明細チェック・仕訳登録 | 銀行・カード連携◎ |
Adobe Scan | レシートスキャン | PDF化してクラウド保存可能 |
Google Drive/Dropbox | 書類保管・共有 | 領収書のバックアップにも使える |
📌**「レシートはすぐ撮る → アップ → 捨てても安心」**という流れを習慣にすれば、紛失・漏れ・ごちゃごちゃが激減します。
ファイル整理に必要な物理アイテム
紙の領収書や請求書は、スキャンするまでの“仮置き”と“月別保存”が重要です。
最低限揃えておきたい整理グッズ
アイテム | 用途 | 推奨ポイント |
---|---|---|
A4クリアファイル(12ポケット) | 月別仕分け | 「1月〜12月」表記付きが便利 |
領収書用ミニ封筒 | 店頭レシート保管用 | バッグの中に1つ常備すると便利 |
ファイルボックス | ファイルや請求書を立てて保管 | 1年分ごとに箱で分けると見やすい |
ラベルライター(テプラ等) | 見出し作成 | 紙・PDF混在時も整理しやすい |
💡【プロのコツ】
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スキャンしたらすぐ廃棄できるよう、「要保存」ファイルと「スキャン済」フォルダを分ける
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請求書・契約書は捨てずに紙&PDF両方を保管しておくと安心
電子帳簿保存法(電帳法)対応の整理法とは?
2024年から、電子取引のデータ保存義務が完全施行されました(※猶予措置終了)。個人事業主も「紙ではなくPDFやデータでやりとりした請求書等」を電子的に保存しなければならないルールが適用されます。
電子取引の例
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メールで受け取った請求書(PDF添付)
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ネット通販の購入履歴(領収書画面)
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クラウド請求書サービスの発行データ
保存ルール3つの条件
条件 | 内容 |
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真実性の確保 | タイムスタンプの付与、訂正削除の履歴管理など |
可視性の確保 | 検索機能(取引日・金額・相手先)を備えること |
可読性の確保 | PCやスマホで簡単に見られるフォーマットで保存 |
💡クラウド会計ソフトは電帳法対応機能が実装済み。freeeやMFでは、レシート撮影+OCR+自動仕訳+検索対応まで一気通貫です。
デジタル整理のおすすめワークフロー
✅ デジタル領収書の整理ルール例(Google Drive使用)

🔧 ファイル名の付け方(一貫性がカギ)
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「費目_相手先_日付」の順に統一
例:交際費_株式会社あいう_2025-03-15.pdf
💡検索性が高まり、税務調査にも対応しやすくなります。
会計ソフトとのスムーズな連携ポイント
機能 | できること | 対応サービス例 |
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銀行・カード連携 | 入出金情報の自動取得 | freee、MF、弥生 |
領収書OCR読み取り | レシート撮影→自動仕訳提案 | freee、MF |
API連携 | スキャナアプリやストレージと連携 | Google Drive、Dropbox |
💡注意:仕訳内容は「自動=正確」ではない!
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仕訳候補をそのまま登録せず、摘要・科目・金額を確認してから登録しましょう
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最初の数カ月は手動修正を繰り返すことで「学習精度」が上がります(AI補正機能あり)
初心者がつまずくポイントと対処法
つまずきポイント | 対処法 |
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レシートの分類ができない | 費目一覧を印刷して、仕訳ルールを決めておく |
領収書と明細の照合が煩雑 | 月1で時間を取り、経費精算タイムをルーチン化 |
ソフトの使い方が難しい | freee/MFの公式YouTubeやサポートチャットを活用 |
開業1年目の経理スタートガイド:最初の30日間で整える
✅ ステップ1:業務と経理の境界を決める(Day1〜Day3)
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自宅の一部をオフィスに使う場合、面積比や使用時間比で按分ルールを決めておく
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事業用の銀行口座やクレジットカードをプライベートと分離
✅ ステップ2:会計ソフトと記録体制を整える(Day4〜Day10)
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会計ソフトの登録、初期設定(科目設定・残高入力など)
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レシートの記録方法(アプリ or スキャナ)を選び、操作に慣れる
✅ ステップ3:ファイル&フォルダの整理ルールを作成(Day11〜Day15)
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紙のファイル分類ルールとクラウドのフォルダ構成を統一
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規則正しく保存できるよう、テンプレートを用意
✅ ステップ4:1週間ごとの経理習慣をルーチン化(Day16〜Day30)
曜日 | 作業内容 |
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毎週月曜 | 銀行・クレカの明細確認、仕訳登録 |
毎週金曜 | 領収書スキャン・アップロード |
月末 | 売上・支出のチェック/月次レポート出力 |
💡月1〜2時間の「経理タイム」だけでも充分に回せる体制が完成します。
日々の運用を定着させるコツ
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Googleカレンダーに「経理ルーチン」を登録し、通知ONにする
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「経費ノート」やメモアプリで、「いつ・どこで・何のために使ったか」を残す
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領収書撮影を「買った直後」に癖づける(5秒で完了)
最後に:経理は“仕組み”で勝つ
経理は才能でもセンスでもなく、正しい道具と習慣の構築がすべてです。
忙しい個人事業主こそ、「早く・正しく・ラクに処理できる仕組み」が事業成功の下支えになります。
迷ったときは、以下のチェックを。
経理チェックリスト | 完了したら✅ |
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会計ソフトの導入が完了している | ✅ |
レシートの保存方法を決めている | ✅ |
デジタル&紙のフォルダ構成を作った | ✅ |
領収書や書類を週1で処理している | ✅ |
確定申告前に焦らない運用ルールがある | ✅ |