経理を税理士に任せると経営はどう変わる?
経理は事業運営に欠かせない業務ですが、売上や経費の管理、帳簿付け、税務申告など、慣れないと非常に時間がかかります。
そこで頼りになるのが税理士です。
しかし、「税理士に経理を頼んだら全部やってくれるの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。
実際には、税理士との契約内容によって対応範囲が異なります。
単に申告書の作成だけを行う場合もあれば、記帳代行・経理指導・節税提案までフルサポートしてくれる場合もあります。
本記事では、税理士の顧問契約で対応してくれる業務範囲や、その実態、契約時の注意点まで網羅的に解説します。
税理士に頼める範囲を誤解すると損をする
税理士に経理を依頼する際、「全部やってくれる」と思い込んでしまうと、次のようなトラブルにつながります。
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業務範囲の勘違い
記帳や領収書整理は含まれていないのに依頼してしまい、追加費用が発生 -
経理作業の二重化
自社で入力したデータを税理士が再入力してしまい、時間とコストが無駄になる -
節税チャンスの逸失
契約が申告業務のみのため、日常的な経営相談や節税提案が受けられない
こうしたミスマッチを避けるためには、顧問契約の範囲と実務内容を正しく理解することが不可欠です。
税理士顧問契約は「業務範囲の明確化」が鍵
結論として、税理士に経理を頼む場合は、
**「どこまで税理士がやり、どこまで自社がやるか」**を契約前に明確に決めることが重要です。
一般的な顧問契約の範囲は次の3つに分類できます。
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申告特化型:決算書・申告書作成がメイン(記帳は自社対応)
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記帳代行型:領収書や請求書を渡せば帳簿作成まで代行
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経営サポート型:記帳・申告に加え、節税・資金繰り・経営相談まで包括支援
契約タイプによって料金・対応内容・コミュニケーション頻度が大きく異なるため、事前の確認が必須です。
税理士の業務は法律で範囲が決まっている
税理士の業務は、税理士法によって定められています。
大きく分けると、次の3つが基本業務です。
1. 税務代理
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税務署に提出する申告書や届出書を作成・提出
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税務調査の立会い、税務署との折衝
2. 税務書類の作成
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決算書、申告書、消費税申告書などの作成
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相続税や贈与税の申告書作成も含む
3. 税務相談
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税金計算や節税策に関する助言
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税制改正への対応方法の提案
これらは税理士しかできない独占業務ですが、日常的な経理作業(仕訳入力や領収書整理など)は必ずしも含まれません。
そのため、経理代行を頼みたい場合は、別途「記帳代行契約」が必要になるケースが多いのです。
税理士が行う業務の範囲と限界
税理士は税務の専門家ですが、すべての経理業務を自動的にやってくれるわけではありません。
特に以下の点は誤解されやすい部分です。
1. 税理士は「帳簿付け」を必ずやってくれるわけではない
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記帳(仕訳入力)は本来、事業者が行うべき業務
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記帳代行はオプションとして追加費用が発生することが多い
2. 経営判断や会計コンサルティングは契約次第
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節税提案や経営アドバイスは顧問契約に含まれる場合もあれば、別途コンサル契約が必要な場合もある
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会計ソフト導入や業務フロー改善支援もオプション扱いが多い
3. 給与計算や社会保険手続きは範囲外のことが多い
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税理士が対応できるのは源泉所得税の計算や年末調整まで
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社会保険・労働保険は社会保険労務士の業務範囲
契約タイプ別の対応内容比較
税理士顧問契約は、大きく分けて以下の3タイプがあります。
| 契約タイプ | 主な業務内容 | メリット | デメリット | 料金目安(月額) |
|---|---|---|---|---|
| 申告特化型 | 決算書作成、税務申告 | コストが安い | 日常経理は自社負担、節税提案が少ない | 1〜3万円 |
| 記帳代行型 | 記帳、決算、申告 | 経理負担がほぼゼロ | 領収書提出期限を守る必要あり | 3〜7万円 |
| 経営サポート型 | 記帳、決算、申告、経営相談、節税提案 | 資金繰り・節税も含め全面サポート | 料金が高め | 5〜15万円 |
申告特化型の特徴
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経理データは自社で作成し、税理士は申告書だけ作成
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会計ソフトを使いこなせる事業者に向く
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節税提案や経営アドバイスは最小限
記帳代行型の特徴
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領収書や通帳コピーを渡せば帳簿を作成してくれる
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経理担当者がいない小規模事業者に向く
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書類提出の遅れは申告期限ギリギリの原因になる
経営サポート型の特徴
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記帳代行に加えて、節税提案や資金繰り改善策も提供
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月次ミーティングで数字の分析や改善アドバイス
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経営の伴走者として長期的に関与
税理士に依頼できる経理業務一覧
税理士に頼める業務は契約内容によって異なりますが、代表的なものを以下に整理します。
1. 記帳代行関連
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領収書・請求書の整理
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会計ソフトへの仕訳入力
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預金通帳やクレジット明細の入力
2. 月次・年次決算関連
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試算表の作成
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月次決算報告
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決算書の作成
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税務申告書の作成と提出
3. 税務関連
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法人税・所得税・消費税の計算と申告
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源泉所得税の計算と納付書作成
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年末調整と法定調書の作成
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税務調査の立会い
4. 経営サポート関連(契約内容による)
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節税対策の提案
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資金繰り改善アドバイス
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事業計画や資金計画の策定支援
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補助金・融資申請のサポート
契約前に確認すべきポイント
税理士顧問契約を結ぶ前に、次の点を確認しておくことが重要です。
1. 業務範囲
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記帳代行は含まれるか
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節税提案や経営相談の頻度はどれくらいか
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資金繰りや経営改善のサポートはあるか
2. コミュニケーション方法と頻度
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面談・電話・メール・チャットのどれを使うか
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月次報告はあるか
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緊急時の対応方法
3. 料金体系
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基本料金とオプション料金の内訳
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決算料や年末調整料の有無
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契約期間と解約条件
顧問契約チェックリスト
| 確認項目 | 確認済 |
|---|---|
| 記帳代行の有無と範囲を確認した | ☐ |
| 節税提案・経営相談の有無を確認した | ☐ |
| コミュニケーション方法・頻度を確認した | ☐ |
| オプション料金の有無を確認した | ☐ |
| 決算料・年末調整料など追加費用を確認した | ☐ |
| 契約期間・解約条件を確認した | ☐ |
税理士との顧問契約は「範囲の明確化」が成功のカギ
税理士に経理を依頼する場合、**「どこまでやってくれるか」**を明確にしないまま契約すると、
追加費用や業務の二重化、節税チャンスの逸失といったトラブルの原因になります。
今回解説したポイントをおさらいすると、次の通りです。
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税理士は税務の専門家だが、記帳や経理代行は契約による
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顧問契約は「申告特化型」「記帳代行型」「経営サポート型」の3タイプに分類される
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契約内容によっては節税提案や資金繰り改善までサポート可能
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契約前には業務範囲・料金・連絡方法を明確にし、書面で確認する
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チェックリストを活用して、必要なサービスが含まれているかを確認する
経理や税務を税理士に任せれば、事業者は本業に集中でき、経営判断も正確になります。
ただし、そのためには契約内容を十分に理解し、必要なサポートが受けられる形で契約することが不可欠です。

