お客様の豊かさの最大化を共に叶える、頼れる税務会計のパートナー

法人設立後に必要な税務手続きと届出書まとめ【チェックリスト付き】

法人設立後に「やるべきこと」は意外と多い

法人を設立すると、晴れて事業活動を開始できます。しかし、設立登記が終わっただけでは業務は完了ではありません。
法人化直後にやらなければならない「税務手続き」や「届出書の提出」が複数存在し、これを怠ると税務上の不利益や罰則の対象になる可能性があります。

特に初めて法人を立ち上げた経営者は、どの届出が必須で、どの届出が任意なのかを理解しにくく、期限を過ぎてしまうケースが少なくありません。

この記事では、2025年現在の最新税制に基づき、法人設立後に必要な税務手続きと届出書を一覧化し、それぞれの意味や提出期限を解説します。さらに、すぐ使えるチェックリスト付きで、提出漏れを防ぐ実務サポートを提供します。


届出漏れで損をする経営者は多い

法人設立後に必要な届出は、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場といった複数の提出先が存在します。また、税務署への提出書類だけでも10種類以上あり、期限も「設立から1か月以内」「事業開始から2か月以内」などバラバラです。

もし期限内に届出を行わなかった場合、次のようなリスクが発生します。

  • 青色申告ができず、節税効果が失われる

  • 源泉所得税の納期特例が使えず、毎月納付が必要になる

  • 消費税の選択届出が間に合わず、課税期間を有利に設定できない

  • 地方税の均等割が予想外に増える場合がある

こうした届出漏れは、特に1人社長や小規模法人で税理士をつけずに運営している場合に起こりやすく、結果として「本来払わなくてもよかった税金を払ってしまう」という事態になりがちです。


法人設立後は「提出先×期限別」に整理して対応する

法人化直後の届出漏れを防ぐための最大のポイントは、
**「提出先ごとに必要書類を一覧化し、期限順に処理する」**ことです。

提出先は大きく分けると次の3つに分類されます。

提出先 主な届出内容 提出期限の目安
税務署 青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税関係届出、消費税関係届出など 設立日から1〜2か月以内
都道府県税事務所 法人設立届出書、事業開始届出書など 設立日から15日〜1か月以内
市区町村役場 法人設立届出書(住民税関係) 設立日から15日〜1か月以内

この3つの提出先を基準に、「設立後の1か月」「2か月」「半年」などのタイムラインで行動計画を立てるのが効率的です。

なぜ法人設立後の税務届出が重要なのか

1. 節税メリットを最大化するため

法人税や所得税には、届出を出すことで初めて適用される特例や控除があります。代表的なのが「青色申告承認申請書」。これを提出すれば、欠損金の繰越控除や30万円未満の少額減価償却資産の全額経費化など、大きな節税効果を得られます。

提出期限(原則設立日から3か月以内、または最初の事業年度終了日の前日のいずれか早い日)を過ぎると、その年度からは適用できず、節税機会を失います。


2. 納税業務の負担軽減

法人は給与を支払う場合、源泉所得税を徴収し、毎月(または納期特例を使えば年2回)納付しなければなりません。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、毎月の納付事務が年2回に減り、事務負担が大幅に軽くなります。


3. 消費税の有利な課税期間設定

売上や資本金によっては、設立初年度から消費税の課税事業者になる可能性があります。
「課税事業者選択届出書」や「簡易課税制度選択届出書」を適切なタイミングで出すことで、資金繰りや納税額を有利にコントロールできます。
これらの届出は提出期限が厳格で、一度期限を逃すと原則として翌課税期間まで適用できません。


4. 地方税の申告義務を明確化

都道府県税事務所や市区町村への法人設立届出は、法人住民税や法人事業税の課税を適切に行うための手続きです。
提出しないと課税通知が遅れたり、延滞税が発生する可能性があります。


提出書類の詳細と期限

ここからは、提出先別に代表的な書類と提出期限、ポイントを具体的に解説します。


【1】税務署への届出書

青色申告承認申請書

  • 期限:設立日から3か月以内、または第1期事業年度終了日の前日までの早い方

  • 目的:欠損金の繰越控除、30万円未満資産の即時償却などの節税メリット

  • ポイント:提出しない場合は白色申告となり、節税メリットが大幅に減少

給与支払事務所等の開設届出書

  • 期限:給与支払開始日から1か月以内

  • 目的:給与から源泉徴収する義務の発生を税務署に届け出る

  • ポイント:提出しないと源泉徴収義務違反となる恐れ

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

  • 期限:随時(できるだけ早め)

  • 目的:源泉所得税の納付を年2回に減らす

  • ポイント:人件費の少ない小規模法人には特に有効

消費税関連届出

  • 課税事業者選択届出書
    期限:課税期間開始日の前日まで
    目的:消費税課税事業者になる選択

  • 簡易課税制度選択届出書
    期限:課税期間開始日の前日まで
    目的:売上規模に応じて簡易的な計算で消費税額を算出


【2】都道府県税事務所への届出書

法人設立届出書

  • 期限:設立日から15日〜1か月以内

  • 目的:法人事業税・法人県民税の課税開始を通知

  • ポイント:添付書類(定款写し・登記事項証明書など)を忘れない


【3】市区町村役場への届出書

法人設立届出書(市町村用)

  • 期限:設立日から15日〜1か月以内

  • 目的:法人住民税の課税開始を通知

  • ポイント:法人の所在市区町村ごとに提出が必要


📌 ここまでのまとめ

  • 法人化後は税務署・都道府県・市町村の3ルートで届出が必要

  • 特に青色申告承認申請書と源泉所得税納期特例申請は、節税・事務効率化に直結

  • 提出期限は短いものが多く、法人設立直後は優先的に処理すべき

提出時の注意点と実務ポイント

1. 書類の入手方法

  • 税務署関連書類:国税庁ホームページからダウンロード可能。最寄りの税務署窓口でも入手できます。

  • 地方税関連書類:各都道府県税事務所、市区町村役場のホームページから取得可能。

  • 電子提出:e-Tax(国税)、eLTAX(地方税)に対応しており、オンラインでの提出も可能。


2. 提出書類の添付資料

届出書だけでなく、以下の添付が求められる場合があります。

  • 定款の写し

  • 登記事項証明書

  • 設立時貸借対照表(資本金の内訳など)

  • 代表者のマイナンバーや本人確認書類(必要な場合)


3. よくあるミスとトラブル例

  • 提出期限を過ぎてしまう
    → 青色申告が翌期からしか使えず、節税機会を失う

  • 地方税の届出漏れ
    → 住民税・事業税の課税通知が遅れ、延滞金が発生

  • 添付書類の不備
    → 届出が受理されず再提出になり、期限に間に合わないリスク


4. 実務の流れイメージ

  1. 法人設立登記完了(登記事項証明書・定款の準備)

  2. 1週間以内:地方税の法人設立届出書(都道府県・市町村)

  3. 3週間以内:給与支払事務所開設届出書

  4. 3か月以内:青色申告承認申請書

  5. 必要に応じて消費税関連届出書・源泉所得税納期特例申請書


法人設立後の税務手続きチェックリスト

下記チェックリストを活用すれば、漏れなく届出が可能です。

提出先 届出書類名 提出期限 優先度 備考
税務署 青色申告承認申請書 設立から3か月以内または期首から ★★★ 節税効果大
税務署 給与支払事務所等の開設届出書 給与支払開始から1か月以内 ★★ 従業員1人でも必要
税務署 源泉所得税納期特例承認申請書 随時 ★★ 小規模法人向け
税務署 消費税課税事業者選択届出書 課税期間開始前日まで 必要に応じて
税務署 簡易課税制度選択届出書 課税期間開始前日まで 年間売上5,000万円以下
都道府県税事務所 法人設立届出書 設立日から15日〜1か月以内 ★★★ 定款・登記簿添付
市区町村役場 法人設立届出書 設立日から15日〜1か月以内 ★★★ 所在地ごとに提出

実践のポイント

  • 期限の短い届出を優先(青色申告承認申請・地方税届出)

  • e-Tax・eLTAXの活用で時間短縮

  • 税理士に依頼する場合は設立直後にまとめて依頼

Contactお問い合わせ

お問い合わせフォーム