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フリーランスが経費にできるもの一覧【税務調査で否認されないために】

経費の知識は「節税」と「安心経営」のカギ

フリーランスや個人事業主にとって、経費の正しい理解は収入を守る大切な武器です。経費を適切に計上すれば、所得税や住民税の負担を軽くできます。しかし一方で、税務調査で経費を否認されてしまうと、追加で税金や延滞税・加算税が発生し、思わぬダメージを受ける可能性があります。

「どこまでが経費になるのか?」「税務署がチェックするポイントは何か?」という疑問は、誰もが抱えるものです。本記事では、フリーランスが経費にできる主な支出を網羅し、税務調査でも安心できる判断基準と実務ポイントを整理します。


経費の範囲を誤解するとリスクが増える

経費の計上ミスには2種類あります。

  • 経費にできるのに計上していないケース(損)

    • 節税の機会を逃してしまう

    • 手元資金が減る

  • 経費にならないものを計上してしまうケース(危険)

    • 税務調査で否認される

    • 追徴課税・延滞税・過少申告加算税などの追加負担

特に後者は「悪意がなくても」発生します。
例えば、家賃や通信費などプライベートと混ざる支出(家事按分)が適切でない場合や、証拠書類の保存が不十分な場合は、正当な経費でも否認されるリスクがあります。

つまり、経費の判断基準と証拠管理のルールを理解しなければ、「節税」どころか「損失」になりかねません。


経費は「事業との直接関連性」と「証拠」で判断する

フリーランスが経費にできる支出は、次の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 事業に直接必要な支出であること
    → 事業の売上を得るため、または業務の遂行に不可欠な支出

  2. 証拠を提示できること
    → 領収書・請求書・契約書などで事業関連性を証明できる

この2つが揃って初めて、税務署も経費として認めます。
また、グレーゾーンの支出(プライベートと事業が混在するもの)は、合理的な計算で按分し、その根拠を記録しておくことが重要です。


なぜ「関連性」と「証拠」が重要なのか

税法上の経費(必要経費)は、「事業所得を得るために直接要した費用」 です。
所得税法第37条でも、経費の範囲は「その年の総収入金額を得るために直接必要な費用及びこれに通常要する費用」と明記されています。

税務署は、この「直接必要」を非常に重視します。
例えば以下のようなケースです。

支出内容 税務署の判断ポイント 認められる可能性
打ち合わせで使ったカフェ代 打ち合わせ記録があるか、参加者・議題が明確か 高い
友人との食事代 事業との関係性を証明できるか 低い
自宅の家賃 面積割合や使用時間の根拠があるか 中〜高
家族旅行 出張との関係性が明確か 低い

さらに、証拠の保存義務(電子帳簿保存法・インボイス制度対応)が強化されており、
領収書・レシートをスキャンまたはデータ保存する場合は、改ざん防止や検索機能の確保など一定の要件を満たす必要があります。

フリーランスが経費にできる支出一覧

フリーランスの経費は業種や仕事内容によって異なりますが、代表的な支出をカテゴリーごとに整理すると、判断がしやすくなります。

1. 仕事場所・設備に関する経費

経費項目 具体例 ポイント
事務所・自宅の家賃 自宅の一部を事務所として使用する場合(家事按分) 面積や使用時間の割合を根拠として記録
光熱費 電気・ガス・水道 事業使用分を合理的に按分
オフィス家具 デスク、椅子、棚 高額の場合は減価償却
事務用品 文房具、プリンターインク、ファイル 領収書を保存

2. 通信・IT関連費

経費項目 具体例 ポイント
インターネット回線 光回線、モバイルルーター プライベート利用分を除外
携帯電話料金 通話・データ通信 事業利用割合を算出
ソフトウェア 会計ソフト、デザインツール、クラウドサービス サブスク契約書・請求書を保存
ホームページ制作費 デザイン、サーバー代、ドメイン代 契約書と請求書で証拠化

3. 交通・移動費

経費項目 具体例 ポイント
電車・バス代 取引先訪問、打ち合わせ 経路と目的を記録
タクシー代 荷物運搬、深夜移動 領収書に利用目的をメモ
自家用車経費 ガソリン代、駐車場代、高速代 走行距離で事業使用割合を算出
出張費 宿泊費、交通費、日当 出張日程と業務内容を記録

4. 接待交際費

経費項目 具体例 ポイント
取引先との会食費 レストラン、カフェ 相手先・目的を領収書に記録
贈答品 お中元、お歳暮、開業祝い 相手先と送付目的を残す
イベント参加費 展示会、懇親会 名刺やパンフレットを保存

5. 仕入・業務委託費

経費項目 具体例 ポイント
材料費 原材料、消耗品 仕入先と用途を明記
外注費 ライター、デザイナー、エンジニアへの委託費 契約書・納品物を保存
印刷費 チラシ、パンフレット、名刺 デザインデータや注文書を保管

6. 広告・宣伝費

経費項目 具体例 ポイント
ネット広告費 Google広告、SNS広告 配信レポートを保存
チラシ配布費 印刷・配布費用 配布エリアと部数を記録
看板制作費 店舗看板、ポスター 設置写真も保存

7. 教育・研修費

経費項目 具体例 ポイント
セミナー受講費 業務関連の講座 テーマと業務の関連性を記録
書籍代 専門書、ビジネス書 領収書に書籍タイトルを記載
資格取得費 試験料、教材費 事業に関連する資格に限定

8. 保険料・税金

経費項目 具体例 ポイント
損害保険料 事務所の火災保険、業務賠償保険 個人向け保険は不可
社会保険料 従業員分 自身の国民年金・健康保険は経費にならない
事業税 個人事業税 納付書・領収書を保存

9. 雑費

業務上必要だが他の分類に当てはまらない少額支出(切手代、文書発行手数料など)。


グレーゾーン経費と家事按分

プライベートと事業が混在する支出は、家事按分 で事業分のみ経費計上します。

家事按分の例

  • 自宅家賃:事業専有面積 ÷ 自宅全体面積

  • 電気代:事業使用時間 ÷ 1日の総使用時間

  • 携帯電話:事業用通話時間 ÷ 総通話時間

按分根拠は書面やExcelで残し、税務調査に備えましょう。

税務調査で否認されないための証拠管理術

経費を正しく計上していても、証拠不足 が原因で税務署に否認されるケースは少なくありません。
以下のポイントを押さえておけば、万一の税務調査でも説明がスムーズに進みます。

1. 領収書・レシートの保存

  • 金額、日付、支払先が明記されたものを必ず保存

  • 用途や相手先をメモしておくと信頼性アップ

  • レシートの感熱紙は劣化しやすいため、スキャン保存推奨

2. 請求書・契約書の保管

  • 外注費や継続契約は契約書があると強い証拠になる

  • 請求書は支払い証明(振込明細など)とセットで保存

3. デジタルデータの保存ルール

  • 電子帳簿保存法に対応するため、スキャンデータやPDFは改ざん防止措置が必要

  • ファイル名に「日付_内容_金額」を入れると検索性向上

  • クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)でバックアップ

4. 按分計算の根拠

  • 家賃や光熱費などの按分は、面積割合・時間割合の計算表 を残す

  • 計算根拠をエクセルや書面にして保管


よくある経費否認の事例と回避策

否認された経費 否認理由 回避策
友人との食事代 事業との関連性が不明 相手先・議題を領収書に記入
家族旅行費 私的支出と判断 出張日程と業務内容を証明
高額なパソコン周辺機器 私的利用の可能性 利用用途・使用記録を残す
自宅家賃全額 家事利用部分を除外していない 面積割合で按分計算

特に 「プライベートとの混同」 は税務署が最も疑うポイントです。
「仕事でも使っているから」という主張だけでは通らず、利用実態を示す記録が必要になります。


経費管理の効率化ツール

経費証拠の管理を効率化するには、クラウド会計ソフト の利用が有効です。

代表例

  • freee会計:スマホで領収書撮影 → 自動仕訳

  • マネーフォワードクラウド:銀行・カード明細を自動連携

  • 弥生会計オンライン:請求書・経費精算を一元管理

これらのツールは電子帳簿保存法対応やインボイス制度対応も進んでおり、税務調査時の書類提出もスムーズになります

今日からできる経費計上の改善ステップ

正しい経費管理は、日々の積み重ねが大切です。今日から始められる実践的なステップを5つにまとめました。

ステップ1:経費のルールを決める

  • 経費に計上する条件を「事業との関連性があるか」「証拠があるか」で統一

  • グレーゾーンは事前に按分ルールを決めておく

ステップ2:証拠をリアルタイムで保存

  • 領収書・レシートはその場でスマホ撮影

  • 会食や打ち合わせの内容はレシート裏やメモアプリに記録

ステップ3:取引を自動化

  • 銀行口座やクレジットカードをクラウド会計ソフトに連携

  • 入出金が自動反映されることで入力漏れを防止

ステップ4:月1回の経費チェック

  • 按分計算やレシート未保存分をまとめて確認

  • 事業関連性が弱い支出は除外する勇気も必要

ステップ5:年1回は専門家に確認

  • 税理士に経費計上方法や証拠の管理状況を見てもらう

  • 税制改正や新制度(インボイス制度、電子帳簿保存法)の対応漏れを防ぐ


まとめ

フリーランスが経費を正しく計上するためには、

  1. 事業との直接的な関連性

  2. 証拠の保存

  3. 合理的な按分計算

この3つが柱になります。

また、経費の範囲を広げることだけでなく、税務調査で否認されないための管理体制づくりも欠かせません。日々の記録・保存・按分を意識することで、節税効果を最大化しつつ、安心して事業を継続できます。

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