フリーランスは保険選びが命綱になる
フリーランスとして独立すると、仕事の自由度や収入の上限が大きく広がります。
しかし同時に、会社員時代は当たり前に守られていた「社会保険制度の一部」や「福利厚生」がなくなります。
万が一の病気・ケガ・事故、さらには業務上のトラブルに対しても、すべて自分でリスク管理を行わなければなりません。
保険は、こうしたリスクから生活と事業を守るための最低限の備えです。
特にフリーランスは、病気やケガによる収入減少リスク、業務上の損害賠償リスク、老後資金不足リスクの3つが大きく、早期の保険加入が経営の安定にも直結します。
フリーランスが抱える「保険の空白地帯」
会社員からフリーランスになると、次のような保険の穴が生まれます。
会社員時代に加入 | フリーランスになった後 |
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健康保険(傷病手当金付き) | 国民健康保険(傷病手当金なし) |
厚生年金 | 国民年金(老後受取額が減少) |
労災保険 | 原則加入なし(特別加入制度あり) |
団体保険・福利厚生保険 | 自分で契約が必要 |
つまり、病気やケガで長期休業すると収入ゼロになる可能性があり、老後の年金額も大幅に減ります。
さらに、業務ミスや事故で第三者に損害を与えた場合、会社が守ってくれることはなく、全額自己負担となります。
最初に契約すべき保険はこの3つ
フリーランスがまず優先すべき保険は、以下の3つです。
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所得補償保険(休業補償保険)
病気やケガで働けなくなったときの生活費を補うため -
賠償責任保険(業務遂行・受託業務)
業務上のミスや事故による損害賠償から守るため -
小規模企業共済(保険ではないが実質的な退職金制度)
老後資金や廃業時の備えとして利用可能
これらは、生活防衛・事業継続・将来の資金確保という3つの視点で必須です。
理由①:所得補償保険はフリーランスの生命線
健康保険の傷病手当金がない
会社員時代は、病気やケガで働けないときに「傷病手当金」が最長1年6か月間支給されました。
しかし、国民健康保険にはこの制度がありません。
つまり、働けない=収入ゼロという状況になります。
所得補償保険の仕組み
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月額○万円という形で、働けない期間の生活費を補償
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補償期間は数か月〜数年まで選択可能
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病気・ケガいずれも対象(免責期間あり)
例:月20万円の補償 × 12か月契約の場合、最大240万円の生活費を確保できる
理由②:賠償責任保険は事業存続のための盾
フリーランスは全責任を負う立場
クライアントとの契約不履行、納品データの欠損、撮影機材の破損、情報漏えい…
こうした事故が発生した場合、会社員なら会社が責任を負いますが、フリーランスは全額自己負担です。
賠償責任保険のカバー範囲
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業務上のミスによる損害賠償
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納品物の不具合・遅延
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個人情報の漏えい
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機材や設備の破損
ITエンジニア、デザイナー、カメラマン、コンサルタントなど、ほとんどの業種に対応する特約が存在します。
理由③:小規模企業共済で将来と廃業時の備えを同時に
老後資金と廃業時の生活資金を確保
小規模企業共済は、個人事業主や小規模法人経営者が加入できる退職金制度です。
毎月の掛金が全額所得控除となり、節税効果を得ながら老後資金を積み立てられます。
さらに、廃業や事業譲渡時には退職金として一括受け取りが可能です。
メリット
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掛金は月1,000円〜7万円まで設定可能
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全額が所得控除となり、節税効果が大きい
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廃業時に退職金として受け取れる
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任意解約でも一部戻ってくる(加入期間による)
注意点
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短期解約は元本割れの可能性あり
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原則20年以上の長期利用で最大効果
3人のフリーランス事例比較
事例 | 保険加入状況 | トラブル内容 | 結果 |
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Aさん(デザイナー) | 所得補償保険のみ | 腱鞘炎で半年休業 | 生活費は確保できたが、契約不履行で損害賠償を自費負担(300万円) |
Bさん(カメラマン) | 所得補償+賠償責任保険 | 撮影機材を破損 | 保険で全額カバー、信頼を維持 |
Cさん(ライター) | 所得補償+小規模企業共済 | 長期療養で廃業 | 共済金を退職金として受け取り、生活再建が可能 |
このように、複数の保険を組み合わせることで、生活・事業・将来の3方面からリスクを軽減できます。
保険加入までのステップ
1. 自分のリスクを洗い出す
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病気・ケガの可能性(健康状態・生活習慣)
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業務ミスや物損リスク(業種特性)
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老後資金の準備状況
2. 必要な保険を優先順位で決定
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まずは所得補償保険
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次に業務に直結する賠償責任保険
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余裕があれば小規模企業共済
3. 複数社の見積もりを比較
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補償内容・免責期間・保険料を総合評価
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同業者の事例を参考に選定
4. 年に1回は見直し
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売上や生活状況の変化に応じて補償額を調整
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無駄な保険料を削減しつつ必要な保障は維持
まとめ
フリーランスは、収入の変動や社会保険制度の違いから、リスクに対する備えが不足しがちです。
特に「所得補償保険」「賠償責任保険」「小規模企業共済」は、生活と事業、将来を守る三本柱として早期加入がおすすめです。
保険は「余裕ができたら」ではなく、「独立と同時」に契約することが、安心して仕事を続けるための第一歩になります。