法人設立には「費用」がかかる!知らずに始めて後悔しないために
個人事業主から法人化を考えるとき、必ずぶつかるのが「法人設立にかかる費用っていくら?」という疑問です。登記の手続きや定款認証、税理士との顧問契約など、想像以上に多くの費用がかかることをご存知でしょうか。
本記事では、2025年現在の最新情報をもとに、法人設立にかかる費用を一つひとつ丁寧に解説していきます。これから会社設立を検討している方が、無駄な出費を避けつつ、賢く法人化できるよう、網羅的なチェックリスト形式でまとめています。
見落としがちな「設立費用」が利益圧迫の原因に
多くの方が、法人設立のメリット(節税・信用力アップ・資金調達のしやすさなど)に目を向けがちですが、設立時の費用が思った以上にかかって資金繰りを圧迫するケースもあります。
特に一人社長や小規模法人では、設立直後の支出がそのまま経営リスクに直結します。だからこそ、どんな費用がかかるのか、あらかじめ知っておくことが非常に重要です。
法人設立費用は合計20万〜30万円が目安。顧問契約でさらに増える可能性も
法人を設立する際に必要な主な費用は以下の通りです:
費用項目 | 金額の目安(株式会社) |
---|---|
定款認証(公証人役場) | 約52,000円 |
登録免許税(法務局) | 150,000円〜 |
定款印紙代(紙の場合) | 40,000円(電子定款なら不要) |
謄本・印鑑証明取得費用 | 約2,000〜3,000円 |
税理士との顧問契約費用 | 月1〜3万円(年間12万〜36万円) |
最小構成でも約20万円、顧問契約などを含めると30万円以上かかるケースもあります。設立だけでなく、その後の運営費も含めて資金計画を立てることが大切です。
法人設立には「法定費用」と「任意費用」がある
法人を設立するときの費用は、大きく分けて「法定費用」と「任意費用」に分類できます。
1. 法定費用(必ず発生する)
これは、法律や制度上必ず支払わなければならない費用です。以下は株式会社を設立する場合の代表例です。
項目 | 金額 | 内容 |
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定款認証料(公証人役場) | 約52,000円 | 公証人が定款の内容を認証するための費用 |
登録免許税(法務局) | 資本金×0.7%(最低150,000円) | 法務局で登記を行う際の税金 |
定款印紙代 | 40,000円(紙定款のみ) | 紙の定款に収入印紙を貼る必要がある(電子定款なら不要) |
登記簿謄本取得費 | 1通あたり約500円 | 登記後、会社情報を証明するために取得 |
会社印鑑作成費 | 約3,000〜20,000円 | 実印・銀行印・角印などを作成 |
これらは設立手続きの過程で必ず発生するため、削減はほぼ不可能です。ただし、電子定款を利用することで印紙代40,000円を節約できます。
2. 任意費用(選択によって変動する)
任意費用は必ずしも必要ではありませんが、多くの場合は支払うことになります。
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税理士・会計事務所との顧問契約費用
法人は個人事業主に比べ、会計・税務処理が複雑になります。特に決算申告や法人税の計算は専門的知識が必要なため、月1〜3万円程度で顧問契約をするケースが一般的です。 -
司法書士や行政書士への設立代行費用
自分で登記することも可能ですが、書類の不備によるやり直しや時間的コストを避けるため、5〜10万円程度で専門家に依頼する方もいます。 -
名刺・ホームページ制作費
法人化に合わせてブランディングを強化する場合、これらの費用も発生します(数千円〜数十万円)。
顧問契約は本当に必要か?
法人化すると顧問契約を結ぶべきかどうかは、多くの経営者が迷うポイントです。
顧問契約を結ぶメリット
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税務署や役所への届出書類を正確に作成できる
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決算・申告業務を丸投げできる
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節税や資金繰りのアドバイスが受けられる
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税務調査への対応がスムーズになる
自分で対応できるケース
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経理・税務の知識がある
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会計ソフトを使いこなせる
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売上規模が小さく、取引が単純
ただし、法人税や消費税の申告書作成は個人事業主の確定申告よりも数倍複雑です。間違いによる追徴課税のリスクを考えると、少なくとも設立初年度は顧問契約を結ぶ方が安全です。
具体例①:株式会社設立のケース別費用シミュレーション
ケースA:自分で手続きを行い、電子定款を利用する場合
項目 | 金額 |
---|---|
定款認証料(公証人役場) | 52,000円 |
登録免許税 | 150,000円(最低額) |
定款印紙代 | 0円(電子定款のため不要) |
登記簿謄本取得費(5通) | 2,500円 |
会社印鑑作成費 | 5,000円 |
合計 | 209,500円 |
ケースB:司法書士に設立代行を依頼(紙定款)
項目 | 金額 |
---|---|
定款認証料 | 52,000円 |
登録免許税 | 150,000円 |
定款印紙代 | 40,000円 |
登記簿謄本取得費 | 2,500円 |
会社印鑑作成費 | 10,000円 |
司法書士報酬 | 50,000円 |
合計 | 304,500円 |
💡 ポイント
電子定款を利用するだけで40,000円節約可能です。また、司法書士の報酬は依頼内容によって変動するため、複数の事務所で見積もりを取るとよいでしょう。
具体例②:合同会社設立のケース別費用シミュレーション
合同会社は株式会社に比べて設立費用が安く、定款認証が不要です。
ケースC:自分で登記(電子定款)
項目 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 60,000円 |
定款印紙代 | 0円(電子定款) |
登記簿謄本取得費(5通) | 2,500円 |
会社印鑑作成費 | 5,000円 |
合計 | 67,500円 |
ケースD:司法書士に依頼
項目 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 60,000円 |
定款印紙代 | 0円 |
登記簿謄本取得費 | 2,500円 |
会社印鑑作成費 | 10,000円 |
司法書士報酬 | 50,000円 |
合計 | 122,500円 |
💡 ポイント
合同会社は役員任期や株主総会が不要なため、維持コストも低く抑えられます。スタートアップや小規模事業に向いています。
費用削減のための実践テクニック
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電子定款を活用
印紙代40,000円が不要になります。自分で作成できない場合は、行政書士に電子定款作成だけ依頼すると安価に済みます(1〜2万円程度)。 -
印鑑はネット注文で節約
店舗よりもネットショップのほうがセット価格が安いことが多く、5,000円以下で実印・銀行印・角印の3点セットが作れます。 -
登記簿謄本はまとめて取得
役所や銀行提出分を見越してまとめて取得すると、後日の再取得手間を省けます。 -
司法書士への依頼は比較検討
同じ手続きでも事務所によって報酬が1〜5万円異なることもあります。
法人設立準備から登記完了までのステップ
法人設立は、大きく分けると準備 → 定款作成 → 登記申請 → 事後手続きの4段階に分かれます。
ステップ1:事前準備
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会社形態の決定(株式会社・合同会社など)
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商号(会社名)の決定:同一住所に同一商号がないか法務局で確認
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本店所在地の決定:自宅、賃貸オフィス、バーチャルオフィスなど
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事業目的の決定:将来の事業拡大も見据えて幅広めに設定
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資本金額・出資比率の決定:1円から可能だが、銀行や取引先の信用面も考慮
ステップ2:定款作成と認証
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電子定款なら印紙代4万円が不要
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株式会社は公証人役場で定款認証(手数料52,000円+謄本代)
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合同会社は定款認証不要(ただし作成は必要)
ステップ3:登記申請
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登録免許税の納付(株式会社15万円〜、合同会社6万円〜)
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登記書類の提出(設立日=登記申請日)
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登記簿謄本や印鑑証明書を取得
ステップ4:設立後の届出・契約
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税務署・都道府県税事務所・市区町村役場へ設立届出書を提出
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社会保険・労働保険の新規適用手続き
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銀行口座開設、クレジットカード契約
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会計ソフト設定、顧問税理士契約
法人設立費用を早期回収するための目安
法人化は初期コストがかかるため、売上や利益の規模を踏まえて判断します。
目安例(株式会社の場合)
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年間利益が500万円を超えると、所得税より法人税+社保負担のほうが有利になるケースが多い
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消費税の免税期間(原則2期)を活用すれば、初期負担を軽減できる
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経費計上できる範囲が広がるため、節税メリットで設立費用を回収しやすい
顧問契約やランニングコストも考慮する
法人化すると、毎月または年単位の固定費が発生します。
主なランニングコスト例
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顧問税理士報酬:月2〜5万円程度
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社会保険料(会社負担分):役員報酬に応じて数万円〜数十万円/年
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事務所家賃:バーチャルオフィスなら月3,000円〜、リアルオフィスなら月5万円〜
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会計ソフト利用料:年2〜4万円程度
💡 注意点:設立費用だけでなく、こうしたランニングコストも総合的に判断することが重要です。
法人設立をスムーズに進めるための実践アクション
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設立日を逆算してスケジュールを組む
決算期や消費税免税期間を意識し、設立日を設定しましょう。 -
定款作成は電子化を検討
自分で行うか、行政書士に依頼して印紙代を節約します。 -
法務局・税務署・年金事務所の手続きリストを事前作成
手続き漏れを防ぐため、チェックリストを活用します。 -
会計・税務体制を早めに整備
顧問税理士や会計ソフトを導入して、開業初年度から帳簿を正確に管理します。 -
銀行口座やクレジットカードの申請は設立直後に行う
資金繰りや決済のスムーズ化のため、早めに手配しましょう。
まとめ
法人設立には20万〜30万円(株式会社)、**6万〜12万円(合同会社)**程度の初期費用がかかります。
ただし、電子定款や自力での登記などを活用すればコストを抑えることが可能です。
費用だけでなく、ランニングコストや税務メリットも含めて総合的に判断することが重要です。