フリーランスこそ保険選びが重要
会社員と違い、フリーランスには会社の社会保障や福利厚生による保険サポートがありません。
病気やケガで働けなくなれば、収入がゼロになるリスクがあります。さらに、家族を養っている場合や事業の継続がかかっている場合、その影響は深刻です。
そこで必要になるのが「フリーランス向けの保険」です。
しかし、ただ保障を手厚くすれば良いわけではありません。掛金は経費として処理できるか、事業キャッシュフローへの影響も考慮する必要があります。
本記事では、保障と経費のバランスを重視し、フリーランスにおすすめの保険を5つ厳選して解説します。
保険選びを誤ると資金繰りが悪化する
フリーランスの保険選びには、次のような問題があります。
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掛金が高すぎる → キャッシュフローを圧迫
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保障が不足している → いざというときに生活や事業が立ち行かない
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経費計上できない保険を選ぶ → 税負担が増える
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解約返戻金や貯蓄性が低い → 長期的な資金準備ができない
つまり、保険は保障内容と税務メリットの両立がカギになります。
保障+節税効果を兼ね備えた保険を選ぶ
結論から言うと、フリーランスに最適な保険は、次の条件を満たすものです。
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万一の収入減少に備えられる(医療・所得補償・生命保障)
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事業資金の準備もできる(解約返戻金付き)
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掛金の一部または全部を経費計上できる(税務メリット)
これらを満たす保険は多くありませんが、小規模企業共済や所得補償保険など、実務上メリットの大きい商品があります。
フリーランス保険選びで重視すべき3つの視点
1. 保障範囲とリスク対応力
フリーランスは、病気や事故で働けなくなったときの所得保障が最優先です。
また、長期療養や家族への保障、さらには事業継続のための資金確保まで考えると、複数の保険を組み合わせる必要があります。
2. 掛金の税務処理(経費化)
保険料が経費として計上できれば、課税所得を減らすことができ、節税効果があります。
ただし、生命保険料や医療保険料は個人契約では原則として所得控除扱いのため、経費計上はできません。
一方で、小規模企業共済や一定の所得補償保険は、事業経費として処理できる場合があります。
3. 貯蓄性・解約返戻金の有無
将来の退職金や設備投資資金を見据えて、解約返戻金がある保険を選べば、保障と資産形成を同時に行えます。
ただし、貯蓄性が高い商品ほど掛金が高くなる傾向があり、キャッシュフロー管理が重要です。
保険と経費・節税の関係を理解する重要性
フリーランスが保険を選ぶ際には、経費化の可否と節税効果を理解することが欠かせません。
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経費計上できる保険
所得補償保険(業務災害補償型)、小規模企業共済、倒産防止共済など
→ 保険料を全額経費にできる場合が多く、即時の節税効果あり -
経費計上できない保険
個人契約の生命保険や医療保険(原則として所得控除)
→ 節税効果は小さいが、保障の目的で加入する価値あり -
資産形成型保険
長期で解約返戻金を積み上げられるため、将来の事業資金や老後資金の準備に有効
このように、「保障」「節税」「資産形成」のバランスを見極めることで、無駄な掛金を減らし、実用性の高い保険プランを作ることができます。
フリーランス向けおすすめ保険5選
ここでは、保障と経費のバランスが取れた5つの保険を紹介します。
1. 小規模企業共済
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概要:独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する退職金制度
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保障内容:廃業・引退時に共済金を受け取れる
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節税効果:掛金は全額所得控除
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メリット:退職金制度として優秀、元本割れのリスクが低い
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注意点:中途解約は返戻率が低下
2. 所得補償保険
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概要:病気やケガで働けない期間の所得を補償
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保障内容:一定期間の月額所得を保険金として受け取れる
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節税効果:契約形態によっては保険料を全額経費計上可能
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メリット:短期〜長期の働けない期間に対応
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注意点:免責期間の設定により、すぐには給付されない場合がある
3. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
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概要:取引先倒産時に無担保・無保証人で資金貸付
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保障内容:掛金総額の10倍まで借入可能
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節税効果:掛金は全額経費計上可能
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メリット:資金繰り対策、将来の解約時には資金化できる
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注意点:解約時は全額益金計上(課税)される
4. 長期平準定期保険(事業保障型)
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概要:経営者や主要メンバーの死亡保障
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保障内容:死亡時に保険金を受け取れる
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節税効果:一定割合を損金算入できる(契約内容による)
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メリット:事業継続資金や債務返済資金の確保
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注意点:解約返戻金のピーク時に解約すると課税が大きくなる
5. 医療保険(フリーランス特化プラン)
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概要:入院・手術時の自己負担を補償
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保障内容:入院1日あたり定額支給、手術給付金など
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節税効果:原則所得控除扱い(経費計上不可)
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メリット:医療費負担の軽減、所得補償保険と併用可能
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注意点:短期入院が増えているため、日額保障額を適切に設定
保障と経費のバランスで選ぶ
| 保険名 | 主な目的 | 経費計上 | 節税効果 | 資産形成性 | リスク対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 退職金準備 | 所得控除 | 高 | 中 | 廃業・引退 |
| 所得補償保険 | 収入保障 | 可(契約形態次第) | 中〜高 | 低 | 病気・ケガ |
| 倒産防止共済 | 資金繰り対策 | 可 | 高 | 中 | 取引先倒産 |
| 長期平準定期保険 | 事業保障 | 一部可 | 中 | 高 | 経営者死亡 |
| 医療保険 | 医療費補填 | 所得控除 | 低 | 低 | 病気・ケガ |
フリーランスが保険を選ぶためのステップ
フリーランスが自分に最適な保険を選ぶためには、以下の流れで進めると失敗を防ぎやすくなります。
1. 自分のリスクを洗い出す
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病気やケガで働けなくなるリスク
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取引先の倒産や入金遅延のリスク
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老後資金や退職金不足のリスク
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家族の生活費や教育費確保の必要性
2. 必要な保障額を試算する
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所得補償保険 → 月収の60〜80%を目安
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医療保険 → 入院1日あたり5,000〜10,000円程度
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退職金準備 → 老後資金シミュレーションに基づく金額
3. 節税効果とキャッシュフローを確認する
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経費化できる保険を優先して選ぶ
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掛金が固定費になりすぎないように年間予算を設定
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将来の解約時の課税リスクも考慮する
4. 複数の保険を組み合わせる
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例:小規模企業共済(退職金準備)+所得補償保険(働けないリスク対策)+医療保険(医療費対策)
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単独ではなく「保障+資産形成+節税」のバランスを意識
5. 毎年見直す
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収入増減や家族構成の変化に応じて保険を調整
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共済や保険の掛金上限・制度改正もチェック
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保険料の削減や保障内容の改善が可能な場合も多い
まとめ
フリーランスにとって保険は「万一の保障」だけでなく、「経費削減」「資産形成」という役割も担います。
特に経費計上できる小規模企業共済や倒産防止共済は、節税しながら将来資金を準備できる優れた制度です。
一方で、経費化できない保険でも医療保険や生命保険は生活防衛のために不可欠な場合があります。
重要なのは、「どのリスクに備えるのか」を明確にし、保障と節税のバランスを取ったプランを作ることです。
保険は長期契約になることが多いため、契約前に必ず専門家(税理士・FPなど)に相談し、キャッシュフローと税務を踏まえた最適化を行いましょう。

