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倒産防止共済(経営セーフティ共済)の仕組みと使い方

経営者の資金リスクに備える制度

中小企業や個人事業主にとって、取引先の急な倒産や売掛金の未回収は、経営を直撃する大きなリスクです。
黒字経営であっても、取引先からの入金が途絶えれば、一気に資金繰りが悪化し、最悪の場合「黒字倒産」に陥ることもあります。

こうした資金ショックへの備えとして、中小企業基盤整備機構が運営する「倒産防止共済(正式名称:経営セーフティ共済)」があります。
掛金を積み立てながら、万一の際には無担保・無保証人で借り入れでき、しかも掛金は全額が損金または必要経費として税務上控除できるという、節税とリスクヘッジを同時に叶える制度です。

本記事では、2025年現在の最新制度内容に基づき、倒産防止共済の仕組みやメリット、注意点、効果的な活用方法まで詳しく解説します。


なぜ資金リスクは「予想以上に危険」なのか?

多くの経営者は、売上や利益の確保に注力するあまり、「取引先の倒産による資金ショック」への備えを後回しにしてしまいます。
しかし、資金繰りの危機は利益の大小に関係なく訪れます。

資金ショックの典型例

  • 売掛金回収前に取引先が倒産し、売掛金が回収不能

  • 主要取引先の経営悪化による支払い遅延

  • 連鎖倒産による急激な売上減少

中小企業庁のデータによると、取引先倒産の影響を受けた企業のうち、約25%が連鎖的に経営危機に陥っているという統計があります。
これは単なる「経営の悪化」ではなく、突発的なキャッシュフローの崩壊が原因です。

よくある誤解

  • 「取引先は長年の付き合いだから大丈夫」

  • 「黒字経営だから資金繰りは安心」

  • 「銀行融資があるから何とかなる」

実際には、銀行融資は時間がかかり、担保や保証人が必要なケースが多く、急な資金需要には間に合わないことが少なくありません。


倒産防止共済は「保険+積立+節税」が同時にできる経営の安全網

倒産防止共済は、掛金を積み立てながら万一の際にスピーディーな資金調達を可能にする、中小企業・個人事業主向けの公的制度です。

制度の基本概要

項目 内容
制度名 中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)
運営主体 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
掛金 月額5,000円〜20万円(5,000円単位)
掛金総額上限 800万円
掛金の税務処理 全額が損金(法人)または必要経費(個人事業主)に算入可能
資金貸付 無担保・無保証人で掛金総額の10倍(上限8,000万円)まで
貸付条件 取引先が倒産した場合(売掛金未回収等)
解約 12か月以上の掛金納付後に解約可能(条件により全額または一部返戻)

倒産防止共済は、民間の保険や銀行融資と異なり、掛金が全額経費になる節税効果を持ちながら、万一の資金調達が迅速かつ無担保で可能という強みがあります。
さらに、長期的に掛け続けることで積立金としての性質も持つため、「緊急資金の保険」と「将来の資金プール」を兼ね備えた制度と言えます。

倒産防止共済が経営者にとって有効な3つの理由

1. 無担保・無保証でスピーディーに資金調達できる

民間金融機関からの借入は、審査や担保設定に時間がかかることが多いですが、倒産防止共済は掛金の範囲内で即座に貸付が可能です。
万一の資金ショック時に、このスピード感は経営の命綱になります。

2. 掛金全額が経費になり節税効果が高い

倒産防止共済の掛金は、法人なら損金、個人事業主なら必要経費として全額控除できます。
例えば、年間240万円(20万円×12か月)掛ければ、その分課税所得を減らすことが可能です。

3. 掛け捨てではなく、解約時に戻ってくる

共済は保険のように掛け捨てではなく、解約時に掛金総額の一部または全額が戻ってきます(納付期間に応じて返戻率が変動)。
長期的に掛ければ掛けるほど返戻率が高くなります。


加入から活用までの流れ

加入条件

  • 中小企業者(資本金または出資金が3億円以下、従業員300人以下など業種別の基準あり)

  • 個人事業主でも加入可能

  • 対象業種に属していること

掛金設定例

月額掛金 年間掛金 10年後の総額 解約時返戻率(240か月以上掛金納付)
10,000円 12万円 120万円 100%
50,000円 60万円 600万円 100%
200,000円 240万円 800万円 100%

※返戻率は2025年現在の制度に基づく

活用ケース1:取引先の倒産による売掛金未回収

A社は主要取引先B社の倒産により、売掛金1,000万円が回収不能に。
A社は倒産防止共済に加入していたため、掛金総額800万円×10倍=8,000万円まで無担保・無保証で借入可能。
実際に必要な1,000万円をすぐに借り入れ、資金ショックを回避できた。

活用ケース2:節税と資金準備を両立

B社は利益が多く出た年に掛金を月20万円まで増額し、年間240万円の節税を実現。
同時に、将来の事業拡大資金として積立を行い、10年後に満額返戻を受けて設備投資に充当。


倒産防止共済を活用するためのステップ

ステップ1:資金リスクの洗い出し

  • 取引先の依存度(売上の〇%以上占める取引先があるか)

  • 売掛金回収までの期間

  • 代替資金源の有無

ステップ2:掛金の設定

  • 利益の多い年度は掛金を上限(20万円)に近づける

  • 利益が少ない年度は最低額(5,000円)に調整する

ステップ3:加入手続き

  • 商工会議所や取引金融機関を通じて申込

  • 必要書類(法人登記簿、決算書、確定申告書など)を提出

ステップ4:定期的な見直し

  • 年度末に掛金を増減して節税効果を最大化

  • 経営状況や資金需要に応じて運用方針を調整


注意点

  • 12か月未満で解約すると掛金は返戻されない

  • 借入は返済義務があるため、返済計画が必要

  • 加入には業種別の条件がある(金融業・保険業などは対象外)

  • 制度改正の可能性があるため、最新情報を確認すること


まとめ

倒産防止共済は、中小企業や個人事業主にとって「資金リスク対策+節税+積立」が同時に叶う優れた制度です。
特に、売掛金依存度が高い業種や主要取引先が限られている事業者にとっては、経営の安定を支える強力な安全網となります。
2025年の制度内容を踏まえ、早めの加入と計画的な掛金設定で、経営の安心を確保しましょう。

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