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小規模企業共済は途中解約できる?解約手当金の計算と注意点

節税メリットの裏にある「解約時の落とし穴」

小規模企業共済は節税と将来資金準備の両立が可能な制度ですが、途中解約には大きな制約があります。

  • 加入12か月未満の解約は、掛金の全額が戻らない

  • 加入20年未満での自己都合解約は高確率で元本割れ

  • 解約手当金の課税区分によっては、税金負担が発生

特に「節税目的だけで短期加入」した場合や、制度を十分理解せずに契約した場合は、「戻ってくる金額が少ない」「思った以上に税金がかかる」という事態に直面します。


途中解約は可能だが、条件次第で大きな差が出る

小規模企業共済は途中解約できますが、解約理由や加入期間によって、戻ってくる金額や課税方法が大きく異なります。
特に加入20年未満の自己都合解約は元本割れするケースが多く、短期利用には不向きです。
そのため、

  • 短期加入目的では利用しない

  • 解約は有利な条件(事業廃止・65歳到達など)を待つ

  • 緊急時は「契約者貸付制度」を検討する

といった判断が重要です。


制度の仕組みと解約条件を理解すれば損失を避けられる

小規模企業共済の基本概要

  • 対象者:個人事業主、会社役員、一定の共同経営者など

  • 掛金:月額1,000円~70,000円(500円単位)、全額所得控除

  • 目的:廃業や退職時に退職金として受け取る

  • 運営:中小企業基盤整備機構(国の制度)

解約理由ごとの区分と特徴

解約理由 区分 元本割れの可能性 主な課税区分
事業廃止・会社解散 有利解約 低い 退職所得
65歳以上の任意解約(20年以上加入) 有利解約 低い 退職所得
役員退任(20年以上加入) 有利解約 低い 退職所得
自己都合(上記以外) 自己都合解約 高い(特に20年未満) 一時所得

解約手当金の計算イメージ

例えば、毎月3万円を10年間積み立てた場合の掛金総額は 3,600,000円。
自己都合解約時は掛金総額の約8割(約2,880,000円)しか戻らず、元本割れします。
この手当金率は加入期間や掛金額によって異なり、「解約手当金表」に基づき算出されます。

ケース別シミュレーションで見る解約の影響

ケース1:加入10年で自己都合解約

  • 加入条件:掛金3万円/月 × 10年間

  • 掛金総額:3,600,000円

  • 解約手当金率(自己都合10年の場合):約80%

  • 戻り額:約2,880,000円

  • 損失額:約720,000円(元本割れ)

  • 課税区分:一時所得(50万円の特別控除あり)

  • 実質税負担:課税所得が高い場合、さらに税金がかかる

→ 節税効果を得ながら10年で解約しても、元本割れと課税がダブルで発生する可能性が高い。


ケース2:加入25年で65歳時に任意解約

  • 加入条件:掛金3万円/月 × 25年間

  • 掛金総額:9,000,000円

  • 解約手当金率(有利解約25年):約120%

  • 戻り額:約10,800,000円(運用益込み)

  • 課税区分:退職所得(控除額大きく、税負担は軽い)

→ 長期加入+有利解約条件を満たすことで、運用益を含めて大きくプラスになる。


ケース3:資金が急に必要になった場合の代替案(契約者貸付制度)

  • 貸付限度額:解約手当金額の95%まで

  • 金利:年1.5%前後(変動)

  • 返済期限:5年以内(返済後の掛金積立は継続可能)

→ 解約せずに資金を確保でき、元本割れや課税を回避可能。緊急資金対策として有効。


解約前に確認すべきチェックリスト

  • 加入期間は何年か(20年未満は要注意)

  • 解約理由は有利解約条件に当てはまるか

  • 他の資金調達手段(契約者貸付、融資)は検討したか

  • 解約手当金額と税負担を試算したか


賢く制度を活用するためのステップ

  1. 解約前に「解約手当金試算」を依頼
    中小機構に試算依頼を行い、戻り額と手当金率を確認します。

  2. 税理士に相談して課税シミュレーション
    一時所得か退職所得かで税負担が大きく異なるため、事前にシミュレーションを行います。

  3. 資金確保は契約者貸付制度を優先検討
    急ぎの資金需要は貸付制度を活用し、積立は継続することで将来の有利解約を目指します。

  4. 廃業・退職のタイミングに合わせて解約
    条件を満たすことで退職所得扱いとなり、節税効果を最大化できます。

  5. 長期的なライフプランと合わせて設計
    小規模企業共済は老後資金準備の柱の一つ。iDeCoや企業型DCなど他制度とのバランスも検討します。


まとめ

小規模企業共済は途中解約が可能ですが、条件次第で戻り額や課税負担に大きな差が生じます。特に短期解約や自己都合解約は元本割れのリスクが高く、安易な解約は避けるべきです。
急な資金需要がある場合は、契約者貸付制度や他の資金調達方法を優先し、有利な解約条件を満たすタイミングまで積み立てを継続することが、損失を避けながら制度のメリットを最大限活かすポイントです。

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