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倒産防止共済で借入が可能?貸付制度の仕組みとリスク

資金繰りの緊急事態に備えるための制度

事業を続けていく上で、取引先の倒産や急な売上減少など、予期せぬ資金ショックは避けられません。こうしたリスクに備えるため、中小企業や個人事業主に広く利用されている制度の一つが「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」です。
この制度は、掛金を積み立てることで、万一取引先が倒産した場合に無担保・無保証で資金を借り入れられる仕組みを持っています。しかし、実は「取引先倒産時」だけでなく「掛金を担保にした借入」も可能であることをご存じでしょうか?
この記事では、倒産防止共済の貸付制度の仕組みと利用方法、そしてメリット・リスクまでをわかりやすく解説します。


借入ができることを知らず、機会を逃している事業者が多い

倒産防止共済は「倒産時の備え」というイメージが強く、日常的な資金繰りや事業拡大のための資金調達に活用できることを知らない事業者が少なくありません。
さらに、借入可能と知っていても、制度の詳細や条件を理解していないために、以下のような失敗をしてしまうケースもあります。

  • 借入条件を満たしておらず、申し込みが通らなかった

  • 借入はできたが返済計画が甘く、資金繰りが悪化した

  • 税務上の影響や将来の共済解約時の資金減少を見落とした

こうしたトラブルを避けるためには、貸付制度の正しい仕組みと利用上の注意点を知っておく必要があります。


倒産防止共済は「借入機能」を持つが、計画的利用が必須

倒産防止共済には2つの貸付制度があります。

  1. 共済金貸付制度(本来型)
    取引先が倒産した際に、掛金の10倍(上限8,000万円)まで無担保・無保証で借りられる制度。
    返済期間は原則5年以内、据置期間6か月。

  2. 一時貸付制度(掛金担保型)
    取引先倒産とは関係なく、積み立てた掛金の95%までを担保に借りられる制度。
    返済期間は原則1年以内で、延長は要相談。

つまり、「万一のため」だけでなく「短期資金調達」の手段としても使えるのです。
ただし、あくまで掛金を担保にした貸付であるため、利用額や返済に応じて解約時の受取額が減る可能性があります。安易に使うのではなく、必要性と返済計画を明確にしてから利用することが重要です。


倒産防止共済が借入に使える背景

1. 制度の目的

倒産防止共済は、中小企業倒産防止共済法に基づく制度で、中小企業の連鎖倒産を防ぐことを目的としています。掛金は損金(法人)または必要経費(個人事業)に全額算入でき、節税効果も高いのが特徴です。

2. 共済金貸付制度の仕組み

  • 取引先が倒産した際、掛金の積立額に応じて「掛金の10倍(上限8,000万円)」まで借入可能

  • 無担保・無保証・低金利

  • 据置期間があるため、倒産直後の資金繰りに余裕ができる

3. 一時貸付制度の仕組み

  • 掛金の95%までを短期間借入可能

  • 利用用途は自由(運転資金、仕入れ、設備投資など)

  • 比較的短期間で返済するため、緊急時や一時的な資金不足に有効

4. なぜ借入が可能なのか

倒産防止共済は、加入者の掛金を基金として管理しており、その積立額を担保にすることで共済事務局(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が貸付を行える仕組みです。
これにより、一般の金融機関よりもスピーディーかつ低リスクで資金を調達できます。

倒産防止共済貸付の活用シーンと注意点

ケース1:主要取引先が突然倒産

ある製造業のA社は、売上の40%を占める主要取引先が突如倒産し、売掛金3,000万円が回収不能になりました。
A社は倒産防止共済に加入しており、掛金積立額が400万円あったため、掛金の10倍である4,000万円まで借入可能でした。
結果として、直近の仕入・給与・家賃の支払いを無事に乗り越えることができ、連鎖倒産を回避できました。

ポイント

  • 倒産の事実証明(破産手続き開始決定通知など)が必要

  • 借入額は掛金総額や取引額の範囲内で決まる

  • 据置期間を有効活用して資金計画を立てる


ケース2:繁忙期の短期資金不足

B社は年末商戦に向けて仕入を増やす必要がありましたが、資金繰りが一時的に苦しくなっていました。
掛金積立額が200万円あったため、一時貸付制度を利用して掛金の95%である190万円を短期借入しました。
1年以内に売上入金で返済を完了し、事業拡大の機会を逃さずに済みました。

ポイント

  • 一時貸付は取引先の倒産に関係なく利用可能

  • 金利は低めだが、返済期間は短い

  • 利用額は解約時の受取額に影響する


ケース3:安易な借入による資金圧迫

C社は掛金を担保に一時貸付を頻繁に利用していましたが、返済計画を十分に立てず、複数回借入を繰り返した結果、掛金積立額がほとんど残らず、将来の解約返戻金が大幅に減少しました。
この事例は、短期資金としての利用は便利だが、繰り返すと制度本来のメリットを損なうことを示しています。


倒産防止共済貸付を利用するための手順と注意点

1. 加入条件の確認

  • 中小企業基本法に定める中小企業であること

  • 個人事業主も加入可能(業種・規模による制限あり)

  • 掛金月額は5,000円~20万円の範囲で選択


2. 貸付申請の流れ

  1. 共済事務所または取扱金融機関に相談
    (商工会議所や商工会、取引金融機関経由が多い)

  2. 必要書類の提出

    • 倒産の場合:取引先の倒産証明書類

    • 一時貸付の場合:身分証明、掛金残高確認書など

  3. 審査・承認

  4. 資金振込


3. 利用時の注意点

  • 一時貸付の返済は1年以内が原則

  • 返済延滞は信用情報に影響する可能性あり

  • 繰上返済可能だが、金利計算は日割りで行われる

  • 解約時の返戻金は、借入残高を差し引いて支給される


4. 節税との併用戦略

倒産防止共済の掛金は全額損金算入(法人)または必要経費算入(個人)できるため、節税と資金備蓄を両立できます。
さらに、必要に応じて借入機能を利用することで、「節税 → 資金積立 → 必要時借入」という三段活用が可能です。


まとめ

倒産防止共済は、取引先倒産時の資金確保だけでなく、掛金を担保とした短期借入にも利用できる便利な制度です。
ただし、利用には返済計画と制度理解が不可欠です。緊急時や一時的な資金不足の際に強い味方となりますが、安易な利用は将来の資金計画を崩す可能性があります。
加入・利用を検討する際は、資金繰り全体を俯瞰して計画的に活用しましょう。

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