フリーランスにこそ必要な資産形成
フリーランスとして働く人にとって、収入は自分次第。しかし同時に、将来の生活や老後資金の準備もすべて自分で考えなければなりません。
会社員と違い、退職金制度や企業型年金がないため、自助努力による資産形成は避けて通れない課題です。
そんな中、**非課税で投資ができる制度「NISA(少額投資非課税制度)」**が注目されています。効率よく資産を増やせる仕組みとして、多くのフリーランスにとって魅力的な選択肢となります。
制度変更で戸惑うフリーランスも多い
「NISAは聞いたことがあるけれど、自分に必要なのか分からない」「投資は怖いし、元本割れが心配」という声は少なくありません。
さらに2024年から制度が大きく変わり、新NISAとして生まれ変わったことで、内容を正しく理解している人は意外と少ないのが現状です。
特にフリーランスは、
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収入が安定しない
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税金や社会保険料の負担が重い
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将来の年金額が少ない可能性が高い
といった特徴を持つため、NISA活用の有無が資産形成に大きく影響します。
フリーランスはNISAを活用すべき
結論から言えば、フリーランスはNISAを積極的に使うべきです。理由は大きく3つあります。
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税金ゼロで運用益を増やせる(節税効果)
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少額から始められ、積立投資が収入の波に対応しやすい
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将来の生活資金や事業資金の準備に直結する
ただし、メリットばかりに注目してはいけません。NISAには流動性の制約や投資リスクもあるため、間違った使い方をすると損をする可能性もあります。
理由1:税金ゼロで運用益を最大化できる
NISAの最大の魅力は、投資で得た利益が非課税になることです。
通常、株式や投資信託の売却益・配当金には**20.315%(所得税+住民税+復興特別所得税)**がかかりますが、NISA口座ならこれらの税金がかかりません。
シミュレーション例(100万円を年5%で10年間運用した場合)
項目 |
課税口座 |
NISA口座 |
運用益 |
約62.9万円 |
約62.9万円 |
税金 |
約12.8万円 |
0円 |
手取り利益 |
約50.1万円 |
約62.9万円 |
差額は約12.8万円。長期投資になればこの差はさらに大きくなります。
理由2:収入変動に合わせやすい積立投資
フリーランスは毎月の収入が安定しにくい特徴があります。
新NISAでは、
という2つの枠があり、少額から始めやすく、収入の増減に応じて投資額を調整できます。
例えば、収入が多い月は成長投資枠で追加投資し、収入が少ない月は積立額を減らすなど柔軟に対応できるのは大きな利点です。
理由3:老後資金・事業資金の両方を準備できる
NISAで増やした資産は、老後資金だけでなく、事業資金や突発的な支出にも活用可能です。
特に事業と生活資金の境界があいまいなフリーランスでは、生活防衛資金+投資資産という二段構えが重要です。
推奨:生活費6か月分は現金で確保し、それ以上の資金をNISAで運用することで安全性と資産形成を両立できます。
注意点1:元本保証がないためリスク管理が必要
NISAはあくまで「投資」であり、預金のように元本が保証されるわけではありません。
株式や投資信託は、市場の変動によって一時的に資産が減る可能性があります。
特にフリーランスは収入が安定しないため、生活費まで投資に回してしまうのは危険です。
暴落時に現金が必要になり、値下がりした資産を泣く泣く売却する「狼狽売り」のリスクがあります。
注意点2:投資枠の再利用はできない
新NISAは**非課税保有限度額1,800万円(うち成長投資枠1,200万円まで)**という上限がありますが、売却してもその分の枠は復活しません。
つまり、「使った枠は戻らない」という点に注意が必要です。
例えば、
このため、長期保有を前提とした銘柄選びが重要です。
注意点3:商品選びを間違えると非課税メリットが減る
新NISAのつみたて投資枠では、金融庁が指定した長期・積立・分散投資に適した投資信託しか選べません。
成長投資枠では株式やETFも選べますが、短期売買を繰り返すと非課税の恩恵を最大限受けられません。
ポイント:
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つみたて枠はインデックスファンドを基本に
-
成長枠は中長期の成長が期待できる銘柄に絞る
注意点4:iDeCoとの違いを理解する
フリーランスの資産形成ではNISAとiDeCoの併用も検討されますが、2つの制度には大きな違いがあります。
項目 |
NISA |
iDeCo |
税制優遇 |
運用益が非課税 |
掛金が全額所得控除+運用益非課税 |
資金の引き出し |
いつでも可能 |
原則60歳まで不可 |
投資対象 |
株式・投資信託・ETFなど |
指定の投資信託・定期預金など |
向いている人 |
流動性を確保したい人 |
老後資金を確実に準備したい人 |
フリーランスの場合、生活資金や事業資金の確保が優先されるため、NISAを先に利用するケースが多いですが、節税効果を最大化するならiDeCoも検討する価値があります。
実例1:年収500万円フリーランスのNISA活用例
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年間投資額:60万円(つみたて枠)
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投資対象:全世界株式インデックスファンド
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想定利回り:年5%
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投資期間:20年
運用シミュレーション
項目 |
課税口座 |
NISA口座 |
投資元本 |
1,200万円 |
1,200万円 |
最終資産額 |
約1,984万円 |
約1,984万円 |
税金 |
約160万円 |
0円 |
手取り額 |
約1,824万円 |
約1,984万円 |
差額:約160万円の節税効果。
実例2:収入変動型フリーランスの使い方
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多い月:成長投資枠で追加投資(例:10万円)
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少ない月:つみたて額を最低限(例:1万円)に調整
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長期的には年間上限に近づける運用を目指す
こうすることで、無理なく継続しつつ非課税枠を活用できます。
行動:フリーランスがNISAを始めるためのステップ
ステップ1:生活資金を確保する
投資は余裕資金で行うことが鉄則です。
まずは6か月〜1年分の生活費+事業運転資金を現金で確保してから投資に回しましょう。
ステップ2:証券会社を選ぶ
NISAは銀行でも申し込めますが、ネット証券が手数料や商品ラインナップで有利です。
代表的な選択肢:
選び方のポイント
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投資信託の取扱数
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ポイント還元制度の有無
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取引ツールの使いやすさ
ステップ3:投資方針を決める
ステップ4:自動積立を設定する
つみたて投資枠は毎月自動引き落としで設定し、ほったらかし運用が基本です。
手動で売買するよりも心理的負担が少なく、長期投資を継続できます。
ステップ5:年1回は運用を見直す
NISA活用のまとめ
フリーランスにとってNISAは、
ただし、
推奨の行動プラン
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生活資金+事業運転資金を確保
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ネット証券で口座開設
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つみたて投資枠を中心に毎月自動積立
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収入に応じて成長投資枠を活用
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年1回の運用見直しを習慣化