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iDeCoとNISAは併用できる?違いと使い分けを税理士が解説

老後資金・資産形成の2本柱として注目される制度

老後資金や将来の生活資金を効率よく準備するための制度として、日本では iDeCo(個人型確定拠出年金) と NISA(少額投資非課税制度) が広く利用されています。
どちらも税制優遇を受けながら資産運用できる強力な制度ですが、「どちらを優先すべき?」「併用できるの?」と迷う人も多いでしょう。

実はこの2つの制度は併用可能で、組み合わせることで税制メリットを最大化できます。ただし、仕組みや目的が異なるため、やみくもに両方を始めると、資金拘束や非効率な投資配分につながることもあります。

本記事では、税理士の視点から iDeCoとNISAの違い・併用の可否・最適な使い分け をわかりやすく解説し、読者が自分に合った資産形成戦略を立てられるようにサポートします。


制度の違いを理解せずに始めるリスク

iDeCoとNISAはどちらも「税金が安くなる」という点では共通していますが、制度の性質は大きく異なります。

  • iDeCo → 老後資金専用(60歳まで引き出せない)

  • NISA → いつでも売却・引き出し可能(使途は自由)

この違いを理解せずに、例えば短期的に使う予定の資金をiDeCoに回してしまうと、必要なときに引き出せない資金拘束リスクが発生します。
逆に、老後資金をNISAだけで準備すると、節税効果を最大限活用できず、将来の受取額に差が出る可能性もあります。

つまり、

制度の特徴を理解し、自分のライフプランに合わせて使い分けることが重要
です。


iDeCoとNISAは併用可能。目的別に役割を分けよう

結論から言えば、iDeCoとNISAは併用可能であり、両方を組み合わせることで以下のようなメリットが得られます。

  • 節税効果の最大化
    iDeCoは掛金全額が所得控除、NISAは運用益非課税。税制メリットを二重に享受できます。

  • 資金の使途別管理
    iDeCoは老後資金、NISAは中長期の自由資金として役割分担できます。

  • リスク分散
    運用商品の分散だけでなく、「使える時期」による資金分散が可能になります。

しかし、効果的に活用するには「どちらを優先すべきか」「掛金・投資額のバランスをどうするか」という戦略が必要です。


理由①:iDeCoの特徴とメリット・デメリット

iDeCoの概要

  • 正式名称:個人型確定拠出年金

  • 対象者:20歳以上60歳未満の自営業者、会社員、公務員など

  • 掛金上限:

    • 自営業者:月額68,000円

    • 会社員(企業年金なし):月額23,000円

    • 公務員:月額12,000円 など

  • 引き出し:原則60歳まで不可

メリット

  1. 掛金全額が所得控除(住民税・所得税が軽減される)

  2. 運用益も非課税

  3. 受け取り時も控除あり(退職所得控除・公的年金等控除)

デメリット

  1. 60歳まで資金拘束(流動性が低い)

  2. 運用商品は限られる(投資信託・定期預金など)

  3. 手数料がかかる(口座管理・運営管理費)

ポイント:iDeCoは「老後資金専用」の長期運用向け制度であり、節税額のインパクトが大きい一方、流動性の低さが最大の注意点です。


理由②:NISAの特徴とメリット・デメリット

NISAの概要

  • 対象者:日本在住の18歳以上

  • 年間投資枠:

    • つみたて投資枠:年間120万円

    • 成長投資枠:年間240万円

  • 引き出し:いつでも可能

  • 運用期間:恒久化(2024年から制度改正済み)

メリット

  1. 運用益が非課税

  2. 流動性が高い(必要な時に引き出せる)

  3. 投資対象が広い(株式、ETF、投資信託など)

デメリット

  1. 掛金は所得控除にならない

  2. 短期売買での運用には不向き(中長期運用前提)

  3. 投資額の上限がある

ポイント:NISAは「いつでも引き出せる中長期の投資枠」として、教育費・住宅資金・老後資金の一部など幅広い目的に使える柔軟性が魅力です。

理由③:iDeCoとNISAの違いを比較

両制度の違いを整理すると、次の表のようになります。

項目 iDeCo NISA
主な目的 老後資金の形成 幅広い資産形成
税制優遇 掛金全額が所得控除、運用益非課税、受取時控除あり 運用益非課税(掛金控除なし)
資金拘束 60歳まで引き出し不可 いつでも引き出し可能
投資対象 投資信託、定期預金、保険など限定 株式、投資信託、ETF、REITなど幅広い
年間上限額 職業により12,000〜816,000円 つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円
向いている人 老後資金を着実に貯めたい人 教育費・住宅資金・老後資金など柔軟に運用したい人

具体例①:優先順位の決め方

iDeCoとNISAのどちらを先に始めるかは、目的・流動性・税効果を考慮します。

ステップ1:資金の使途と時期を確認

  • 5年以内に使う予定 → NISAを優先

  • 10年以上使わない → iDeCoを優先

ステップ2:税負担の軽減度を計算

  • 所得税率が高い人(課税所得695万円超)はiDeCoの節税効果が大きい

  • 所得税率が低い人はNISAから始めても効果的

ステップ3:掛金・投資額の配分

  • 老後資金:iDeCo 6割

  • 中長期自由資金:NISA 4割
    (例:月5万円投資 → iDeCo3万円、NISA2万円)


具体例②:職業別おすすめ活用パターン

1. 自営業者(個人事業主)

  • iDeCo掛金上限が高い(年81.6万円)

  • 所得控除効果が大きいため、まずiDeCo満額を目指す

  • 余剰資金はNISAで運用(事業用資金は別管理)

例:
年間81.6万円をiDeCoに拠出 → 所得税率20%なら年間約16万円の節税
プラスでNISAに年間40万円投資


2. 会社員(企業年金なし)

  • iDeCo掛金上限は月2.3万円とやや少なめ

  • まずNISAで資産運用を開始し、余裕があればiDeCoも追加

  • 将来の転職・独立時にも制度を継続可能

例:
NISAで月3万円 → つみたて投資枠で長期運用
iDeCoで月1万円 → 老後資金の安定枠


3. 公務員

  • iDeCo掛金上限は月1.2万円と少ないが、安定収入で長期投資に向く

  • iDeCoは節税目的で上限まで、NISAは中長期資産形成に全力

例:
iDeCo月1.2万円 → 節税+老後資金
NISA月5万円 → 住宅資金や教育資金にも使える運用枠

併用時の注意点

iDeCoとNISAを同時に活用する場合、以下の3つのポイントに注意が必要です。

1. 資金拘束による流動性リスク

  • iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、短期的な資金需要がある場合は注意

  • 教育資金や住宅資金など10年以内に必要な資金はNISAで運用する方が安全

2. 掛金・投資額のバランス

  • 投資額が大きすぎると日々の生活資金や事業資金を圧迫

  • 推奨は「余剰資金の範囲」で、生活防衛資金(生活費6か月分程度)を確保してから着手

3. 税制・控除の最大化

  • iDeCoは掛金全額が所得控除されるため、高所得者ほど節税効果が大きい

  • NISAは非課税投資枠を使い切らないと機会損失になるため、余剰資金は積極的に回す

  • 年末調整や確定申告の際に、iDeCoの控除証明書を提出し忘れないこと


ライフプラン別モデルシミュレーション

ケース1:30代自営業・独身

  • 年収:600万円

  • 毎月の投資可能額:5万円

  • 老後まで30年

  • 税率:20%(所得税+住民税)

配分例

  • iDeCo:月3万円(年36万円)

    • 節税効果:約7.2万円/年

  • NISA:月2万円(年24万円)

30年後の資産目安(年利4%想定)

  • iDeCo:約2,050万円(+節税総額216万円)

  • NISA:約1,400万円
    合計:約3,450万円+節税額


ケース2:40代会社員・子あり(大学進学予定)

  • 年収:800万円

  • 投資可能額:6万円

  • 教育費のピーク:10年後

配分例

  • NISA:月4万円 → 大学進学時の教育費に充当

  • iDeCo:月2万円 → 老後資金

結果目安

  • NISA(10年後・年利3%想定):約540万円

  • iDeCo(20年後・年利3%想定):約610万円(+節税効果約96万円)


ケース3:50代公務員・住宅ローンあり

  • 年収:750万円

  • 投資可能額:3万円

  • 老後まで10年

配分例

  • iDeCo:月1.2万円(上限)

  • NISA:月1.8万円

結果目安

  • iDeCo(10年後・年利2%想定):約155万円(+節税効果約24万円)

  • NISA(10年後・年利2%想定):約245万円


シミュレーションのポイント

  1. 年利は保守的に設定(2〜4%)

  2. インフレを考慮して実質利回りを見積もる

  3. 節税額も総合的なリターンとして評価する

すぐに始められる行動ステップ

iDeCoとNISAの併用は制度理解が重要ですが、準備をすれば意外とスムーズに始められます。

ステップ1:生活防衛資金の確保

  • 生活費6か月分程度を普通預金など安全資産で確保

  • これがないと投資資金を取り崩す事態に陥るリスクが高まる

ステップ2:ライフプランシミュレーション

  • 教育資金・住宅資金・老後資金の必要額を試算

  • 無料のFP相談やオンラインツールを活用するのも有効

ステップ3:証券会社・金融機関の選定

  • NISAはネット証券(SBI証券・楽天証券など)が低コスト・商品数豊富

  • iDeCoは金融機関ごとに手数料や商品ラインナップが異なるため比較必須

ステップ4:口座開設

  • NISA口座は証券会社で申込み

  • iDeCoは加入資格を確認し、必要書類を提出(勤務先の承認が必要な場合も)

ステップ5:商品選びと積立設定

  • 長期投資は株式インデックスファンドが基本

  • 値動きに慣れるまでは株式と債券の比率を調整


よくある質問(FAQ)

Q1. iDeCoは途中でやめられる?

  • 掛金の停止は可能だが、原則60歳までは資産を引き出せない

Q2. NISAは元本保証?

  • 元本保証ではない。株価変動や為替リスクがある

Q3. どちらを先に始めるべき?

  • 短期〜中期の資金需要がある場合はNISAを優先

  • 老後資金の確保が第一ならiDeCoから

Q4. 両方始めると確定申告が複雑になる?

  • NISAは申告不要

  • iDeCoは年末調整や確定申告で控除を申請するだけ


まとめ

iDeCoとNISAはどちらも強力な資産形成ツールですが、性質は大きく異なります。

  • iDeCo:老後資金専用・節税効果大・流動性低い

  • NISA:使途自由・非課税効果大・流動性高い

併用のカギは、ライフプランに沿った資金配分の最適化です。
短期・中期・長期の資金をバランスよく振り分け、節税と非課税メリットを最大化しましょう。

将来の不安は「今の一歩」で大きく軽減できます。
まずは少額からでも始めて、複利の力と税制優遇の恩恵を享受してください。

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