赤字でも生き残る会社がある理由
多くの経営者は「赤字=危険」と考えます。
しかし実際には、決算が赤字でも長年事業を継続している会社は少なくありません。
逆に、黒字決算なのに資金ショートで倒産する会社もあります。
この違いを生む最大の要因は資金管理力です。
黒字倒産は、利益と資金の動きが一致していないために起こります。
つまり、「利益は出ていなくても現金を確保している会社」は倒産を回避できるのです。
この記事では、赤字でも倒産しない会社の共通点と、実務で使える資金管理の具体的な方法を解説します。
赤字倒産を防ぐには「利益」よりも「資金残高」
多くの経営者が陥る誤解があります。
それは「利益が出ていれば安全」「赤字になったら危険」という単純な考え方です。
しかし、利益はあくまで会計上の数字であり、現金の残高とは別物です。
黒字でも倒産するケース
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売掛金回収が遅れて資金が枯渇
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設備投資や仕入代金の支払いが先行
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税金や社会保険料の納付が重なった
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借入金の返済が資金繰りを圧迫
こうした場合、帳簿上は利益があっても資金ショートにより倒産します。
赤字でも倒産しないケース
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過去の利益で蓄えた内部留保がある
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キャッシュフローを常に把握している
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売掛金よりも現金売上が多い業種
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固定費を徹底的に抑えている
ここから言えるのは、赤字=即倒産ではなく、資金残高とキャッシュフローが生き残りの鍵だということです。
赤字でも倒産しない会社の3つの資金管理戦略
赤字経営をしていても倒産しない会社には、共通する3つの資金管理戦略があります。
1. キャッシュフロー経営の徹底
赤字でも現金残高が十分にあれば倒産は防げます。
そのためには、毎月のキャッシュフロー計算書や資金繰り表を用いて、
「いつ・いくらの現金が入るか、出ていくか」を正確に把握します。
2. 固定費の圧縮と変動費化
利益が出ていない時期でも生き延びるためには、毎月必ずかかる固定費を極限まで減らすことが重要です。
外注化やシェアオフィス活用、クラウドツールの導入により、固定費を変動費に置き換える戦略が有効です。
3. 複数の資金調達ルートの確保
金融機関との関係を普段から構築しておき、緊急時に借入ができる状態を維持します。
特に信用保証協会付き融資や当座貸越契約など、必要時に即座に資金を確保できる仕組みは有効です。
資金管理を軽視すると赤字より危険
赤字自体は必ずしも危険ではありませんが、資金ショートは即倒産につながります。
資金繰りの予測を立てずに運営すると、黒字でも倒産するリスクが高まります。
赤字でも倒産しないのは「現金流入の確保」と「支出コントロール」ができているから
赤字経営であっても倒産しない会社には、会計的・経営的に明確な理由があります。
それは、利益計算と資金繰りの違いを理解し、現金の流れをコントロールできているからです。
1. 利益とキャッシュフローは別物
会計上の「赤字」は、損益計算書上で費用が収益を上回っている状態を示します。
しかし、キャッシュフローは現金の出入りを示すものであり、必ずしも赤字=現金不足ではありません。
例として、減価償却費は会計上の費用に計上されますが、実際の現金流出は発生しません。
このため、減価償却費が大きい企業では赤字でも現金残高が十分にあるケースが存在します。
2. 入金タイミングと支払タイミングの管理
赤字でも資金が尽きない会社は、入金サイクルを短く、支払サイクルを長く設定しています。
例えば以下のような工夫です。
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請求書を月末締め翌月10日払いから月末締め翌月末払いへ変更
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顧客への請求を納品時即日に発行して入金を早める
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カード決済やオンライン決済を導入して入金スピードを向上させる
これにより、現金が減るスピードを遅らせ、倒産リスクを低減できます。
3. 固定費削減と変動費化
固定費(家賃・人件費・リース料など)は、売上が減っても毎月必ず発生するため、赤字期には負担が大きくなります。
赤字でも生き残る会社は、固定費を極力減らし、売上に応じて支出が変動する仕組みを採用しています。
例:
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社員をフルタイム採用ではなく、業務委託やパートで契約
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オフィスを借りずに在宅勤務・シェアオフィスを活用
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ITインフラを買い取りではなくクラウドサービスで利用
4. 継続的な資金調達の準備
金融機関からの借入は、赤字期に入ってからでは難しい場合があります。
赤字でも倒産しない企業は、黒字のうちから信用力を高め、予備的な融資枠を確保しています。
代表例:
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当座貸越契約を結び、必要時に即時借入可能にする
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日本政策金融公庫の融資制度を活用
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信用保証協会付き融資を事前に申し込み
赤字でも倒産を免れた企業の事例と資金管理の実践
事例1:製造業A社 – 減価償却を活用して資金を確保
A社は新工場建設に伴い、大きな減価償却費を計上し2期連続で赤字決算となりました。
しかし、減価償却は現金流出を伴わないため、資金繰りは黒字状態を維持。さらに、利益圧縮により法人税の支払いも抑えられ、運転資金を手元に残せました。
ポイント:会計上の赤字=資金不足ではない。資金繰り表で現金残高を常に把握。
事例2:小売業B社 – 入金サイクル短縮で乗り切り
B社は売上減少期に突入し、会計上は赤字に転落。
しかし、クレジットカード決済を導入して入金日を短縮、さらに仕入先への支払いを30日から60日に延長しました。
これにより一時的なキャッシュ不足を回避し、赤字でも半年以上運営を継続できました。
ポイント:入金を早め、支払いを遅らせる「資金サイクル管理」で現金残高を守る。
事例3:ITサービスC社 – 固定費の変動費化で耐え抜く
C社は受注減で売上が大きく落ち込み赤字に。
しかし、オフィスを解約しフルリモート勤務に移行、サーバーもオンプレミスからクラウドサービスに切り替えました。
これにより、固定費が大幅に減少し、売上回復までの資金流出を最小限に抑えることができました。
ポイント:固定費は資金繰りの敵。変動費化で赤字期間を耐える体力を確保。
事例4:サービス業D社 – 黒字期に融資枠を確保
D社は経営が順調な黒字期に、銀行との関係構築と当座貸越契約を締結。
コロナ禍で急激に売上が落ち込み赤字になった際、すぐに融資枠を活用して資金を確保。倒産を免れました。
ポイント:資金調達は平時に準備。赤字になってからでは間に合わない。
赤字でも倒産しないために今からできる資金管理ステップ
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毎月の資金繰り表を作成・更新する
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少なくとも6か月先までの入出金を予測
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売上減少や予期せぬ支出があった場合のシミュレーションを実施
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会計ソフトやエクセルで自動化して、月次決算と連動させる
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入金サイクルの短縮を徹底する
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クレジットカード決済・電子マネーの導入
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前金・着手金制度の検討
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売掛金回収ルールの明文化
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支払い条件を見直す
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仕入先や業者と支払い期日を交渉
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分割払いやリース契約の利用で初期資金流出を抑制
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税金や社会保険料も納付猶予制度を活用
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固定費の削減・変動費化
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家賃や人件費など固定費の比率を下げる
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外注化やサブスクリプションの利用で柔軟な支出構造にする
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使っていないサービスや契約を洗い出し解約
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平時から融資枠を確保しておく
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銀行との定期的な面談で信頼関係を築く
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当座貸越契約や信用保証協会付き融資を確保
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信用情報を常に良好に保つために税金・社会保険料は延滞しない
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利益計画と資金計画を別々に立てる
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損益計算書上の利益だけでなく、現金収支を基準に計画
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利益が出ても資金が不足する「黒字倒産」のリスクを常に意識する
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赤字期間を耐えられる現金残高目安(最低3か月分の固定費)を設定
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まとめ
赤字だからといって即倒産につながるわけではありません。
しかし、資金繰り管理を怠れば、利益よりも先に現金が尽き、事業継続が困難になります。
平時から資金繰り表の作成・入出金サイクルの見直し・融資枠確保を行い、赤字でも倒産しない企業体質を作りましょう。