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事業用クレジットカードの使い方と経営への影響【資金繰り視点】

経営者が押さえるべき資金繰り改善ツール

事業を運営していると、仕入れや広告費、交通費、備品購入など、日々の支出が発生します。これらの支払いを現金や振込だけで行っていると、手元資金が一時的に減少し、資金繰りが厳しくなることがあります。そこで活用したいのが「事業用クレジットカード」です。
事業用カードを上手に使えば、支払期限を延ばして資金繰りを改善できるだけでなく、経理作業の効率化やポイント還元によるコスト削減も可能になります。しかし、誤った使い方をすると資金管理が乱れ、経営リスクを高めてしまう恐れもあります。


便利さと引き換えの経営リスク

「クレジットカードは便利だが、使いすぎると怖い」というイメージは、多くの経営者や個人事業主が持っているはずです。
特に事業用クレジットカードは、利用枠が大きく、支払いが翌月以降になるため、一時的に現金が潤沢に見えてしまいます。結果として、必要以上の経費を使ってしまったり、入金予定とのズレが発生して支払いが困難になるケースがあります。

実際に、次のようなトラブル事例があります。

  • 売上入金が遅れ、カードの引き落とし日に残高不足となった

  • 利用明細の確認を怠り、予算オーバーに気づいたときには遅すぎた

  • 個人用のカードと混在してしまい、経理処理が複雑化した

このような状況を防ぐためには、「資金繰り」という視点から事業用クレジットカードの活用ルールを決めることが不可欠です。


資金繰り改善の鍵は計画的なカード活用

事業用クレジットカードは、資金繰りを改善する有効なツールです。
ただし、その効果を最大限引き出すには次の3つのポイントが重要です。

  1. 支払日を考慮したキャッシュフロー設計

    • 売上入金日とカード引落日を照らし合わせ、支払いが集中しないようにする

  2. 経費の一元管理と明細確認の徹底

    • カード明細をリアルタイムで把握し、利用額が予算内かを常にチェックする

  3. ポイント・特典の戦略的活用

    • 還元ポイントを事業経費や備品購入に再投資する

これらを意識すれば、カード利用による短期的な資金不足を避け、経営の安定性を高めることができます。

事業用クレジットカードが資金繰りに有効な3つの根拠

1. 支払い猶予によるキャッシュフロー改善

事業用クレジットカードは、利用日から実際の引き落とし日までに最大で1~2か月の猶予があります。
例えば、月初に仕入れを行い、翌月末にカード決済の引き落としがある場合、その間に売上が入金されれば、実質的に売上入金後に仕入代金を支払う形になり、手元資金を減らさずに事業運営できます。
この猶予期間を意識的に活用することで、銀行からの短期借入に頼らずに資金繰りを調整できます。


2. 経費処理の効率化とミス削減

事業用カードを使うと、支出データが明細として自動的に残るため、レシートや領収書の管理が楽になります。
特にクラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)と連携すれば、カード利用データが自動仕訳され、経理業務が大幅に効率化されます。
これにより、経理担当者の作業負担が減るだけでなく、記帳漏れや二重計上といったミスも防止できます。


3. ポイント還元や特典によるコスト削減

事業用カードは法人・個人事業主向けに高還元率のポイントやマイルが付与されることが多く、年間で数万円以上のコスト削減につながる場合があります。
例えば、広告費や出張費など高額の支払いをカード経由にすることで、得られたポイントを備品購入や社員福利厚生に充てることも可能です。
単なる支払手段としてではなく、「経費削減の仕組み」として活用できる点も、資金繰りの安定化に寄与します。

資金繰りに効果的なカード利用のパターン

1. 仕入れと売上のタイミングを合わせるカード利用

小売業やネットショップなどでは、仕入れの支払いと売上入金のタイミングがズレることで資金繰りが苦しくなるケースが多いです。
例えば、カード決済日を売上入金日の直後に設定すれば、売上金で仕入代金を賄えるため、資金ショートのリスクを大幅に減らせます。

項目 日付 備考
仕入れ日 4月5日 クレジットカード払い
売上入金日 4月30日 銀行振込
カード引落日 5月10日 売上入金後の支払い

2. 広告費・販促費の後払い活用

広告代理店やSNS広告の支払いは即時引き落としが多いですが、カード経由にすることで翌月以降の引き落としに回せます。
これにより、広告からの売上が入った後に支払いができ、広告効果の回収前に資金が減るリスクを避けられます。


3. 税金・社会保険料のクレジットカード納付

国税や地方税、社会保険料もクレジットカードで納付できる場合があります(手数料はかかる場合あり)。
特に、納付期限直前にカード払いを利用すれば、資金流出を遅らせられ、他の支払いとのバランスを取りやすくなります。


4. 高額備品購入の分割・リボ払いの計画的利用

通常は手数料が発生するため推奨されませんが、どうしても一括払いが厳しい場合は、カードの分割払いを利用することで資金繰りの急激な悪化を防げます。
ただし、長期にわたる返済は負担となるため、返済計画を明確にしたうえでの利用が必須です。

事業用クレジットカードを資金繰り改善に活かすステップ

1. 現状の資金繰りを把握する

まずは、自社の資金繰り状況を明確に把握します。

  • 売上入金のサイクル

  • 仕入や経費支払いのサイクル

  • 現預金残高の推移

  • 直近3〜6か月の資金余剰・不足の傾向

これらを一覧化し、資金が不足するタイミングを洗い出します。これがカード活用の起点となります。


2. 最適なカードブランドと引落日を選定する

資金繰りの改善には、カードの「締日」と「引落日」の選び方が重要です。

  • 売上入金日の直後に引落日がくるカードを選ぶ

  • 売上先や仕入先が多い場合は、複数カードを使い分けて支払いサイクルを分散する


3. 支出のカード化を進める

カード払いに変更できる経費項目を洗い出します。

  • 仕入代金

  • 広告費

  • 通信費・光熱費

  • 出張交通費・宿泊費

  • 税金・社会保険料(対応している場合)

現金払いからカード払いに切り替えることで、支払いサイトを延ばしつつ、利用明細による経費管理の効率化も可能です。


4. 明細管理と会計連携を徹底する

カード利用は便利な反面、管理を怠ると資金繰り悪化や経費漏れの原因になります。

  • 会計ソフトとカード明細を自動連携する

  • 毎月の利用額と引落予定額を必ずチェック

  • 私用支出と事業支出を混同しない


5. 利用限度額とキャッシュフローのバランスを保つ

限度額いっぱいまでカードを使うのは危険です。

  • 常に「引落日に全額支払える」範囲で利用する

  • 一時的な資金不足はカードではなく短期融資で対応するケースも検討


6. ポイントや特典の戦略的活用

資金繰り目的が第一ですが、ポイント還元やマイル付与も経費削減に役立ちます。
ただし、ポイント目当てで不要な支出を増やすことは避けるべきです。

事業用クレジットカードは資金繰り改善の有効な武器

事業用クレジットカードは、単なる支払手段ではなく、資金繰りを改善し経営の安定化に寄与する重要なツールです。
現金支出を減らし、支払いサイトを延ばしながら、明細管理や会計連携によって経費処理も効率化できます。

ただし、利用限度額を超える使い方や返済能力を無視した利用は、かえって資金繰りを悪化させるリスクがあります。
資金繰り表を活用して計画的にカードを運用し、経営の武器として使いこなしましょう。

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