黒字でも潰れる?そのカギは「資金繰り」にあり
あなたの会社は、今月・来月の「現金残高」がいくらになるか把握できていますか?
小規模事業者や個人事業主の多くが、「利益が出ている=安心」と考えがちですが、実際には資金繰りの管理を怠ると黒字でも倒産する可能性があります。
特に2025年の経営環境では、インボイス制度対応や借入金返済、物価上昇の影響などにより、資金の出入りが複雑化しており、「資金繰り表」を使った可視化と予測がますます重要となっています。
なぜ中小企業ほど資金繰り表が必要なのか?
見えていない「お金の流れ」が倒産リスクを高める
損益計算書(PL)だけを見て「儲かっている」と安心していても、以下のような要因で資金ショートが起こります。
問題の原因 | 内容 |
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売上はあるが入金が遅い | 売掛金の回収が2ヶ月先で、現金が不足 |
仕入や人件費の支払が先行 | 現金の支出が早く、利益が出ても残高が減る |
税金・保険料などの季節支出 | 資金を準備していなければ一時的に資金難に |
これらを予測し、前もって対応するためには、資金繰り表を定期的に作成・更新することが不可欠なのです。
資金繰り表は「経営の地図」であり、習慣化すれば誰でも作れる
資金繰り表は、専門家でなくてもテンプレートと正しい知識があれば簡単に作成可能です。毎月の入金・出金を把握し、現預金の残高推移を予測することで、次のようなメリットが得られます。
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現金不足を未然に防げる
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融資や補助金の判断がしやすくなる
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経費削減や売上対策を立てやすくなる
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金融機関からの信頼が高まる
特に、ExcelやGoogleスプレッドシートを使えば無料で資金繰り表を作成でき、日々の業務に簡単に組み込めるのです。
資金繰り表が小さな会社に必要な3つの理由
理由1:資金の流れを「見える化」できるから
資金繰り表の最大の目的は、「入ってくるお金(収入)」と「出ていくお金(支出)」を時系列で整理して、残高がいつ減るのか・増えるのかを明確にすることです。
時期 | 収入(売上入金) | 支出(仕入・人件費等) | 残高 |
---|---|---|---|
4月 | 1,000,000円 | 850,000円 | +150,000円 |
5月 | 800,000円 | 950,000円 | ▲150,000円(赤字) |
6月 | 1,200,000円 | 900,000円 | +300,000円 |
✅ このように可視化することで、5月に資金不足が予想されるため、前もって対応できるのです。
理由2:資金調達・経費見直しの判断材料になるから
資金繰り表を見れば、
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今月の資金が足りないか?
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借入が必要か?
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支払いを延期できるか?
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余剰資金があるなら投資に回せるか?
といった意思決定がタイミングよく、かつ客観的に行えるようになります。
理由3:金融機関や税理士とのコミュニケーションにも役立つ
資金繰り表を提示すれば、金融機関は「返済能力の可視化」ができるため、融資審査にもプラスに働きます。
また、税理士や会計士も、資金繰り表があることで的確なアドバイスがしやすくなり、より深い経営支援を受けられるようになります。
資金繰り表のサンプルと作成手順
資金繰り表の基本構造とは?
資金繰り表は、「収入」「支出」「差引残高(現預金残高)」を週または月単位で記録・予測する表です。以下に基本的なフォーマットを紹介します。
月次資金繰り表サンプル(Excel形式)
月 | 収入(入金) | 支出(出金) | 差引(収支) | 残高 |
---|---|---|---|---|
4月 | 1,000,000円 | 850,000円 | +150,000円 | 300,000円 |
5月 | 800,000円 | 950,000円 | ▲150,000円 | 150,000円 |
6月 | 1,200,000円 | 900,000円 | +300,000円 | 450,000円 |
✅ 残高が0円を下回らないかをチェックするのが最大の目的です。
作成手順①:収入項目をリストアップ
主な入金内容
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売掛金(売上回収)
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現金売上
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借入金
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補助金・助成金
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その他入金(雑収入、返金など)
🔍 freeeやマネーフォワードを使っている場合は、レポート機能から自動抽出も可能です。
作成手順②:支出項目を分類・整理
主な支出内容
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仕入代金・外注費
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給与・賞与・法定福利費
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家賃・水道光熱費・通信費
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借入金返済(元本+利息)
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税金(消費税・法人税・所得税)
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設備投資・一時支出
✅ 「固定費」と「変動費」に分けて予測精度を高めましょう。
作成手順③:現金残高の変動を追う
月初の現金残高に対し、収支の差を加算・減算して毎月の「月末残高」を確認します。
フォーミュラ(Excelなどで活用可能)
テンプレート活用法:Excel&Googleスプレッドシートで誰でもできる!
無料で使えるテンプレート例
提供元 | 特徴 | ダウンロード先 |
---|---|---|
中小企業庁 | 汎用性が高く、補助金資料にも対応 | J-Net21など |
金融機関(例:日本政策金融公庫) | 融資申請と連動できる | 公庫公式サイト |
会計事務所・クラウドサービス | freee対応・自動連携あり | 会計事務所のブログ等 |
Googleスプレッドシート活用のメリット
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クラウド上で共有・同時編集ができる
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自動計算式で更新がラク
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スマホでも確認できる
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税理士や顧問とリアルタイム共有しやすい
✅ Googleアカウントがあれば誰でも無料で使えます!
よくある失敗と改善ポイント
よくある失敗 | 改善策 |
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売上や入金を過大に見積もってしまう | 過去実績ベースで保守的に見積もる |
税金や保険料を忘れる | 年間支払予定をリスト化して反映 |
更新をさぼって放置する | 毎月決まった日にルーティン化(例:月末締めの翌営業日) |
資金繰り表を実務に活かすステップと運用のコツ
資金繰り表を作成するだけで終わらせず、**経営判断に役立つ「経営ツール」**として活用するには、以下の5ステップで運用していくことが大切です。
ステップ1:定期的に更新する習慣をつける
✅ ポイント:ルーティン化こそが資金繰り表活用の第一歩
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毎週 or 毎月、決まった日に更新(例:月初第1営業日)
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実績ベースで前月と今月を比較
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予測と現実のギャップを把握して改善に活かす
ステップ2:部門ごとに収支を分けて管理する(可能なら)
売上や支出の発生部門が明確な場合は、**「部門別資金繰り表」**を作成するとより効果的です。
例:店舗別の収支予測
店舗名 | 売上入金 | 経費支出 | 月次残高 |
---|---|---|---|
A店 | 1,200,000円 | 950,000円 | +250,000円 |
B店 | 900,000円 | 1,000,000円 | ▲100,000円 |
ステップ3:重要な支払い予定を事前に一覧化しておく
支払いが集中するタイミングをあらかじめ把握しておくことで、資金ショートを予防できます。
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消費税・法人税の納付時期
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社会保険料や賞与支給月
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借入返済の元本・利息
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家賃の更新・年払い費用
🔍 freeeでは支払予定管理や納付スケジュールのアラート機能もあり便利です。
ステップ4:資金繰り会議や月次レビューで活用
経営会議やパートナーとの定例ミーティングに資金繰り表を持参して、
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資金状況の共有
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投資可否の検討
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売掛金の入金状況チェック
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無駄な支出の見直し
といったアクションにつなげていきましょう。
ステップ5:クラウドツールと連携し自動化へ
2025年現在は、以下のようなクラウドサービスが資金繰り管理を簡単にしてくれます。
ツール名 | 特徴 | 無料プラン |
---|---|---|
freee会計 | 銀行連携・仕訳自動化・支払予定アラート | 一部あり |
Moneytree | 銀行・カード・レジを自動連携して可視化 | あり |
Excel + Googleドライブ | カスタマイズ性が高く、共有もしやすい | ○ |
小さな会社こそ「お金の見える化」が武器になる
資金繰り表は、**会社の「健康診断表」**とも言える重要なツールです。日々の業務が忙しいと後回しにされがちですが、次のような効果を実感できるようになります。
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月末の不安がなくなる(資金残高が予測できる)
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融資・補助金のタイミングが計れる
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税理士や会計士との連携がスムーズになる
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成長投資の可否が冷静に判断できる
「経理や会計は苦手…」という方こそ、まずはテンプレートを使って1ヶ月だけ資金繰り表をつけてみてください。
あなたの会社のお金の流れが一目でわかるようになり、数字に強い経営者への第一歩となるはずです。