資金繰り悪化は「支出の優先順位の誤り」から始まる
会社の資金繰りが苦しくなる原因は、売上の減少や入金遅延だけではありません。実際には「支出の優先順位があいまいなまま、場当たり的に経費を使ってしまう」ことが資金不足を招く大きな要因です。
経費削減は単なるコストカットではなく、会社の未来を守る戦略的な選択です。
特に資金が逼迫しているときこそ、「どの経費から削るべきか」という順番を誤らないことが重要です。
間違った経費削減が会社を弱らせる
資金繰りが厳しくなると、多くの経営者は感覚的に「大きな金額の経費」や「すぐ削れる費用」に手を付けがちです。
しかし、その判断が誤ると次のような悪循環を引き起こします。
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必要な投資を削ってしまい、売上がさらに減少する
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社員の士気が下がり、生産性や離職率が悪化する
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取引先からの信頼を損ない、仕入れ条件が悪化する
経費削減の目的は「資金繰りの改善」であり、「業績悪化」ではありません。
そのためには、感覚ではなく優先順位のルールに沿った削減が必要です。
経費削減は「影響の小さい固定費」から段階的に進める
資金繰りが苦しいときの経費削減は、次の順番を意識することで、経営へのダメージを最小限に抑えられます。
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無駄な支出の即時カット
(例:使っていないサブスク、重複契約、不要な外注) -
売上に直結しない固定費の見直し
(例:高額なオフィス賃料、不要な保守契約) -
変動費の効率化
(例:仕入単価交渉、業務委託費の条件見直し) -
戦略的経費の再検討
(例:広告宣伝費、人件費構成の最適化) -
売上増加とセットでの削減判断
(削るだけでなく、収益改善と併行)
なぜ順番が重要なのか
経費削減の順番を間違えると、短期的には現金が増えても、中長期的には売上・利益を減らしてしまいます。
その理由は、経費には会社を維持するための基礎的経費と、売上を生み出すための戦略的経費があるからです。
経費の分類と資金繰りへの影響度
経費の種類 | 例 | 資金繰りへの影響 | 売上への影響 |
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不要経費 | 使っていないシステム、契約更新不要な保守 | 即改善 | なし |
固定費 | 家賃、保険料、光熱費 | 中期改善 | 少ない |
変動費 | 仕入、外注費 | 即改善 | 場合により大 |
戦略的経費 | 広告、教育、人件費の一部 | 長期的悪化の可能性 | 大きい |
この表からもわかるように、削減すべきは「資金繰りへの影響が大きく、売上への影響が小さい経費」からです。
経費削減の心理的落とし穴
経費削減を急ぐと、経営者は「見えやすい費用」や「短期で効果が出る費用」にばかり目が向きます。
しかし、このアプローチには以下の落とし穴があります。
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広告や営業活動を削る → 新規顧客獲得が減り、売上減少
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人件費を一気に減らす → 業務停滞、顧客対応の質低下
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教育費を削る → 長期的な競争力の低下
つまり、「今を乗り切る」ために未来を犠牲にする判断をすると、資金繰りは一時的に改善しても数カ月後にさらに厳しくなります。
だからこそ、順番とバランスを意識した削減が必要です。
経費削減の正しいステップ
ステップ1:不要経費の棚卸し
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使っていないソフトやアプリのサブスク解約
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ほとんど使わない駐車場や倉庫契約の解除
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同じ機能を持つサービスの重複契約解消
ステップ2:固定費の交渉・縮小
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オフィス賃料の減額交渉や移転検討
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保険契約の補償内容・金額見直し
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電気・通信費プランの変更
ステップ3:変動費の効率化
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仕入先の見直し・単価交渉
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発注ロットの調整で在庫圧縮
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外注業務の内製化検討
ステップ4:戦略的経費の最適化
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効果測定のない広告を中止し、高ROIの施策に集中
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社員研修をオンライン化してコスト削減
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生産性向上につながる設備投資は維持
資金繰り改善と経費削減の実践手順
1. 支出全体の可視化
現金出入りを「固定費・変動費・不要経費」に分類し、月単位で把握する。
特に銀行口座の出金履歴とクレジットカード利用明細を洗い出す。
2. 削減インパクトの試算
「削減金額 × 年間」でインパクトを算出し、削減優先順位を数値で決める。
例:月1万円削減 → 年12万円のキャッシュ改善。
3. 削減効果とリスクのバランス評価
削ることで業務効率・売上にどの程度影響があるかを評価。
影響が小さい順に実行する。
4. 実施とモニタリング
削減実施後も、月次の資金繰り表で効果を確認し、必要に応じて追加対応。
経費削減は「短期の現金確保」と「長期の事業維持」の両立がカギ
資金繰りが苦しいときこそ、感覚ではなく順番と基準に基づいた経費削減が必要です。
削減の順序を守れば、経営へのダメージを最小限に抑えつつ現金を確保できます。
逆に、間違った経費削減は事業基盤を壊し、さらに資金難を招きます。
今日から「不要経費の洗い出し」から始め、段階的な見直しを進めましょう。