お客様の豊かさの最大化を共に叶える、頼れる税務会計のパートナー

家事按分の正しいやり方とは?電気代・通信費を経費にするコツ

自宅で働く人が知っておきたい「家事按分」

個人事業主やフリーランスとして自宅で仕事をしていると、毎月の電気代やWi-Fiなどの通信費、家賃などを「全部自腹」で払っていることに疑問を感じたことはありませんか?

実はこれらの支出の一部は、事業に使っている割合(=事業用部分)を経費として計上することができます。これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。

しかし、按分のやり方を間違えると、税務調査で否認されるリスクや過少申告によるペナルティも。とくに近年は、在宅ワークや副業の広がりで、自宅兼オフィスというケースが増えており、家事按分の正しい知識がますます重要になっています。


「家事按分」の落とし穴とは?

「家事按分」とは、私生活と業務が混在する支出を合理的に分け、事業に関係する部分だけを経費とする考え方です。しかし次のような悩み・誤解も多いのが現状です。

よくある悩み・誤解

  • どこまで経費にしていいかわからない

  • 感覚でざっくり「半分」を経費にしている

  • 家族の使うインターネットや光熱費も全額経費にしている

  • 証拠や計算根拠を記録していない

これらのやり方は、税務署から「根拠なし」と見なされ、否認されるリスクがあります。特に電気代や通信費の経費化には、具体的な使用割合の記録や客観的根拠が求められるため、注意が必要です。


家事按分は「合理的な基準」と「記録」がすべて

家事按分を安全に、そして効果的に行うためには以下のポイントを押さえることが重要です。

ポイント 内容
按分基準の明確化 面積、使用時間、使用目的などの合理的な指標を決める
エビデンスの保存 図面・時間記録・業務日誌などの証拠を用意する
適正な経費計上 税務調査で説明できるレベルの按分率を使う

家事按分は、正しく行えば節税に効果的な武器となります。逆に、いい加減な按分はペナルティや否認のリスクを伴います。本記事では、特に質問の多い「電気代」「通信費」「家賃」の3つを中心に、正しい家事按分のやり方と、実際の計算方法、証拠の残し方まで丁寧に解説していきます。

理由:なぜ家事按分は重要なのか?

家事按分は、節税の観点から非常に有効な手段です。以下の理由から、正しく活用すべきです。

1. 不必要な納税を防げる

自宅の一部を仕事に使っているのに全額私費として扱ってしまうと、本来経費にできるものを見逃してしまい、税金を多く支払ってしまうことになります。

2. 記帳上の信頼性が上がる

合理的な按分基準に基づいて経費計上していれば、記帳内容に説得力があり、税務調査のリスクが軽減されます。

3. 数年にわたる節税効果が得られる

毎月かかる家賃・光熱費・通信費などを一部経費にできれば、年間で数万円〜十数万円の節税効果が見込めます。


家事按分できる代表的な支出と按分の考え方

以下に、よく按分対象となる支出と、それぞれの按分方法の一例を紹介します。

支出項目 按分方法 計算例(自宅全体60㎡、うち12㎡を事業使用)
家賃 面積比で按分 月10万円 × 12/60 = 2万円/月(24万円/年)
電気代 使用時間比・面積比 月1万円 × 事業時間比50% × 面積比20% = 約1,000円
ガス代 使用目的比 調理等は私用が主 →原則按分不可
通信費(Wi-Fi) 使用目的比 月5,000円 × 業務使用70% → 3,500円/月
水道代 家庭用途が主 →原則不可 -
携帯電話 使用目的比 月7,000円 × 業務60% → 4,200円/月

※上記はあくまで一例であり、実際の利用状況によって割合は異なります。


ケーススタディ:自宅兼事務所での家賃按分例

  • 家全体の面積:60㎡

  • うち業務に使用している部屋:12㎡

  • 月の家賃:10万円

→ 事業に使っている面積割合は 12 ÷ 60 = 20%
→ 家賃10万円 × 20% = 2万円/月

つまり、年間24万円を家賃として経費にできます。


税務署に説明できるレベルの「合理性」がカギ

家事按分は自己申告制なので、好きなように計上できてしまう側面もありますが、「合理性」がなければ税務署に否認される可能性が高いです。

そこで重要なのが、次の章で紹介する「行動」=記録の方法と按分比率の証拠づくりです。

家事按分を正しく処理するためのステップ

では、家事按分を実際の経理・確定申告にどう活かすか、実務的な手順を紹介します。


1. 按分対象となる経費をリストアップする

まずは、以下のような「自宅兼事務所で共用している費用」を洗い出します。

  • 家賃

  • 電気・ガス・水道代

  • 通信費(Wi-Fi、スマホ)

  • 火災保険料(契約による)

  • 駐車場代(業務で車を使用する場合)

Point:全額ではなく「事業で使った分だけ」経費にできることを意識


2. 按分比率を決める方法

按分比率の考え方は以下のように整理できます。

経費の種類 按分基準の例
家賃、光熱費 面積比(事業用スペース ÷ 自宅全体)
電気代 面積比 × 使用時間比
通信費(Wi-Fi) 業務利用時間、用途比率
スマホ 通話履歴、利用内容に基づく使用比率
水道代 通常不可(私用が大半のため)

※按分比率の証拠として、図面、電気代の明細、業務時間記録などが有効です。


3. 会計ソフトでの入力方法(freeeを例に)

freeeなどの会計ソフトを使う場合:

  • 1件の支出を登録し、「取引を分割」機能を使って、事業分(按分分)と私用分に分けて登録

  • メモ欄に「家事按分」「事業使用割合 20%」など記載しておく


4. 証拠として残しておくべきもの

証拠の種類 具体例
利用面積 間取り図・不動産契約書
使用時間 業務日誌、作業ログ
利用比率 通話履歴、アプリ使用ログ、スプレッドシートの利用実績など
写真等 作業スペースの様子を写真で保存しておくと税務調査時にも有効

5. 税務署に対しての説明準備

帳簿だけでなく、「このような理由で○%按分しています」と言語化できるロジックが重要です。

例:

「12畳のうち4畳を事業用スペースとして使用しており、月の通信費の70%を業務で使用しています。」

このような説明を用意しておけば、税務調査にも自信を持って対応できます。

家事按分を正しく理解し、確実な節税を

家事按分は、個人事業主やフリーランスが適正な税務処理を行ううえでとても重要なポイントです。うまく活用すれば、正しく節税ができるだけでなく、帳簿や申告の信頼性も向上します。


✅この記事のまとめ

  • 家事按分とは?
     …私用と事業用が混在する費用を、適切な比率で分ける処理

  • 主な対象費用は?
     …家賃・光熱費・通信費・保険料など、自宅兼事務所なら共通して発生しやすい

  • 按分比率はどう決める?
     …面積・時間・使用頻度などの合理的な基準を使って算定

  • 帳簿記録と証拠の整備が重要
     …確定申告の信頼性アップ、税務調査時のトラブル防止につながる


今すぐできるアクション5選

  1. 自宅の平面図や部屋の寸法を確認

  2. Wi-Fiやスマホの業務利用状況を洗い出す

  3. 会計ソフトに「家事按分」用のタグやメモを追加

  4. 光熱費の請求書や通話履歴をデジタル保管

  5. 確定申告前に一度、顧問税理士にチェックを依頼

Contactお問い合わせ

お問い合わせフォーム