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経費で落とせるもの・落とせないもの一覧

経費の正しい理解が利益を守る

「経費で落とせるかどうか」は、個人事業主や中小企業経営者にとって日常的な悩みの種です。
経費として認められれば、課税対象となる所得を減らし、結果として税金負担を軽くできます。
しかし、何でもかんでも経費にできるわけではなく、税務署の判断基準を理解しないまま経費計上すると、後の税務調査で否認されるリスクがあります。

特に、プライベートと事業の支出が混在しやすい場合、線引きがあいまいだと「本来払わなくてよいはずの税金」を払うことになったり、反対に「過剰に経費計上」してペナルティを受けたりする危険性があります。

そこで本記事では、経費で落とせるものと落とせないものを一覧で整理し、判断基準や注意点をわかりやすく解説します。あわせて、節税効果を高めるための正しい経費活用方法もご紹介します。


経費の判断を誤ると何が起きるか?

経費の判断ミスは、税務・経営の両面で大きな問題を引き起こします。

  • 税務署から否認される
    → 否認された経費は課税所得に加算され、追加で税金を納める必要が出ます。

  • 重加算税・延滞税のリスク
    → 意図的な過大計上とみなされると、本税以外に最大40%の重加算税が課される場合も。

  • 資金繰りの悪化
    → 経費の過少計上は税負担増を招き、手元資金が減少。逆に過大計上は調査後の追徴で一気に資金流出。

  • 信用の低下
    → 決算書や確定申告書の信頼性が下がると、融資や取引先からの信用に影響。

つまり、経費判断を誤ることは、単に税金の問題にとどまらず、事業の存続や成長にも直結するのです。


経費の基本的な判断基準

結論から言えば、経費で落とせるかどうかの判断は**「事業に直接必要かどうか」**で決まります。

税務上の経費の定義

「その年の総収入金額を得るために直接要した費用」
(所得税法第37条より)

このため、事業との関連性が客観的に証明できる支出は経費として認められますが、プライベートな支出や事業との関連が薄い支出は経費にできません。

基本判断の3ステップ

  1. 事業との関連性があるか
    → 仕事を遂行するために必要な支出か

  2. 金額が妥当か
    → 社会通念上、高額すぎないか

  3. 証拠書類があるか
    → 領収書・請求書・契約書など記録が残っているか


経費で落とせるもの一覧(主なカテゴリー別)

以下は、個人事業主・中小企業が日常的に使用する経費の代表例です。

経費区分 主な内容 注意点
交通費 電車・バス・タクシー代、高速道路料金、ガソリン代 プライベート利用分は除外
通信費 携帯電話・インターネット料金、郵送費 個人利用分は案分
消耗品費 文具、コピー用紙、少額の備品 10万円未満が原則
交際費 取引先との飲食、手土産 私的交際は不可
会議費 社内会議や打ち合わせの飲食費 1人あたり5,000円以下
旅費交通費 出張時の宿泊費・交通費 家族旅行の費用は不可
水道光熱費 事務所や店舗の電気・ガス・水道代 自宅兼用は按分
減価償却費 車両、機械、パソコンなど 資産の耐用年数に従う
租税公課 事業税、固定資産税 所得税や住民税は不可
保険料 事業用資産の火災保険、損害保険 個人保険は不可

経費で落とせないもの一覧(主な事例)

税務上、事業との関連性が認められない支出は経費になりません。以下に代表的な例を挙げます。

区分 具体例 理由
個人的生活費 家族の食費、日用品、家賃(自宅用)、衣服 事業との関連なし
個人保険 医療保険、生命保険、学資保険 私的保障目的
所得税・住民税 自分や役員の所得税・住民税 所得控除対象外
罰金・反則金 駐車違反金、交通違反金 法令違反による支出
寄付金(一定額超) 慈善団体への寄付(上限あり) 損金算入制限あり
私的旅行費 家族旅行や観光費用 事業関連性なし
高級嗜好品 高額ワイン、宝飾品 社会通念上事業必要性なし

経費で落とせる・落とせない境界線

税務署がチェックするのは「支出の目的と関連性」です。
特に以下のようなケースはグレーゾーンになりやすく、判断に注意が必要です。

自宅兼事務所の家賃・光熱費

  • OK部分:事業に使用する面積割合分

  • NG部分:居住専用部分

  • 注意点:按分割合は客観的基準(面積比・使用時間比)で算出し、根拠を残す。

車両費

  • OK部分:仕事の移動に使うガソリン代・駐車場代

  • NG部分:家族ドライブや買い物など私用利用分

  • 注意点:車の利用日誌や走行距離記録を残すと安全。

交際費と私的飲食費

  • OK部分:取引先との会食、商談時の飲食費

  • NG部分:友人との食事、家族との外食

  • 注意点:参加者・目的を領収書にメモする。

衣服代

  • OK部分:作業服や制服など事業専用の衣服

  • NG部分:スーツや普段着(私用にも着用可能)

  • 注意点:事業専用と証明できるかがカギ。


税務署が否認しやすい経費パターン

経費として計上しても、以下のような支出は調査時に否認されやすい傾向があります。

  1. 領収書がない支出

    • コンビニでの少額現金払いでも記録を残さないと否認されるリスク。

  2. 証拠が不十分な交際費

    • 誰と何の目的で会食したのかが不明確。

  3. 金額が過大な備品購入

    • 事業規模に比して不自然に高額な物品は必要性を疑われる。

  4. 私的利用との区別が曖昧な費用

    • 家事按分を適切にしていない場合は全額否認されることも。

経費で落とせる・落とせない具体例【ケーススタディ】

ケース1:車両費の計上

状況
個人事業主Aさんは営業活動で車を使用。週末は家族の買い物にも利用。

判断

  • 平日営業利用分(走行距離や日誌に基づき50%)→経費OK

  • 休日家族利用分(50%)→経費NG

ポイント

  • 車両費(ガソリン代、駐車場代、自動車税、自動車保険)は按分計算が必要

  • 証拠資料(運行記録簿、ETC利用明細)を残すことで説得力UP


ケース2:自宅兼事務所の光熱費

状況
個人事業主Bさんは自宅の一室を事務所として利用(床面積の20%が事業用)。

判断

  • 家賃、電気代、水道代の20%を経費に計上可能

  • 残り80%(私的利用分)は経費NG

ポイント

  • 面積比・時間比を根拠にする

  • 税務署から「使用割合の証拠」を求められる場合があるため、平面図や利用時間表を保存


ケース3:接待交際費

状況
中小企業C社の社長が取引先と高級レストランで会食(1人あたり2万円)。

判断

  • 取引先との商談が目的→経費OK(中小企業は交際費800万円まで全額損金可)

  • ただし家族や私的友人が同席し、事業に無関係な場合はその分を除外

ポイント

  • 参加者氏名・会社名・目的を領収書に記入

  • 高額な飲食費は必要性を説明できるようにする


ケース4:衣服代

状況
フリーランスデザイナーDさんが展示会用にスーツを購入。

判断

  • スーツは私生活でも着用可能→経費NG

  • 展示会で使用するユニフォーム(ロゴ入りTシャツなど)→経費OK

ポイント

  • 「事業専用」と言えるかが重要

  • 領収書だけでなく、使用シーンの写真を保管すると安心


ケース5:海外出張費

状況
個人事業主Eさんが海外展示会に参加。旅行期間の半分は観光。

判断

  • 展示会参加日・渡航費・宿泊費(展示会期間分)→経費OK

  • 観光日程分の宿泊費・移動費→経費NG

ポイント

  • 行程表・展示会招待状などの証拠書類を保存

  • 観光と仕事の日程を明確に区別する


税務調査でのやり取り例

税務署担当者:「この車両費、事業用と私用の区分はどうなっていますか?」
納税者:「走行距離簿をつけており、年間の50%が事業利用です。根拠はこれです。」

結果:証拠が明確だったため、全額認められる(按分割合通り)


税務署担当者:「このスーツ代は経費計上されていますが?」
納税者:「展示会用です。」
税務署担当者:「私用利用もできるため、経費には認められません。」

結果:スーツ代は否認、他の展示会経費は認められる

経費を正しく計上するための行動ステップ

ステップ1:経費のルールを理解する

  • 「売上を得るために必要な支出」であることが原則

  • 私的支出は除外

  • 按分計算が必要な場合は根拠を明確に


ステップ2:領収書・証拠を残す

  • 領収書・請求書を必ず保管

  • クレジットカード明細、銀行振込明細も有効

  • 会議や接待は、参加者・目的・日付をメモする


ステップ3:会計ソフトを活用する

  • freee・マネーフォワード・弥生などを利用すると自動仕訳・証憑保存が簡単

  • 電子帳簿保存法に対応しているかを確認する

  • スマホで領収書を撮影し、そのまま仕訳できる仕組みを整える


ステップ4:按分の根拠を記録

  • 車両:走行距離簿や運行記録簿

  • 自宅兼事務所:間取り図、利用時間表

  • 光熱費:電気メーターの使用時間データなど


ステップ5:税理士に相談する

  • 判断に迷う経費は専門家に確認

  • 節税と脱税の境界線を理解する

  • 年度末前に事前相談することで修正対応がしやすい


経費管理のチェックリスト

項目 チェック内容
領収書保存 日付・宛名・金額・用途が明記されているか
按分計算 根拠資料(距離、面積、時間)があるか
接待交際費 相手・目的が記録されているか
私的利用分除外 家族利用分や観光日程は除外されているか
保存期間 7年間保管できる体制になっているか

まとめ

経費で落とせるかどうかの判断は「事業の必要性」と「私的利用の有無」が最大のポイントです。
特に税務調査では、証拠資料や按分計算の根拠が明確であれば経費として認められる可能性が高まります。
日頃から記録・保存を徹底し、迷う場合は専門家に相談することで、節税効果を最大化しつつ税務リスクを回避できます。

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