赤字でも確定申告は意味がある?
「今年は赤字だったから、確定申告しなくていいや…」
もしあなたがそう思っているなら、実は大きなチャンスを逃しているかもしれません。
事業や投資、不動産などで「赤字」が出たとしても、それをうまく活用すれば、将来の税金を軽減できる「節税効果」が得られます。
この記事では、赤字を有効活用するための2大ポイント「損益通算」と「繰越控除」について、税理士が初心者向けにわかりやすく解説します。
赤字なのに確定申告をしないと損をする?
「赤字なら納税がない=申告不要」と思われがちですが、それは大きな誤解です。
赤字でも確定申告を行うことで、以下のような「得」になるケースがあります:
ケース | 得られるメリット |
---|---|
他の所得と合算できる(損益通算) | 所得税や住民税が軽減される可能性あり |
赤字を翌年以降に繰り越せる(繰越控除) | 将来黒字になったときの節税に有効 |
赤字を記録することで融資に有利になる場合も | 実績として金融機関に提示可能 |
特に「不動産所得」や「事業所得」「雑所得」で赤字が出た場合、正しく申告すれば税負担を減らすことができるため、確定申告は「義務」ではなく「戦略」なのです。
赤字でも確定申告はすべき。将来の節税につながる
結論として、赤字であっても「確定申告すべき」です。
以下のような理由から、赤字申告はメリットがあります:
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所得税や住民税の負担を抑える「損益通算」ができる
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将来の利益と相殺して税金を減らせる「繰越控除」が使える
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帳簿を整備している姿勢が金融機関や行政評価にプラスに働く
むしろ、確定申告をしないとこれらの制度が一切使えなくなるため、「やらない方が損」と言っても過言ではありません。
次の章では、「なぜ赤字でも申告すべきなのか?」その理由をわかりやすく深掘りしていきます。
赤字申告で得られる2つの税制メリットとは?
赤字でも確定申告をするべき最大の理由は、「損益通算」と「繰越控除」の2つの税制上のメリットが得られるからです。
損益通算とは?
損益通算とは、複数の所得を合算(通算)して、最終的な課税所得を減らす仕組みです。
たとえば不動産所得が赤字で、給与所得が黒字の場合、赤字分を差し引くことで課税所得が減少し、所得税・住民税が軽減されます。
損益通算の対象となる主な所得
所得区分 | 損益通算できる? | 備考 |
---|---|---|
給与所得 | × | 他の所得と合算できない |
事業所得 | ○ | 個人事業主などの本業 |
不動産所得 | ○ | 賃貸などによる収入 |
譲渡所得(不動産等) | △ | 特定条件あり。株の譲渡は不可 |
雑所得 | ○ | 副業・年金など。マイナスの場合通算可能 |
✅ ポイント:給与所得は赤字にできないが、他の所得の赤字とは「通算」できる!
繰越控除とは?
繰越控除は、赤字(損失)を翌年以降に繰り越し、将来の黒字と相殺できる制度です。
たとえば事業所得で100万円の赤字が出た年に確定申告をしておけば、翌年に黒字が出た場合、その赤字を差し引いて税金を減らすことができます。
繰越控除の基本ルール
項目 | 内容 |
---|---|
控除期間 | 最長3年間(青色申告が条件) |
適用対象 | 事業所得、不動産所得、譲渡所得(制限あり)など |
条件 | 赤字となった年に確定申告をしていることが必須 |
💡 青色申告が前提です。白色申告では損失の繰越はできません。
赤字を「税金対策の武器」にする発想を
一見マイナスに感じる「赤字」ですが、制度を理解すればむしろ積極的に活用すべき戦略的な資産になります。
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今すぐ税金を減らすなら → 損益通算
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将来の利益と相殺したいなら → 繰越控除
このように、「赤字でも確定申告をすべき理由」は明確です。次の章では、具体的にどのようなケースでどれだけ得をするのか、数字や比較を交えて解説していきます。
赤字申告による節税効果をシミュレーション!
赤字でも確定申告をすることで、どれだけ税金が減るのか──ここでは「損益通算」と「繰越控除」を使った節税効果のシミュレーションを通して、実際のイメージを深めていただきます。
ケース1:副業の赤字を給与と損益通算する
▷前提条件
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本業(会社員)の年収:500万円(課税所得は約330万円)
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副業(個人事業):赤字30万円
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扶養控除等:標準的な控除を想定
▷適用前後の比較
区分 | 通算前 | 通算後(副業赤字30万円) |
---|---|---|
課税所得 | 約330万円 | 約300万円 |
所得税(概算) | 約11.4万円 | 約10.2万円 |
住民税(概算) | 約33万円 | 約30万円 |
節税効果 | ― | 約4.2万円の節税! |
✅ 副業が赤字でも、放置せず申告することで「本業の税金が減る」!
ケース2:事業赤字を繰り越して将来の利益と相殺
▷前提条件
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2024年:事業赤字50万円(青色申告済)
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2025年:事業黒字80万円
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青色申告承認済、3年以内に申告を継続
▷繰越控除の活用
年度 | 所得 | 控除額 | 課税対象所得 | 節税効果(概算) |
---|---|---|---|---|
2025年 | 80万 | △50万 | 30万円 | 約5万円の節税 |
✅ 青色申告とセットで「赤字を翌年の利益と相殺」できる!
比較:赤字申告した場合/しなかった場合
パターン | 赤字申告しない | 赤字申告する |
---|---|---|
税金の還付・軽減 | なし | 所得税・住民税が軽減 |
翌年以降の対策 | なし | 黒字と相殺でき節税効果あり |
青色申告特典 | 使えない | 青色申告特別控除などが使える |
💡 特に「青色申告」で赤字を管理している方にとって、赤字申告=未来の節税効果の種まきなのです。
今すぐやるべき赤字申告の準備と注意点
赤字でも確定申告をする価値があることが分かったら、次は実際にどう行動するかが重要です。ここでは、スムーズに赤字申告を行うための準備手順と注意点を具体的に解説します。
【準備①】帳簿と証憑の整理
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収入と支出の記録を正確に残すことが前提
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青色申告なら複式簿記が必須
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白色申告でも収支内訳書の作成が必要
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領収書や請求書などの証憑類をまとめておく
✅ 赤字でも「必要経費」が適切に説明できる資料が求められます。
【準備②】青色申告承認申請書の提出
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新規開業者や今まで白色申告だった人は要注意!
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赤字を繰り越すには青色申告が必須
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提出期限:
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新規開業:開業日から2か月以内
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既存事業:毎年3月15日まで
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✅ 提出を忘れると「繰越控除」ができなくなるので注意。
【準備③】確定申告書類の作成
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損益計算書(収支内訳書または青色決算書)をしっかり記載
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損失の繰越控除に関する記載も忘れずに
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freeeや弥生などの会計ソフトで自動計算するとミスが減る
【注意点①】赤字でも税金が発生する場合がある
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住民税の**均等割(約5,000円〜7,000円)**は所得に関係なく発生
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消費税の課税事業者は売上により申告義務が発生
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国民健康保険も前年所得に基づいて保険料が発生する
✅ 「赤字=無税」とは限らないので、事前のシミュレーションが重要!
【注意点②】赤字を「意図的に」作ると否認リスクあり
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高額な交際費や架空経費など、不自然な赤字は税務調査の対象
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プライベート支出との線引きも明確に
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節税目的とはいえ、正当性と実態のある経費計上を徹底
赤字申告は「未来の利益」を守る賢い選択
赤字であっても、確定申告をすることで将来の利益と相殺したり、税負担を軽減するための大きな一手になります。
✅ 確定申告すべき理由
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所得税・住民税の軽減につながる
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翌年以降の節税に活かせる
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青色申告による繰越控除が使える
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事業の正当性を対外的に証明できる
「赤字=申告しなくていい」というのは誤解です。