特例が終わった今、事業者が直面する現実
新型コロナウイルス感染症の影響で、これまで多くの事業者が税金や社会保険料の納付猶予や減免措置を受けてきました。
しかし、コロナ特例の終了に伴い、従来の緩和制度は縮小または廃止され、通常の税務対応に戻っています。
「これまで助かっていたけど、今後はどうすればいいのか分からない…」という声も増えています。
この記事では、コロナ特例終了後の税務対応について、現行制度の最新情報と実務上の注意点を整理し、事業者がとるべき具体的な行動まで解説します。
特例終了で生じる4つの課題
コロナ禍で導入された税務特例は、経営悪化を一時的に緩和する役割を果たしてきました。
たとえば以下のような措置です。
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国税・地方税の納付猶予(無担保・延滞税なし)
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固定資産税の減免
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社会保険料の納付猶予
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持続化給付金や家賃支援給付金 など
しかし、これらの特例措置のほとんどが終了し、通常の納付義務や延滞税の発生ルールに戻りました。
そのため、次のような課題が発生しています。
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猶予期間が終わり、一括納付を求められるケース
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減免がなくなり、固定資産税や社会保険料の負担が増加
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延滞税や加算税のルールがコロナ以前の水準に戻る
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資金繰りへの影響が大きく、黒字倒産の危険性が高まる
これらに適切に対応しなければ、税負担の増加だけでなく、信用力の低下や資金ショートにつながりかねません。
通常制度での早期対応がカギ
コロナ特例終了後は、通常制度での納税・資金繰り対策が必須です。
猶予や減免は一部継続しているものの、条件は厳しく、申請も事前対応が必要です。
特に重要なのは以下の3点です。
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現行の猶予制度・分納制度の活用
→ 「換価の猶予」「納税の猶予」など通常制度を理解し、早めに申請する -
資金繰り計画の再構築
→ 税・社会保険料の支払いスケジュールを反映した資金計画を立てる -
経費・節税対策の前倒し実行
→ 決算期や年末前に節税策を検討し、税負担をコントロールする
特例から通常制度への移行による影響
1. 猶予制度の内容が大きく変化
コロナ特例では、売上減少(概ね前年同月比20%以上)を証明すれば、延滞税ゼロ・無担保で1年間納付猶予が可能でした。
しかし特例終了後は、以下のように通常の猶予制度へ移行しています。
| 制度名 | 主な条件 | 延滞税 | 担保 | 猶予期間 |
|---|---|---|---|---|
| 納税の猶予 | 災害や事業資金不足等で納付困難 | 年1.6%(一部免除あり) | 必要な場合あり | 最長1年 |
| 換価の猶予 | 差押財産の換価が生活・事業に著しい支障 | 年1.6% | 必要な場合あり | 最長6か月 |
| 分納(任意) | 原則的に税務署との相談で分割納付可 | 年1.6% | 不要 | 期間は応相談 |
ポイント:コロナ特例の「無担保・延滞税ゼロ」はなくなったため、資金繰り負担は増加します。
2. 減免措置のほとんどが廃止
固定資産税・都市計画税の減免は2021〜2022年度をもって終了。
これにより、事業用不動産や設備を持つ事業者は負担が元に戻りました。
社会保険料の猶予も終了し、通常の納付期限に従う必要があります。
3. 延滞税・加算税の負担増加
コロナ特例では延滞税が免除されていましたが、現在は**原則年8.9%(一部1.6%)の延滞税が課されます。
さらに、期限後申告や無申告の場合は無申告加算税(5〜15%)や重加算税(35〜40%)**が課されることもあります。
特例終了後は、期限内納付・申告の重要性が増しているといえます。
4. 猶予の申請ハードルが上昇
特例時は売上減少の証明で簡単に申請できましたが、通常制度では事業資金不足の理由や財産状況の詳細説明が必要です。
税務署は猶予審査を慎重に行うため、書類不備や要件不充足で却下されるリスクもあります。
特例終了後の税務対応ケーススタディ
ケース1:納税猶予が終了した法人
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背景:売上減少により1年間の猶予を受けていたが、期限が到来
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対応:税務署と相談し、分納計画を作成
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結果:延滞税は発生するが、月ごとの支払額を抑えることで資金繰りを維持
ケース2:固定資産税減免終了後の負担増
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背景:2022年度まで減免を受けていた工場経営者
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対応:翌年度から負担増を見越し、設備投資を控え、キャッシュリザーブを確保
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結果:急な資金不足を回避
ケース3:社会保険料猶予終了後の対応
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背景:コロナ時に猶予を受けていたが終了
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対応:労務管理を見直し、パート・アルバイトのシフト調整で固定費を削減
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結果:社会保険料の増加分を吸収
今からできる5つの対策
1. 納税スケジュールの見直し
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決算期・申告期限・納付期限を再確認
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月次ベースで税金積立を行い、突発的な資金不足を防ぐ
2. 猶予・分納の事前申請
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納期限を過ぎる前に税務署へ相談
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必要書類(資金繰り表・財産目録など)を準備
3. 節税対策の前倒し
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決算間際ではなく、半年〜3か月前から経費計上・投資を検討
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小規模企業共済や倒産防止共済の活用も視野に
4. 固定費削減
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不要な契約やサービスを見直し
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保険やリース契約の適正化を行う
5. 専門家への早期相談
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税理士や社会保険労務士と連携し、制度変更への対応策を立案
特例終了後は「計画的な納税」が必須
コロナ特例が終了した今、事業者は従来の制度のもとで税務対応を行う必要があります。
無担保・延滞税ゼロの猶予はなくなり、負担は確実に増加します。
しかし、早めの資金繰り対策と現行制度の活用により、ダメージを最小限に抑えることが可能です。
税務対応は後手に回るほど選択肢が減るため、今すぐスケジュールと資金計画を見直しましょう。

