副業解禁時代に避けて通れない「税金」の知識
近年、副業を解禁する企業が増え、会社員や個人事業主が複数の収入源を持つことは珍しくなくなりました。
しかし、収入が増えると同時に、税金の申告や納付の義務も生じます。副業で得た収入は金額や内容によって課税方法が異なり、正しい申告を怠るとペナルティが発生する可能性もあります。
さらに、副業の内容によっては節税のチャンスが隠れています。
この記事では、副業の種類別にかかる税金と、その節税ポイントをわかりやすく解説します。
副業税務の3大悩みとは?
多くの副業者が抱える共通の悩みは次の3つです。
-
副業収入にどんな税金がかかるのか分からない
-
確定申告が必要かどうか判断できない
-
節税できる方法があっても知らずに損をしている
特に、「会社にバレたくないから申告しない」という選択は、脱税リスクを伴います。
また、税金の種類や計算方法を誤解したまま申告すると、追徴課税や延滞税といった余計な負担が発生する可能性があります。
そこで本記事では、まず副業でかかる税金の全体像を整理し、その上で所得区分別の節税方法を具体的に解説します。
副業で発生する主な税金は3種類
副業でかかる主な税金は以下の3つです。
税金の種類 | 課税対象 | 計算方法 | 納付方法 |
---|---|---|---|
所得税 | 副業による所得(利益) | 課税所得 × 税率(累進課税) | 確定申告または年末調整外で納付 |
住民税 | 副業による所得(利益) | 所得 × 一律10%前後 | 翌年度に市区町村から納付書 |
個人事業税 | 事業所得が290万円超 | 所得 × 税率(業種ごとに異なる) | 都道府県に納付 |
このほか、副業の内容によっては消費税や印紙税が関係する場合もあります。
所得区分を押さえることが節税の第一歩
-
**所得の種類(事業所得・雑所得・給与所得・譲渡所得など)**で計算方法や経費の範囲が異なる
-
経費を正しく計上することで課税所得を減らせる
-
ふるさと納税や小規模企業共済などの制度を活用すればさらに節税できる
副業収入は4つの所得区分に分類される
副業の税務処理を正しく行うためには、まず収入の種類を「所得区分」に分けて考える必要があります。所得区分が変わると、経費として認められる範囲や申告方法が変わるため、節税にも大きく影響します。
事業所得(個人事業として行う副業)
-
対象例:フリーランスのライター、デザイナー、プログラマー、物販、YouTuberなど
-
特徴:売上から必要経費を差し引いた金額が所得
-
メリット:青色申告による65万円控除、家事按分による経費計上が可能
-
注意点:継続性・独立性がないと雑所得と判定される場合あり
雑所得(単発や副業的な収入)
-
対象例:スポットの講演料、単発のライティング、メルカリ転売の利益など
-
特徴:副業的な収入で規模が小さいものが該当
-
メリット:経費計上は可能だが、赤字は他の所得と通算できない
-
注意点:2022年以降、事業性の有無を厳格に判定するルールが導入
給与所得(アルバイト・パート)
-
対象例:週末のみの飲食店勤務、イベントスタッフなど
-
特徴:会社が源泉徴収を行い、年末調整も実施
-
メリット:確定申告が不要な場合もある
-
注意点:給与が2か所以上からある場合は原則として確定申告が必要
譲渡所得(資産売却による利益)
-
対象例:株式売却、不動産売却、仮想通貨の売買
-
特徴:資産の種類によって課税方法や税率が異なる
-
メリット:株式や投資信託は分離課税(20.315%)で計算可能
-
注意点:損益通算のルールを正しく理解しておく必要あり
所得区分ごとの税金と節税可能ポイント
副業の所得区分が分かれば、課税方法や節税方法も整理しやすくなります。
所得区分 | 税率・課税方法 | 主な節税方法 |
---|---|---|
事業所得 | 累進課税(5~45%) | 青色申告控除、経費計上、小規模企業共済 |
雑所得 | 累進課税 | 必要経費計上、副業の事業化による事業所得化 |
給与所得 | 累進課税 | 年末調整での控除申請、ふるさと納税 |
譲渡所得 | 株式・投資信託は20.315%の分離課税 | NISA利用、損益通算、繰越控除 |
所得区分を誤ると税負担が増える可能性
もし事業所得に該当する副業を雑所得として申告すると、青色申告控除や赤字の損益通算が使えず、結果的に税負担が増えてしまいます。逆に雑所得を事業所得として申告し、税務署に否認されると、過少申告加算税などのペナルティを受ける可能性もあります。
副業タイプ別の税金計算例と節税パターン
副業の種類によって、税金計算の方法や有効な節税策は大きく異なります。ここでは代表的な副業タイプを例に、具体的な数値でシミュレーションしてみましょう。
1. フリーランス(事業所得)の場合
ケース:ライターとして年間売上80万円、経費20万円
-
売上 80万円 − 経費 20万円 = 所得 60万円
-
他に会社員の給与所得がある場合、この60万円が給与に合算されて課税
-
青色申告を使えば、さらに65万円の控除が可能(帳簿付け必須)
節税ポイント
-
青色申告特別控除(最大65万円)
-
家事按分による自宅家賃・光熱費・通信費の経費化
-
小規模企業共済やiDeCoで所得控除を上乗せ
2. メルカリ転売(雑所得)の場合
ケース:年間売上30万円、仕入れ・送料・手数料10万円
-
売上 30万円 − 経費 10万円 = 所得 20万円
-
他の所得と合算して課税
-
雑所得の赤字は他の所得と通算できない
節税ポイント
-
事業としての継続性・反復性があれば事業所得にできる可能性
-
経費の証拠(レシート・領収書・スクリーンショット)を必ず保存
3. 副業アルバイト(給与所得)の場合
ケース:本業の給与 400万円、副業アルバイト 50万円
-
副業先の会社が源泉徴収済みでも、2か所給与の合計額で申告が必要
-
所得税は累進課税、住民税は翌年に本業へ通知
節税ポイント
-
副業収入の住民税を「自分で納付」に変更して本業に知られにくくする
-
年末調整で医療費控除・生命保険料控除・扶養控除を適切に申請
4. 株式投資(譲渡所得)の場合
ケース:株式売却益50万円
-
株式は分離課税(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
-
合計税率 20.315%、税額約10.1万円
-
損益通算・繰越控除が利用可能
節税ポイント
-
NISAを利用すれば売却益や配当金が非課税
-
年内に含み損銘柄を売却し、損益通算で税金を圧縮
副業での節税と脱税の境界線に注意
節税は法律の範囲内で税負担を軽くする行為ですが、脱税は違法です。特に副業では、以下のような行為が税務調査で指摘されやすくなります。
-
経費と私的支出の区別があいまい
-
副業収入を申告しない(ネット銀行や振込記録で発覚)
-
架空経費の計上
-
家族への架空給与支払い
副業の税務対策を実践するためのステップ
副業で得た収入を適切に申告し、節税メリットを最大化するためには、次の手順を踏むことが重要です。
1. 副業の所得区分を明確にする
-
事業所得か雑所得か、給与所得かを区分
-
所得区分によって計算方法や控除の種類が異なる
-
税務署の見解や判例を参考に判断
2. 収入と経費を正確に記録する
-
銀行入出金明細を月ごとに整理
-
経費はレシート・請求書・スクリーンショットを保存
-
領収書がない場合は出金伝票やメモを残す
3. 会計ソフトを活用する
-
freee・マネーフォワード・弥生などクラウド会計を利用
-
銀行やクレカと連携して自動仕訳
-
青色申告65万円控除を受けるための帳簿付けが容易に
4. 節税制度を組み合わせる
-
小規模企業共済やiDeCoで所得控除を増やす
-
医療費控除や生命保険料控除を忘れず申請
-
NISAやふるさと納税を活用
5. 住民税の納付方法を選択する
-
副業を会社に知られたくない場合は「普通徴収(自分で納付)」を選択
-
確定申告書第二表の該当欄にチェック
6. 確定申告を期限内に行う
-
原則2月16日~3月15日まで
-
電子申告(e-Tax)なら控除額や提出の利便性アップ
-
還付申告は5年間可能
7. 税務リスクに備える
-
税務調査の対象になりやすい副業(高額現金取引・無申告・架空経費)に注意
-
不明点は税理士に相談して安全な節税を行う
まとめ
副業で得た収入は、種類によって税金の計算方法や控除の使い方が変わります。
正確な記帳と制度の活用により、節税しながら税務リスクを回避することが可能です。
「申告しない」という選択肢はリスクが高く、後から重加算税や延滞税が課される恐れもあります。
法律の範囲内で賢く節税し、副業収入を安心して活用できる体制を整えましょう。