確定申告前こそ見直したい「節税」のチャンス
個人事業主として1年間懸命に働いてきたあなた。いよいよ確定申告の時期が迫ってくると、ふと気になるのが「税金って、もっと安くできないの?」という思いではないでしょうか。
実は、確定申告前のタイミングこそが、節税に最も有効な見直しのチャンスです。
節税対策を知らずに放置していると、必要以上に税金を払ってしまっているケースも少なくありません。逆に、正しい知識を持って対策を講じれば、数万円〜数十万円の納税額を減らせる可能性もあります。
本記事では、確定申告前に見直しておきたい「個人事業主の節税対策10選」をわかりやすく解説します。
知らないと損!個人事業主の節税リスク
個人事業主は、会社員と違って「自分で確定申告を行い、自分で節税を意識しなければならない」という立場にあります。
そのため、以下のような課題に直面しがちです。
- 節税対策を知らずに過大な税金を支払っている
- 「経費」として計上できるはずの支出を見逃している
- 青色申告の特典を活かしきれていない
- 将来への備えを税金対策と両立できていない
これらは、正しい情報を持つことで回避できる「損失」です。ここからは、こうした損失を避け、賢く節税するための具体的な対策を紹介します。
今すぐ取り組める節税対策は「10個」ある
以下に紹介する10の節税対策は、確定申告前にすぐに見直せる内容ばかりです。
節税対策名 | 概要 |
---|---|
1. 青色申告の活用 | 最大65万円の控除が受けられる |
2. 経費の正確な計上 | 支出の漏れをなくす |
3. 家事按分の見直し | 自宅兼事務所なら節税に |
4. 小規模企業共済 | 将来の退職金+所得控除 |
5. iDeCoの活用 | 積立型年金で全額所得控除 |
6. 減価償却の活用 | 固定資産を経費化 |
7. 青色事業専従者給与 | 家族への給与を経費にできる |
8. 所得の分散 | 配偶者や親族との分担を検討 |
9. 期末在庫の評価見直し | 在庫の金額次第で利益調整も可能 |
10. 経費精算・記帳の見直し | ミスや漏れをなくす運用の徹底 |
それでは、1つずつ具体的に見ていきましょう。
理由と具体例①:青色申告の活用(最大65万円控除)
なぜ重要なのか?
青色申告をするだけで、最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。
さらに、赤字の繰越控除や専従者給与の適用など、節税効果が大きい特典が多数あります。
条件と注意点
- 複式簿記での記帳が必要
- 青色申告承認申請書を税務署に提出済であること
- 電子申告または電子帳簿保存が条件(最大控除のため)
具体例
たとえば、事業所得が500万円の人が青色申告を行うと、以下のように控除が適用されます。
項目 | 控除額 | 説明 |
---|---|---|
青色申告特別控除 | 65万円 | 所得から控除され、所得税・住民税が軽減 |
経費計上 | 実際の事業支出を計上可能 |
理由と具体例②:経費の正確な計上
なぜ重要なのか?
事業に必要な支出は「経費」として所得から差し引くことができます。
これにより、所得税・住民税・国民健康保険料がトータルで減ります。
見落としやすい経費例
- 通信費(スマホ、Wi-Fiなど)
- 接待交際費(打ち合わせ時の飲食代)
- 交通費(電車代、ガソリン代)
- 書籍・セミナー代
- 文房具やプリンターインクなどの消耗品
具体例
たとえば年間10万円の支出が漏れていた場合、それを経費にすれば以下の節税効果があります:
年間支出 | 所得税率(例:20%) | 節税額 |
---|---|---|
10万円 | 20% + 住民税10% | 約3万円 |
理由と具体例③:家事按分の見直し
なぜ重要なのか?
自宅を事務所として使っている場合、光熱費や家賃の一部を経費として計上できます。
これを「家事按分」といいます。
按分対象になる費用の例
項目 | 按分可能な理由 |
---|---|
家賃 | 事務所スペース分だけ按分可能 |
水道光熱費 | 電気代やガス代を業務利用分として計上 |
通信費 | Wi-Fiや電話の事業利用分 |
具体例
自宅50㎡のうち10㎡を事業利用していれば、20%を按分可能。
月10万円の家賃なら、2万円/月 × 12ヶ月 = 24万円が経費に!
理由と具体例④:小規模企業共済の活用
なぜ重要なのか?
小規模企業共済は、将来の「退職金」を準備しつつ、掛金全額が所得控除になる制度です。
節税と資産形成が同時に叶います。
主なポイント
- 月額1,000円〜7万円まで任意で設定可能
- 全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除
- 解約時には一時金 or 年金受取も選べる
具体例
年間84万円(7万円×12ヶ月)を掛けると、所得控除も84万円。
課税所得500万円なら、税率30%前後で約25万円の節税効果!
理由と具体例⑤:iDeCoの活用
なぜ重要なのか?
iDeCo(個人型確定拠出年金)も掛金が「全額所得控除」になります。
老後資金の積立と節税が同時に実現できます。
個人事業主の拠出限度額
- 月額:68,000円
- 年間:816,000円まで全額控除可能
具体例
iDeCoで年間816,000円積み立てた場合:
年間控除額 | 税率(30%として) | 節税効果 |
---|---|---|
816,000円 |
30% | 約24万円の節税 |
理由と具体例⑥:減価償却の活用
なぜ重要なのか?
10万円以上の備品などは、一括で経費にできない場合が多く、「減価償却」という形で数年にわたり分割計上されます。これを上手く活用することで、利益の調整が可能です。
主な対象物
-
パソコンやカメラなどの設備
-
車両
-
高額ソフトウェア(10万円以上)
-
店舗改装などの資産性支出
少額減価償却資産の特例(重要)
青色申告者であれば「30万円未満の資産」を一括で経費にできる特例があります(年300万円まで)。
具体例
20万円のノートPCを購入した場合:
通常償却(4年) | 少額資産特例(当期一括) |
---|---|
年5万円ずつ経費 | 20万円を当期に全額経費 |
これにより、その年の所得を大幅に減らすことができます。
理由と具体例⑦:青色事業専従者給与の活用
なぜ重要なのか?
家族が事業に従事している場合、給与を支払うことで「経費」にできます。
白色申告では上限がありますが、青色申告なら合理的な金額であれば全額が経費に。
主な条件
-
配偶者や15歳以上の親族
-
6ヶ月超の継続的従事
-
税務署への「届出書」の提出が必要
具体例
配偶者に月10万円の給与を1年間支払う場合:
年間給与 | 所得控除効果(30%税率) | 備考 |
---|---|---|
120万円 | 約36万円の節税 | 配偶者側の税負担は低め |
※社会保険加入や扶養の要件にも注意
理由と具体例⑧:所得の分散
なぜ重要なのか?
「一人で全ての所得を受け取る」よりも、「所得の分散」をすることで、全体の税率を下げられる可能性があります。特に高所得層に有効です。
所得分散の方法
-
法人成り(法人に所得を分散)
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家族を従業員として雇う
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賃貸物件の共有名義化
具体例
夫(個人事業主)一人で600万円の利益 → 課税所得は高額
↓
配偶者に200万円の給与支払い → 夫400万円+妻200万円で分散
→ 夫婦合算の税額は下がる可能性大
理由と具体例⑨:期末在庫の評価見直し
なぜ重要なのか?
期末在庫の金額は、その年の「売上原価」に影響します。評価方法の違いによって、所得が変動するため、見直しが節税につながるケースがあります。
在庫評価の方法(原則)
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取得原価主義
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最終仕入原価法
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移動平均法(継続適用が必要)
具体例
在庫金額を100万円 → 80万円に評価し直せた場合
売上原価が20万円増加 → 利益が減る → 税額が下がる
※不適切な在庫評価は税務リスクがあるため、専門家と相談必須
理由と具体例⑩:経費精算・記帳の見直し
なぜ重要なのか?
どれだけ節税策を講じても、経費の「記帳漏れ」や「領収書の紛失」があると効果は半減です。普段の運用体制を見直すことが節税の基盤となります。
見直すべきポイント
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領収書を月ごとにファイリング
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会計ソフト(freee、マネーフォワード等)で自動連携
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クレカや銀行のビジネス口座の活用
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日々の記帳習慣の徹底
具体例
月1万円の経費が未記帳 × 12ヶ月=12万円
→ 30%の税率で3.6万円の税負担増に!
行動:確定申告前にすべき5つのアクション
これまでの内容を踏まえ、個人事業主が今すぐできる節税アクションを整理します。
🔻やるべき5つの行動チェックリスト
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✅ 青色申告の届出を済ませているか確認
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✅ 使える経費の棚卸し(家事按分も含む)
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✅ 小規模企業共済・iDeCoを契約する
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✅ 家族を専従者にして給与を支払う
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✅ 会計ソフトと領収書管理の仕組みを見直す
節税は「知識」と「準備」がカギ
節税対策は一朝一夕ではできませんが、「知っていて」「実行する」だけで、数万円〜数十万円の税金を抑えることが可能です。
とくに確定申告前は、これまでの経費や制度の活用状況を見直すベストタイミング。
本記事の10のポイントをチェックリスト代わりに、納税額を抑え、次年度の資金計画に役立ててください。